演目二十一:制作
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ヒナミside
薄い灯りがぼんやりと照らし出す部屋の中に、二つの悲鳴がこだまする。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!???」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
ヒナミと部屋の中にいた『何か』は同時に叫び、後からやって来たアリスに呆れられた眼差しで見られる。
「何やってんだョ…」
「あ、ああ、アリス!?あんた部屋の中に変なものがいるわよ!?」
『何か』は変なもの扱いされて、ピクっと反応する。
「むっ。変なものとは心外です。これでもマスターの人形大罪シリーズ最強の一人であるこの私、憤怒ちゃんを変なもの扱いとは何事です!!」
『憤怒ちゃん』、自身をそう呼んだ者はバッ、と黒い布を脱ぎ捨てる。
赤髪で髪型はツインテール。瞳も赤く小柄で華奢な身体付き。服装は白いワイシャツに赤いリボン、下は赤と黒のチェックのスカートで黒のハイニーソを履いている。
憤怒ちゃんは、ツインテールを逆立て怒りを顕にする。
「フーっ!」
猫のように威嚇する憤怒ちゃんに、ヒナミは------。
「かわいい…おいでぇ?怖くないよぉ、ちちちちち」
顔をふにゃらせ手を出し、くいくいっと手招きをしていた。
「ふがーっ!なんなのですかお前は!?憤怒ちゃんは猫じゃないのです!!」
「うふふふふふふふふふふふ」
「ぴゃっ!?こここ、怖いのですマスタァ!!」
下卑た笑を浮かべたヒナミに、恐怖を憶えた憤怒ちゃんはマスターであるアリスの元へと駆け寄る。
「おぉ、怖かったナー、よしよし」
「ぶっは!幼女同士キタコレ」
鼻血を吹き出し、喜ぶヒナミ。
に、飛びかかる影がひとつ。
「いい加減落ち着け!馬鹿者!!」
ナーシャだ。
彼女の飛び蹴りは綺麗にヒナミの横腹に直撃し、吹き飛ばす。
「ぐふぅ……はっ!?私は何を…!!」
「落ち着いたか…全く」
「……これが…人形部屋。恐ろしいわね…」
冷や汗をたらしながら、戦場をくぐり抜けた様な顔付きになっている。
「ヒナミ、紹介すんゼ。自動戦闘型人形…大罪シリーズの『憤怒』ダ。この人形部屋に何故か入り浸ってんだよナ…」
アリスは憤怒ちゃんの頭に手をやり、撫でながら説明する。
「ふん!よろしくしてやらないのです!」
「ツンケンな所もまた…いい!!」
また堕ちそうなヒナミを無視し、憤怒はアリスに問う。
「それより、今日はどうなされたのです?」
「んァ?あー、制作部屋が欲しいってヒナミに断れてナ。仕方ないからこれを出したんだョ」
「あんた断る前にもう付けてたわよね?よね?」
「さ、さぁナ?」
ずいっと、ハイライトの消えた眼で迫り来るヒナミに目を逸らすアリス。
「そ、そうダ!オレが作る所を特別に見せてやろウ!」
アリスは話題を逸らすことにした。
ちょっと興味があったのだろうヒナミは、嬉しそうに手を合わせる。
「そ、そう?なら許してあげるわ」
アリスの逸らしに釣られるヒナミ。
「んじゃ、とりあえずココで待ってナ。憤怒も一緒に待っとケ。準備してくるゼ」
そう言ってアリスは、私と憤怒ちゃんを置いて部屋の奥へとどんどん進んでいった。
「いってらっしゃーい。……憤怒ちゃん、お姉さんと一緒に遊ばない?」
「いやなのです!!」
私のお誘いを即断する憤怒ちゃん。ツインテールをブンブン振り回し、ずさぁぁぁっと勢い良く後ずさりしていく。
「つれないなぁ…まぁ、そこも」
いいんだけど、と言う前に私の頭に大きいサイズの巻かれた布が当たる。
「いたっ…なによ?早かったじゃない」
「材料は少ないからナ。そんなに手間取らねぇョ」
布を当てた張本人であるアリス。
アリスは投げた布と同じサイズの物を両手に持って立っている。
「遊んでないで、こっちに来ナ」
アリスは顎でクイッと、横にある小さなテーブルと小さな椅子を指した。
「偉そうね…ハイハイ」
「マスター!私は遊んでないのです!危機だったのですー!!」
アリスは憤怒ちゃんの声を適当にあしらうと、小さな椅子にちょこんと座る。
これもまた…かわいいわねっ!
「いいかヒナミ、オレたち人形の衣装はすべてオーダーメイド」
「さっき聞いたから知ってるわよ」
「うぐ……こ、これから作り方を見せてやル!」
アリスはヒナミのツッコミにダメージを喰らいながらも説明をする。
「んじゃ、先ずは…この二つの布でいいナ」
アリスは黒い布と赤い布を取り、テーブルの上に広げていく。
「あとは…ウーン。…そうだナ!この黒いボタンと黄色いリボンと…」
次々と服に使われるだろう部品を、広げた二つの布の上に乗せていく。
「よし、んじゃ…見とけョ!」
「見てるわよ。てか、邪魔じゃないの?布の上に置い…て…え?」
私は目を疑った。
一瞬、そう一瞬…目を逸らしただけなのに------。
いつの間にか、テーブルの上に服とスカートが出来ていた。
「は?」
アリスはいつの間にか出来ていた服を手に取り、服の品定めをしている。
黒のボタンが縦に並ぶ赤い服。袖は黒く黄色のラインが一本入っている。
スカートは黄色のラインが数本入った黒のスカート。
「とりあえず、こんなモンかナ」
「ちょっとまてぇ!!!」
「なんだョ…」
「アリスあんた今どうやったの!?」
問い詰めるヒナミ。なんだこいつとばかりに見るアリス。
アリスは軽く息を吐き、教えてくれる。余った材料を集め、また布の上に乗せる。そして、布を触る。
こ、今度こそ目をそらさないで…!!
「んーと、こう」
可愛らしいアクセサリーが出来ていた。
「なんでよぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「!?」
どっ、どうしてなの!?ちゃんと目を離さずに見ていたのに!!!
「あ…アリスちゃん?もうちょっっっとだけ!いや!!かなりゆっくりしてくれても構わないわ!!それで見せてくれないかしら!?」
「オ、オゥ」
鬼気迫るヒナミの表情に気圧されたアリスは、頬をひくつかせながら答える。
「んー、ちゃんと見とけョ?ゆっくりするからナ!」
「え、えぇ!いいわよ!ばっちこい!!」
アリスはまた、余った材料を集め、布の上に置く。
……こっからよ!!こっからが本番なのよ!!!
「……ゴクリ…!」
アリスは布で材料を包む。
包んだ!!次は!?
布で包んだ材料を両手に持ち、くしゃっと握る。
そして、それを開くと------。
布ではなく、レースの入ったカーテンが出来ていた。
「ガッテェェェェェム!!!!」
両膝を着き、頭を抱え騒ぐヒナミ。
それを引いた眼で見るアリス。
「うわぁ……」
「マスター…この人少し…いや、かなり頭が残念なのです」
「まぁ、そこが面白ェんだけどナ…」
崩れ落ちた私を他所にアリスと憤怒ちゃんが話している。
なんでなのよぉぉぉ…!!作る過程色々と飛ばしすぎでしょおぉ!!
嘆くヒナミに、引いた眼で見るアリスと憤怒。数日間、ヒナミはこのモヤモヤとした気持ちを隠せないでいたのであった。
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