演目三十:修行②
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ヒナミside
「行くわよメリーさん!『メリーさん!フォルムチェンジ!!』」
メリーさんは通常サイズのまま、赤い魔力を纏い赤い甲冑を装備する。手には身の丈以上のランスを握っている。
「まずは切り離すわよ!!『武装メリーさん!敵兵を引き裂きなさい!!』」
武装メリーさんは、少し前かがみになり、瞬間、物凄い速さ、目にも止まらぬスピードで掛けて行った。地面は割れ、通った後の地面は全て抉れている。
「ヘェ…中々のスピードじゃねェか。だが!」
アリスは人形を操る。手を繋いだ状態の弁天と月音がメリーさんの前に出る。
「ちっ!『武装メリーさん!そのまま押し切りなさい!!』」
無音のままぶつかり合う吸収の能力と、武装メリーさんのランス。
吸収の能力は、ランスの威力、速度、音まで吸収した。しかし、武装メリーさんの乱舞は休むことを知らない。どんなに吸収されようとも次には同じ威力、速度で放たれる。人ではない故に出来る技、無限乱舞。
「………」
「………へへ」
しかし、なんだろう。少し違和感があるな、あの吸収の能力。武装メリーさんのランスが当たる前、というより当たった後に発動しているような気がする。
……物は試しね。
「一か八か…!『武装メリーさん!サークルランサー!!』」
武装メリーさんは、打ち合っていたのを止め、ランスを手放す。ランスはメリーさん自身の周りに円を描くように回転する。
「……ほう」
アリスはニヤニヤとした笑みを浮かべる。
ふふ…食らうか分からないけど貴方がその顔をするのも今のうちよ!!
「終わりにしましょう!!『武装メリーさん!奥義!!』」
武装メリーさんは、サークルランサーを従えたまま、弁天と月音の前に躍り出る。キュィィィと、劈くような音が鳴り響く。
「『一角突き!!!』」
その言葉と同時に武装メリーさんの攻撃は終わっていた。
回っていたはずのランスは今はしっかりと、武装メリーさんの両手に収まっており、貫いた状態でいる。辺りに静寂が戻る。アリスは眼を全開に開き、驚きで声も出ないようだ。
ドサッ……。
近くで何かが落ちた音が聞こえた。アリスはゆっくりと音のした方へ顔を向ける。そこには、弁天と月音の手だったであろう部分が落ちていた。それは原型を止めておらず、ぐちゃぐちゃの塊と化していた。
「……やるねェ。人形を引き剥がすんじゃなくて、まさか能力が発動する前に潰すなんてョ。とんでもねェ速度だナ」
そう言って彼はくっくっと笑う。そして、笑うのを止めると、頷きながら次のことを口にする。
「第一段階はクリアだナ。次は…!」
片方ずつの手が壊れた弁天と月音。それらを自分の元へ引き戻し操っていた糸を切り離すと、アリスは両手で一回、柏手を打ち、地面に両手を着く。
ぽふんと可愛らしい音が聞こえてきたと思えば、そこには------。
「巫女狐の弁天と月音…獣化」
アリスの前で。四本足で立ち構える、二匹の狐がいた。
人の姿をしていた弁天は、すっかりと狐に成り代わり、月音は元が狐だが、二本足から四本足になった事で本来の姿に戻った形となっていた。
「第二段階、始めるゼ」




