演目二十六:封印
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アリスside
槍の呪いを受けた受け、身体の至る所から朽ちていったブラド。 残骸からは五本の槍が落ちている。その槍は粒子と化して消えていく。アリスはそれを見つめ終えると------。
「ブラドの討伐完了。…もう少し楽しませてくれると思ったのだが…ナ」
一人、ポツリと呟く。その場を後にし、自身に垂れかかっているヴラドに声をかける。
「久方ぶりに使ったんだが…どうダ?楽しめたカ?」
「同じ名前を持つ者としては、大いに不満があるけど…まぁ、貴方と久しぶりに戦えたもの。良しとするわ」
「……ふっ」
アリスは照れくさそう顔を逸らす。それをヴラドは微笑ましく笑う。
と、そこへ。
「主ぃぃぃ!!!」
「アリス様ァァァ!!!」
二人の自動人形…ナーシャとカルラが、鬼気迫る表情でこちらに走ってきた。アリスの元へと辿り着くとすぐさま、ヴラドをに向けてナーシャは手刀の構えを取り、カルラはシャドーボクシングをしている。
「ヴラドっ!貴様…」
「アンタが久しぶりに動くの見たけど…またあん時みたいになったら困るからよぅ…」
「うふふふ。貴方達、あの時の…そう、そうなのね。ねぇ、アリス?あの子達と遊んでいいかしら?」
「それは困るゼ…。オレの大切な人形だからョ」
ヴラドは、あらあら、そんなに愛されて羨ましいわね、と言って空を漂う。
そして、遅れてやってきたヒナミが到着。全員集合した。
ヒナミはゼェハァと息を荒くし、膝をついている。そして、息を整え一言。
「保護対象を放置して行くやつがあるかぁぁぁぁぁあ!!??」
そのまま、メリーさんの足を掴み、カルラとナーシャの顔を殴るヒナミ。
まさかの展開、攻撃方法に二人は驚き動けず、モロに食らう。
「「ぐはっ!?」」
吹き飛ぶナーシャとカルラ。拳を上に掲げ、誇らしげな顔になっているメリーさん。鬼と化したヒナミ。
「あらあら?」
「おぉぉぉお……」
口元に手をやり驚くヴラドと、ヒナミの動きに関心するアリス。
ヴラドはヒナミの方に顔を向けて、嬉しそうに問う。
「ねぇ、そこの貴女。私の眷属にならない?」
私の眷属にならない?そう声を受けたヒナミは、一瞬、身体の動きを止める。数秒して、声の主、ヴラドの方に振り向く。眉を片方釣り上げ、口をへの字口にし、何言ってんだこいつと書かれたような顔をしていた。
「結構よ」
「ふふ、残念ね」
ヴラドは答えが分かっていたのか、口元に笑みを浮かべる。
「ヴラド、こいつは一応…オレサマの主になってるんだからョ?変な勧誘はやめろよナ」
「あら?そうだったのね、ごめんなさい」
ヒナミの手を取り、困った顔で止めに入るアリスにヴラドは、素直に謝る。
アリスは一息ついて、ヴラドに指示を出す。
「そんじゃ、ヴラド。そろそろいいだロ?戻すゼ」
「えぇ。十分楽しませて貰ったから。それに…ふふ」
ヴラドは艶めかしくアリス、そしてヒナミへと顔を向けて微笑む。
そこへ、土汚れが付いたナーシャとカルラがやってくる。
「ふん。ようやく戻るか」
「けっ」
二人とも顔を不満げにしている。
「ふふふふふ。貴女達とも…ふふ」
ヴラドが何やら呟いている。
「!?はっ、早く戻るがいいヴラド!!」
「ウウゥゥゥゥゥ!!!」
二人は何かを察してか、ナーシャは急いでヴラドに戻るように促し、カルラは髪や耳、尻尾を逆立て威嚇している。
オレは軽くため息を吐き、戻す動作をする。
「ヴラド、遊びはここまでだゼ」
「はーい」
オレは人形に戻す…『封印の印』を結ぶ。
繋がっている糸を一度切り離す。糸を失ったヴラドはガタガタっと崩れ落ちる。
「ふふ、荒いわね」
「うるせ…」
オレは次に、両手を合わせ掴んで、両手を離し最後にパチンっと柏手を打つ。
辺りに鈴の音が鳴り渡り、時が止まった様な感覚に陥る。そして、淡い光の奔流がヴラドを包み込む。
封印の印が終わると、ヴラドのいた場所には、棺を抱き抱えた黒布を纏った人形が横たわって倒れている。
「はぁ…クエスト完了。さっさと引き上げるゼ」
アリスは息を吐き、倒れた人形…ヴラドを拾い上げ、懐にしまうとヒナミ達の方へ歩き出していった。
戦闘により崩れ落ちていった廃墟の数々を背に。




