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不思議アリスは人形使い  作者: ワンコ
3/65

演目三:人形

ヒナミside


雲一つない青空の下。

見渡す限りの草原と土煙と悲鳴が満ち溢れていた。



「そらそらそらぁ!はーっはっはっはー!!」


「うわぁぁぁぁあ!?」



なんなの!?短い手足でなんか物凄い早いパンチをしてくるんだけどこの子ホントになんなの!!??



「…っ!どうしてこんなことするの!?」


「うん?どうしてって…」



残念ロリボイスちゃんは小首を傾げる。可愛い…じゃない、不思議そうに言った。



「応えた…訳じゃねェけど召喚魔法で呼び出されたんだ。召喚されたモノの対応は2つしかねェだろ?」


術者に従うか、術者を殺す、か。前者は召喚されたモノより術者の方がチカラが上の場合、半強制的に契約を結ぶ事が出来る。だが今の時代、半強制的ではなく、実力は上でも話し合いで契約を結ぶなどとする者達が増幅している。

後者は、召喚されたモノが術者よりチカラが上の場合、召喚されたモノは術者を気に入らなければ殺す事がある。これを回避するには召喚されたモノに自身の実力を魅せるしかない。

つまりは…。



「あんたその形で私より実力が上っていうの!?」


「………っ…ここまで舐められたのはいつ以来だっ…!」



あ、あら?激怒したわ…。でもまぁ、まだ人形で遊んでる子供だし、反抗したい年なんでしょう…だから!



「悪い子にはお姉ちゃんがおしおきしてあげるっ!」



私はロープの内ポケットからひとつの人形を取り出す。

その人形は西洋人形のような形をしており、どこか怪しげな雰囲気を出している。



「ふふふ…!これはメリー家代々伝わる伝統人形奇劇シリーズの一つ"メリーさん"よ」


「ふむぅ…なかなかいい造りだな、それ」


「あら?貴女にこの良さが分かるなんてね、嬉しいわ…けど、これの良さはそれだけじゃないのよ!『お願いメリーさん!巨大化!敵を粉砕して!』」


メリーさん人形はその言葉を聞くと、体がみるみるうちに山のように大きくなっていく。



「……………!」


「どうしかしら!この圧倒的かつ美しすぎる造形!!あぁ、たまらない!!」


「それには同意するが…おま」


「さぁ!!やっちゃいなさいメリーさん!!」


メリーさんは目を光らせ、拳を残念ロリボイスちゃんに振り下ろす。


「うぉぉお!!?おまっ!さっきのやり返しかコノヤロー!!」


「ふはははははは!!さぁて?なんのことかしらねぇ!」


「てめっ!覚えとけよゴラァ!」


「んまっ!女の子がなんて口をきくのかしら!お仕置き追加よ!」


「うっぜぇぇぇぇぇ!!てか!さっきからお嬢ちゃんとかなんだか言ってるけどオレはなぁ!男なんだよ!」


「は?その見た目で?ぷぷっ…ありえないんですけど冗談はもうちょっと大きくなってから言おうね?」


笑顔で煽る。すると、どこからかブチッと何かがキレる音が聞こえる。辺りにはメリーさんと残念ロリボイスちゃんだけしかいないし…もしや、と思い目を薄く開けて見ると、顔が能面のような表情でこちらを見ていた。


あ、あら…?もしかして煽り耐性ゼロかしら…?それと…私ピーン……チ?



アリスside



決めた、殺そう、即殺そう!

…いや少し待て、こいつを殺したところで元の場所へ戻れるわけじゃない…それに今ここでこいつを殺しても今のオレじゃ…それに、ここでの標準戦闘力が分からねェ以上路頭に迷うだけ…情報と自身の安全確保のため、生かしておくか…。



「………ちっ!…術者さんよ、舐めた態度もそこまでだゼ!」


オレはコートのポケットから人形を一つ取り出す。


「それにしても…まさかアンタも同じ人形使いとは思わなかったぜ…」


「同じ…って、え?も、もしかして…」


「ふは…さっきのメリー人形は自律可能にして巨大化まで…なかなかの実力だ…オレを呼ぶだけある」


「いや絶対ハズレだって」


「てめっ!…んん!…だが、オレの人形劇を見て果たして同じことが言えるかな…?」



オレは取り出した『兎』と書かれたタキシードを来た兎の人形を手のひらに座らせるように乗せる。



「魅るがいい。これがオレの人形アート」



手のひらをひっくり返し、人形を地面へと落とす。落ちる途中で人形は段々と光を帯び始める。

人形は地面に着くと同時に光と煙を放つ。

光と煙が収まるとそこには、二足で立ち上がるタキシード姿の兎が頭を俯かせて立っていた。



「時空兎、シリーズ1の一つだが…こいつは意外と強いぜ」



オレは、時空兎の背に両手の指でで触れる。そしてゆっくりと離していく。

両手の指に見えないが空間の歪みが出来、それが兎の背に付いてあるようにみえる。

胸元にまで手を持っていき両手を広げる仕草をすると、時空兎は俯いていた頭を持ち上げた。



カタカタカタカタカタキリキリキリキリカタカタ



不気味な音が鳴り響く。



女は驚いた様子だが…。あ、そう言えば名前聞いてなかったな…。



「そう言えば、名前を聞いていなかったな…」


「あら?そういうのは自分から名乗るものよ?…まぁでも…なかなか…いや、とんでもないものを見せてくれたもの…お礼として先に名乗ってあげる…ヒナミ・メリー、メリー家次期当主で人形劇師よ」


「ヒナミ・メリー…あぁ、覚えた…オレの名は不思議アリス、最狂と恐れられし人形使いだ」



そう言ってオレは悪どい笑みを浮かべた。

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