演目三十二:修行④
蒼と赤が交差する火炎放射、それを防ぐ青い六角形の盾。どちらも引けを取らない攻めと守り。このままこの状態が長引くと思われたが、蹴りが着きそうである。それはヒナミかアリス------。
「くっ…!」
ヒナミの方だ。メリーさんの出す青い六角形の盾に、少しずつだがヒビが入り出てきた。不味い、と感じたのかヒナミは額に汗を滲ませる。ヒナミはメリーさんに指示を出し魔力を上げる。途端に広がる六角形の盾は五角形へと形を変え、やがては五つの花弁へと形を変えた。花弁はヒナミとメリーさんを覆うように展開された。
「メリーさん守護モード…『青桜』!」
蒼と赤の双炎火をなんとか防いだヒナミは、突破する手立てを考えるため、思考の海に沈む。
ヒナミside
不味いわね…。この炎、思った以上に厄介だわ。着いたら最後、消えない炎によって身を焼かれ殺される。考えただけでゾッとする。
さて、本当にどうしようかしら…?一回目の修行は能力にどう対処するか、だと思うけど…。二回目のこれ…第二仕込み。接近戦を得意とし、更には魔法をも繰り出す獣化。一回目は発動する前に倒すという荒業でやってのけたけど、今回のはそうも行かないわよね。あの炎を撒き散らされたら溜まったものじゃない。どうしよ…ん?メリーさんからの意思疎通。え?私に考えがある?そ、そう。なら任せてもいいかしら。…そんなに即決していいのかって?いいよいいよ!だってメリーさんの事…信じてるから。いっちょかましてやりましょう!
「ハッハッハッハー!考えは纏まったかィ?」
そう言ってアリスは炎の出力を上げる。ジリリと、炎が花の盾を焼き削る音が聞こえる。ちんたらしてる場合じゃないわね!!行くわよメリーさん!!
「…………!!」
メリーさんは前に突き出している両腕に、服の袖から伸びた鉄の手甲が装着され、更に鉄がメリーさんの服の至る所から現れ、メリーさんの全身を覆い鎧へと形を変えた。………え。
「ち、ちょっとメリーさん?」
「…………!」
メリーさんは私の方を向くと、ぐっと親指でサインをする。
いや、サムズアップなんて要らないから!てか、私それ知らないんですけど!何その機能!?
「お、おぅ…?」
初めて見る全身フルメタルのメリーさんに、アリスは戸惑いを隠せなかった。
フルメタルメリーさん(今命名)は、私に後ろを掴むよう促してきた。掴むところないんですけど。
とりあえず、フルメタルメリーさんの腰を両手で掴む。瞬間、景色がぐにゃりと歪んだ。苦しくなり、止まる呼吸。景色はゆっくりと元に戻る。
「かはっ!んっ…はぁはぁ…っ!」
酸素を求め、魚みたく口をパクパクさせながら呼吸をする。
…いけない。どうなっのかしら?
ヒナミが後ろを振り返ると------
「…………ハハッ。コイツは…少し油断してたゼ」
通った道は抉れ、空に留まり、頬に一つ冷や汗をつけるアリス。弁天と月音は身体半分を削られ、倒れ伏せている状態だった。
えぇぇ…ナニコレ……。




