演目二十二:廃墟
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ある昼下がり、ヒナミの自室にてくつろぐアリス一行。
そこへ、一枚の紙を片手にヒナミが寄ってくる。
アリスsaid
「アリス、クエストに行くわよ」
そう言ってヒナミは、手に持っていた紙を前に出してくる。
大口を開け、鋭利な歯が並ぶ男の人相が描かれた紙だ。
内容は、『吸血鬼の討伐。エウレペールの外れにある古びた街に住まう吸血鬼、名をブラド。彼の者を討伐出来た暁には報酬金を出す。注・このクエストはランクS以上の冒険者のみ受諾可』
「ふぅーん…ブラド、ね」
「どうかしら?私はもうSSランクだし、アンタは…憎たらしい事にSSS。クエスト初日としては…肩慣らしに丁度いいんじゃないかしら?」
「この世界にもやっぱ、吸血鬼ってェのはいるんだナ」
「この世界…、アンタの世界にもいたの?」
「あァ…ま、いいゼ!肩慣らし…いや人形使いであるオレサマにゃ……指慣らしに丁度いい」
「クエストは明後日から出発するわ。それまでに必要のものは自分達で揃えておいてね!」
「オゥ!…ここでの吸血鬼に聞くか知らねェがやってみるか…」
こちらの世界での吸血鬼ブラド。興味が出てきたナ…。
オレはそう思い、来たる闘いに胸を膨らませ、指をゆっくりと曲げていく。
〜クエスト当日・ギルド転送部屋〜
ギルドの一室には、クエストを行う場所へ最短で向かわせる事が出来る転送機能が付いた魔法陣がある。
魔法陣の前には、クエストへ向かう冒険者達が並んでいる。その中にヒナミ達も並んでいる。
そして、次々と人が魔法陣の中に消えていき、次でヒナミ達の番だ。
「さて、そろそろね。準備はいいかしら?」
「問題ねぇゼ!」
「同じく」
「あたしもないよ」
アリス、ナーシャ、カルラとヒナミの問に返事をしていく。
そしてヒナミ達の番になる。
「さ!行くわよ!!」
「「「おぅ!!!」」」
魔法陣に足を踏み込む。
すると、ヒナミ達を光が包み込み。視界を白く染め上げた。
生ぬるい風がオレたちの肌を触れる。白かった世界は徐々に色を取り戻していく。
アリス達の目に映った光景は------。
ところどころが崩れ落ち、廃墟と化した家が立ち並ぶ街があった。
「なかなか雰囲気があるところね…」
重々しい空気に、ヒナミは少し緊張している。
「アリス様…ここは少し」
と、くんくんと匂いを嗅ぎながらカルラが、アリスに話しかける。
「あァ…鉄くせェナ…」
「それに…まだ新しい見たいです」
「鉄?…くんくん。…何も匂わないけど」
普通の人間には気づかない、僅かな匂い。それを嗅ぎとったカルラ、ナーシャ、アリス。
「まぁいいわ。とりあえず、散策に入るとしましょう。二手に分かれるわよ」
「オゥ。カルラ!ヒナミに付いてやれ!」
「あいよー」
気だるそうに返事をしながらも、眼をランランと輝かせているカルラ。
先程の鉄の香り、血の匂いを嗅いでスイッチでも入ったのだろう。尻尾がブンブンと揺れている。
「んじゃ、オレとナーシャは向こうを見て回る。何かあればコレを使え」
オレはヒナミに小型の拳銃を渡す。
「これは…?」
「真上に撃ち、自分の場所を教える発煙弾ダ。もしブラドと出会ったら撃ちナ」
「…わかったわ!ありがとう」
そう言って、ヒナミはカルラを連れ走り出す。
それを見送ったアリスとナーシャも反対方向へと走り出す。
〜廃墟になった街・B区〜
B区は、赤銅色のレンガで出来た道と、元の色がわからないほどにくすんだ色に変貌して出来た家が立ち並んでいた。
オレとナーシャは、その周辺をくまなく探している。
木製の椅子にテーブル、散らかり、腐った食べ物やボロボロの衣類。綿の飛び出た人形。どれもこれも、当時の物だったのだろう物がどの家でも溢れかえっていた。
「主よ…」
奥の部屋を散策していたナーシャが、アリスを呼ぶ。
「ウン?どうしタ?」
「少し、見て欲しいものが…」
ナーシャは、体を横に向け、奥の部屋が見えるようにする。
「…これは!」
アリスが見たもの。それは------。
全身の血を抜かれ、干からびた人達で埋め尽くされた部屋だった。
アリスは近寄り、干からびた人に触れる。
「………」
「ブラドの仕業でしょう。調べたところ、老若男女問わずやられており、これら全て…数日前に吸われた者達みたいです。それに」
「あぁ、分かっている。これはヒナミが危険かもしれねェ…」
「ええ。いくらカルラが…メリーさんがいようとも本来人形を操るものは接近戦に弱い…。懐にでも入られてしまえば」
最悪だナ。ヒナミ達が見つける前に…!?
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンン!!!
遠方から、赤い狼煙と崩れる音が聞こえる。
「狼煙…!もう見つけたのカ!?急ぐぞナーシャ!!」
家の壁を蹴り破り、飛び出しオレとナーシャは、屋根から屋根へと飛び移りながら全力で駆けていった。




