演目二十七:からくり
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〜クエスト受付〜
ヒナミside
クエストを達成した私達は、ギルドのクエスト受付場の前にいた。受付場は全部で四つ。そこに受付嬢が配置され、前に木製のカウンターがある。受付場の前には人は数人居るが、どれも談笑している人ばっかりだ。受付嬢も暇をしているのか、受付嬢同士で話している。
そこへ代表である私が、クエスト完了の証拠であるブラドの牙とクエストの紙をを提出する。
「すみません、これお願いします」
「ふふ…あ!ごめんなさ…って、ヒナミじゃない」
話し込んでいた受付嬢、キャミー。彼女は、声に慌てて営業モードに入るも、声をかけてきた人物を見て落胆する。
「はぁ…びっくりして損しちゃったわ。わざと他人のフリをして…まったく。それで、クエストを受けにきたのかしら?」
「私で悪かったわね。違うわよ、完了報告よ。ほら、クエストの紙とその討伐証明」
私はカウンターに置いた紙と牙を指差した。キャミーはそれを手に取り、目を見開く。二度、三度、ヒナミと紙を交互に見て一言。
「……………………偽物?」
引いた目で私を見るキャミー。
「なんでよっ!?」
「だって貴女がブラド討伐って…無理でしょ!?相性悪いんだか」
「なんでそれを…っ!」
キャミーはやれやれと肩をすくめ、説明をする。
「貴女達、人形を操る職業の子は、接近戦を苦手とするのよ?それをこの接近戦を得意とするブラドに挑むなんて…自殺行為にも等しいわよ!!それにこのブラド…色んな冒険者達が挑んだけど誰も帰ってきてないのよ…」
「それは、アリスから聞いたわ。それに」
「ん?アリスちゃんもいたの?」
「うん。倒したの、アリスだし」
「それなら納得」
「おい」
アリスちゃんなら出来て当然よねぇ、と間延びした声でルンルンと報酬金を用意し出すキャミーに、ヒナミはこんなんでいいのかよとおもっていた。
用意し終えたキャミーは、カウンターにパンパンに膨らんだ袋を置く。
「はい、報酬金!金貨180枚よ。ところで、アリスちゃんはどこにいるのかしら?」
「はいは…180!?あ、いるわよ。あっこの席に。てか、多くない?」
多すぎる報酬金に驚くヒナミ。
「はぁ。ヒナミはまた…。クエストの報酬金額を見らずに受けたわね!ちゃんと見なさいって昔から言ってるでしょう?」
「うっ…そうだけど…」
「貴女は直ぐに直感で受けようとするから困ったものよ…。ま、そんなことよりアリスちゃん成分を補給しなきゃっ」
語尾に音符が付きそうな軽やかな声を上げ、いそいそとカウンターから出てくるキャミー。
キャミーは、椅子に座って足をブラブラとさせるアリスに後ろからソォーッと近付く。接近に近付いたナーシャ達に目配せをし、人差し指を口に持っていく。
そして、アリスを包み込むように眼を両手で隠す。
「だぁーれだ?」
「うおっ!?」
気を抜いていたアリスは、見事キャミーの策にハマる。驚き困惑に眉を八の字にする。
「んんんん……?この気、キャミーか?」
アリスは気でキャミーと判断したようだ。その答えに満足したキャミーは頬を染め、眼を覆っていた両手を外し、抱きつく。
「せいか〜い!嬉しいわぁアリスちゃん!」
彼女は嬉しそうにアリスの頬を自身の頬を合わせ、スリスリする。
それを見たヒナミ。思わず自分もしてみたいと思ってしまった。
「……ゴクリ…やるか」
満足したキャミーは、頬ずりをやめ、アリスの目線に合わせ話をしだす。
「ねぇねぇ、アリスちゃん」
「うん?」
「この前ね?美味しいスイーツがあるお店屋さんを見つけたのよぉ、一緒にいかないかしらぁ?」
「ん!スイーツかいいナ!いいゼ!!」
「きまりねぇ。ふふ…楽しみだわ…」
「へへっ」
そんなこんなで、談笑してるアリスにそっと近付くヒナミ。
頬を赤く染め、鼻息を荒くし、アリスの目元目掛け手を伸ばす。
「だーれだっ!」
眼を覆うことに成功したヒナミ。子供みたいな暖かい体温がヒナミの手を温めてくれる。そして、嬉々としてヒナミは聞く。
が------。
途端に冷たくなるアリスの身体。手から伝わるは雪のような冷たさ。心做しか周りの気温も下がったような気がする。辺りに静けさが広がる。
「え」
「ヒ…ヒナ……ミ」
そして、ゆっくりと……首がギギっと音を立てながらヒナミの方へと振り向いてくる。
「いやっ、ちょ…!!」
首だけが動き、アリスの青ざめた顔がヒナミと向き合った。
「ウバァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
変な唸り声を上げるアリスに、絶叫するヒナミ。その声はギルド全体に響き渡る。
そして、ヒナミはそのまま後ろにバタンと倒れ、気絶した。
それを面白そうに見るカルラ、哀れみの眼で見るナーシャ、あらあらと頬に手を当て微笑むキャミー。
アリスはヒナミの反応に満足し、高笑いを決め込む。




