演目二十四:ヴラド
ヒナミside
思えば短い人生であった。復讐のため、必死で人形を操る術を身につけたけど…それでも力が足りず惨敗の毎日。まぁ、術者を狙うのは当然の策。弱い私が悪いけど、それでもこんな私にメリーさんはいつでも付いてきて側にいてくれたわね…。あ、一応アリスにもお礼を言わないとって、言えないか。ふふ、最初は子供を間違えて召喚したかと思ったら、声は可愛いのに発言が危ない子。そして見た目にそぐわない圧倒的戦闘力の持ち主だったわ。それから------。
「長々と走馬灯に走ってるところ悪ぃんだけど、早く戻ってメリーさんに指示を飛ばせぇぇ!!!」
カルラの声が聞こえる。幻聴かしら。あなたのシーンはもう少し先だから待ってなさい。
「てめっヒナミ!安らかな寝顔晒してんじゃねぇ!!なんもダメージ食らってねぇんだからよ!!守ってやってるあたしの身にもなりやがれ!!」
この幻聴、やけにリアルね…。それに少し騒音が…………ん?ダメージを受けていない?いや、そんなことは無い!現に私は暗い世界に一人きり。
「目ぇ瞑ってるからだろ!」
この幻聴、私の心が…っ!
「さっさと起きやがれ!!」
「ぐふっ!?」
ぐぅぅぅっ!!…お、お腹に…ものすごい衝撃が…!!
「何すんのよ!?…て、あら?生きてた…」
「最初から生きてんぜ!ったくよ…防いでやったのに、まるでダメージ食らったかのような顔で倒れるわその次に悟ったような顔になるわで…」
「ごめんごめん」
どうやらカルラは、私が回想に入ってた間、私の事をずっと守ってくれてたみたい。身体中の至る所に傷が出来ていた。
カルラは私と話しながらも、ブラドの攻撃を的確に防いでいた。
「それで!?行けるのかっ……て、しまった!?」
僅かなカルラの隙をつき、ブラドの攻撃が私に迫る。
「ヒナミっ!!」
ブラドの手が私に届く-------寸前で、浮遊感。私の身体が後にものすごい勢いで、浮いていく。そして、ブラドの攻撃が届かない所へ着地。
「こ、これは…?」
困惑してる私の後から、声がかかる。
「危機一髪だナ、ヒナミ」
右手の手のひらを私に向けて、不敵な笑みを浮かべているアリスとナーシャがいた。
その右手からは、青い魔力を纏った糸が伸びており、私の五体に一本ずつ付いていた。
アリスは私の無事を確認し終えると、伸ばしていた糸を外し自身の元へと戻す。
「あ、アリス…」
「ふん、カルラに感謝しとけョ!お前だけじゃこいつの相手はキツいからナ…」
「………っ」
私は唇を噛み締める。浮かれていたんだ…。SSランクになれて。意気込んで挑んだ割に結果はこれか…。
「そう落ち込むなョ、ヒナミ。実力不足…ってわけじゃねェけど、今回は相手が悪いゼ。どうやらこのブラド、数々のSランク以上の冒険者を屠っていたみたいだゼ。向こうで死体の山を見てきた」
アリスはブラドの方を向き、警戒を怠らない。
「さて、ヒナミ。これを聞いてまだ戦うカ?怖いなら…オレが片付けてやるョ」
そう言ってアリスは、指をコキっと鳴らす。
私を思ってか、いつもより声音が少し柔らかい。でも------。
「大丈夫よ。私はまだ戦える。心配…ありがとうね」
「ふ、ふん!心配なんざしてねェ!ただオレはマスターが使い物にならないか気にして」
「ふふふ、はいはい」
顔を赤くし、早口でまくしたてるアリスに笑って、軽い返事をする。
「アリス様ァ!そろそろいいかぁ!?こっちはナーシャの野郎と抑えてんだけど、少しキツいぜ!!」
「前から言おうとしてたが、私は野郎ではないぞ!!」
二人きりの世界に入っていると、カルラとナーシャの声が聞こえる。
その声に反応した、アリスは懐から、棺を抱き抱えた黒布を纏った人型の人形を取り出した。
「ん、少し待たせタ。こっから参戦だゼ!!行くぜヒナミィ!!」
アリスは手に持った人形を地面へと投げつける。投げつけられた人形は、黒い光を放ち、辺りを黒く染めていく。
キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
不気味な笑い声が辺りを包む。思わず身構えてしまったが、これは多分、アリスの人形だろう。
そして、暗闇からアリスの声が響く。
「ブラド…お前に絶望を教えてやル」
暗闇の中に蠢く何かをみた。
「魅せてやる…シリーズ2のひとつ『眠り姫ヴラドの棺』」
「!?」
ブラド!?どういう……っもしかして!?
暗闇だった世界は急速に元へと戻る。そこには------。
アリスにまとわりつくように垂れかかる、棺を抱えた黒布がいた。
「オレの世界のヴラドだ…。そこのブラドと、果たしてどっちが強いかナ?」




