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不思議アリスは人形使い  作者: ワンコ
23/65

演目二十三:ブラド

〜廃墟になった街・A区〜



本来、木造で出来た家が立ち並ぶこのA区は、今現在、腐り、ボロボロの姿で当時の面影を一切残さない、そんな風景と化している。



ヒナミside



「なぁ…ヒナミ」



辺りを探査していると。鼻をヒクヒクとさせながら、カルラが私に話しかけてくる。



「なによ?」


「こっから先、気をつけた方がいいぜ。血の匂いが強くなってやがる」



そう言ってカルラは、奥を睨みつけながら私に忠告をする。



「さっきも思ったけど…アンタ達は本当に五感が鋭いわね。感心するわ」


「そりゃぁな。あたし達、犬人族は五感全部…というより、嗅覚と聴覚が優れている」



犬人族…聞いたことのない種族だ。多分、アリス達の世界の種族なんだろう。

そんな事を考えていると、猛烈な悪寒に襲われた。

誰かに見られている。そんな感じの気配。そして肌を刺すような殺気…。もしかしてこれが…っ!



「!!…見つけた!ヒナミはあたしの後に隠れてな!そんで、アリス様に知らせろ!!…最初の一発は、アタシが頂く。がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



ヒナミよりいち早く敵を見つけたカルラが、前に出て吠える。

私はカルラに言われた通り、アリスから預かった拳銃を取り出し、真上に向ける。そして、引き金を引く。


パンッ!


ピュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!



発砲音と発煙弾が上がる音が響く。その音をかき消すようなカルラの咆哮が聞こえる。



咆哮は一直線に目の前にあったボロボロの家達を巻き込み、壊しながら進んでいく。



「あぁぁぁぁぁぁ……ぁぁあ………ふぅ」



吠え終えたカルラは一息つくと、戦闘態勢に入る。

それを見終えた私も、メリーさんを呼び出し戦闘態勢へと入る。



「……アレかァ、ヒナミ。ブラドって奴は」



カルラが咆哮によって家を吹き壊した一帯を指を指し、私に尋ねる。



「……うーん、と………どれ?」


「なっ…見えねぇのかよ…」


「悪かったわね!!」



見えない事に落胆した様子のカルラ。しかし、カルラの頭に生えている犬耳が、いきなりピンっと真っ直ぐに立つ。



「おっ?起き上がったな…」



カルラはニヤリと笑うと、嬉しそうにそうじゃなきゃな、と独り言を零す。

え、てか倒れてたの…?あ、巻き込まれたのね。



「ん?なんだ…っ!」



ブラドと思われる人物を見ていたカルラが驚嘆に目を見開く。



「どうしたの?」


「奴さんが、地面に沈んでいってる…これは……はっ!?いけねぇ!!ヒナ」



私の名前を呼び終わる前に、カルラが吹き飛ばされた。

それはもう一瞬の出来事で、目で追うことすら出来なかった。



「………ふひ」



下卑た笑い、笑う口から覗く鋭利な歯、病的なほどに青白い肌、皮と骨しかないようなほどのひょろひょろとした体型…。これで、あのカルラの背後を。しかも吹き飛ばすなんて…!!



「ヤラレ…ヤラレタ、カラ……ワガハイ、ヤリカエス。ワガハイ、テン…サイ?」


「知らないわよ!それよりもアンタの名前…ブラドって言うのかしら?」


「ワガハイ?ワガハイ、ブラド」



片言で喋るブラド。その様子を見て隙がないか探すヒナミ。

動きはカクカクとしながら、手を忙しなく動かしている。声は高く、短い黒髪を左右に分けており、目は黒く光がない。周りには隈が出来ている。

どうしようこいつ…、全く隙がないっ!一件、気の抜けたような状態だが、全く付け込める隙がない…!



「ブラド…当たりね。光栄に思うといいわ!この私が、あなたを倒してあげる!!行くわよメリーさん!『メリーさん!巨大化!!ブラドを潰しなさい!!!』」



ヒナミの側で待機していたメリーさん。命令を受けたメリーさんは、巨大化を始める。ぐんぐんと大きくなり、山のように大きくなったメリーさんは、手のひらをブラドに向けて振り下ろす。



バァァァァァァァン!バァァァァァァァン!バァァァァァァァン!バァァァァァァァン!



計四発、ブラドに向けて手のひらを振り下ろす。



「ふふん!どうかしら?メリーさんの攻撃は。カルラ…アンタの仇は取ったわよ!」



キメ顔で締めに入るヒナミ。そのまま、ヒナミはメリーさんに指示を飛ばす。



「さて、メリーさん!その手をどかして、ブラドの無様な姿を見るわよ」



命令を受けたメリーさんは、振り下ろしていた手をどける。



「ふふ…いい感じに潰れてくれてると……なっ!?」



メリーさんの手が置かれていた場所に、ブラドの姿はなかった。

なぜ!?間違いなくブラドの体に直撃したはず…!


そう考えてた私の背後に、ブラドはいた。



「ワガハイ、クラワナイ」


「しまっ」



やられる。ブラドが私の首めがけ自身の手を伸ばすのが見えた。

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