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不思議アリスは人形使い  作者: ワンコ
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演目十七:ヤマガミ



エウレペールの横にある森林エリア、アウニ。アウニには数々の魔物や動物達が生息している。そのアウニには、主と呼ばれる存在がいる。とてつもなく頑丈で硬く、脅威の治癒力を誇る魔物…ヤマガミ。

ヤマガミは、全長百二十メートル、高さは80メートルで亀のような形をしている。甲羅に苔や木等を生やしており、動く速度は遅い。瞳は赤く鋭い。口からは鋭利な歯が何本も覗いている。攻撃は噛み付くや踏み潰すといった行動しか取らないと言われている。このヤマガミが現れた時は速やかに逃げるようにと云われている。



ナーシャside



「一切の攻撃手段が通らないため…か。ふむ、こんなものか」



ヤマガミ率いる森林エリアの魔物達の群れが通ったと思われる壊された街の中でナーシャは、情報を集めていた。

情報を集め終えたナーシャは、すぐさまその場から消える。




ジョーズside


エウレペール・東の門前





エウレペール東の門前に、大勢の冒険者達が集まっていた。その中に、ギルドマスター、ジョーズ・ロックウェルの姿もある。各々、自身の得意とする得物を持っている。

冒険者達の顔には覚悟した表情や恐怖に怯えた表情や緊張で溢れていた。


遠方で土煙が上がる。


それを見た冒険者は自ずと手に持つ武器に力が入る。


土煙はだんだんと近づいてくる。



「な、なんだありゃぁ…」



冒険者の誰かがが呟く。

遠くからでも分かるほどの、ヤマガミの圧倒的存在感。


まだ遠くにいるというのに、ここまで足音が地響きとなってやってくるとは…。



「っ!?…なんだ…?ヤマガミの動き止まったぞ」


「は、はは…っ!疲れたんですよ!きっと!!」


「そうよそうよ!」



疲れる?あの天災として云われるヤマガミが…?



「おっおい!ヤマガミのやつ、なんか沈んでるように見えないか!?」


「うぉおぉ!!ほんとだ!!」



冒険者達の喜ぶ声が聞こえた。ジョーズは思考をやめる。

そして、沈んでいると言われたヤマガミの方を見ると------。



「あっ、有り得ん!?まさか…っ!!」


「うぉっ!?ど、どうしたんです?ギルドマスター」



私の声に、横にいた冒険者が驚いた。



「気づかんのか!?あれは沈んでるんじゃない!!『飛ぼうとしてる』んだ!!!」


「!!??」



あれは沈んでるではなく、飛ぶ。足に力を込める動作をしてたのだ。

全ての冒険者達に再び緊張が走った。



「ギルドマスター!?有り得ませんよ!!だってやつは」



その言葉が続く前に、ヤマガミは『飛んだ』。



ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!!!



着地。それと同時に凄まじい衝撃が冒険者達と門を破壊していった。





ナーシャside



もうすぐでエウレペール東の門に辿り着くという所で、ナーシャのいる場所にものすごい衝撃が走る。



ズドォォォォォォォォォォォォォン!!!!!



「くっ…!なんだこの揺れは…っ!?東の門から煙!?…馬鹿な…ヤマガミと門はかなりの距離が離れていたはずだ、何故…っ!」



考えても無駄、だな。全速力で向かうとしよう…。


ナーシャは再び加速。景色が歪んで見える。

東の門とは目と鼻の先…が、でかい何かが道を塞いでいる。

何かがいる場所は、でかいクレーターが出来ており、前方は多分、衝撃波によって崩されたと思う崩壊した門があった。



「!!…これが、ヤマガミ!!」



ヤマガミは壊した門を一瞥すると、ゆっくりと歩き出す。

まずいっ!このままではエウレペールに入ってしまう!!



「…我が主が来るまでの足止め…。しかと務めさせていただきます!!」



ナーシャは叫ぶと同時に走り出す。

ヤマガミの足元まで走り、右手で足を撫でる。



「撫切・刹那」



ナーシャの体がブレる。そして、ヤマガミの四本の足に刀で切られたような傷が入る。



『キュァァァァァァァァァ!!!?!』



ヤマガミはわけも分からず出来た傷に悲鳴をあげ、傷つけられた四肢に力が入らなくなったのか倒れる。



ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!



「ふん。なんだ、やはり脆いではないか…これなら我が主を呼ぶ程では…っ!?」



ナーシャは急いでその場から飛び退く。

ナーシャがいた場所に棘が生えた木が突き出てきた。

危ないな…。それに…。



「ははっ…。もう再生したのか…!」



ヤマガミは私が付けた傷をもう治していた。四肢に力をこめ、立ち上がるヤマガミ。

ヤマガミはエウレペールに入るのをやめ、ゆっくりと私に視線を向ける。その顔は怒りに溢れていた。



「ふふ、そうだ。書物によるとお前は攻撃が一切通らない事で有名だったみたいだが…どうだ?私の撫切は」



ヤマガミは怒りから我を忘れている。前足を持ち上げ、振り下ろす。

それを、ナーシャは軽々と避け、振り下ろされた前足を一本切断する。



「甘いな!!撫切・刹那ァ!!」



さらに続けてもう片方の足を切断。



「ぐっ…!?なんだ、ヤマガミのやつが…」


「っ!みて!誰か戦っているわ!!」



崩落した瓦礫から這い出た冒険者達が、ナーシャの戦う姿を見て驚いている。



「あの子は…!!黒犬の…ナーシャっ!アリスが来てるというのか…」



その時、ジョーズも瓦礫から這い出ていた。

ナーシャの戦う姿を見ると、アリスが来ていると思ったが、ナーシャしか見えない。



「随分とボロボロだな、ジョーズ」


「うおぉっ!?いつの間に…いや、それよりも援軍ありがたい!!君たち程の者が来てるとは…アリスはどこだね?」


「我が主はまだ。ですが、ここでヤマガミの足止めをするように命令されている」


「そうか…それでもあり」


「うぉぉおぉおぉぉおぉぉ!!!!」



ジョーズの声を遮り、冒険者達の歓声が上がる。



「すげぇぇ!!攻撃が通らねぇヤマガミに一体どうやってあれだけの傷をつけたんだ!?」


「うはぁあ!めちゃくちゃ綺麗でかっこよくて強いだなんて…俺惚れちゃう」


「おっ、お前達!!まだ安心仕切るのは早いぞ!!」


「っ!!ジョーズ!もう再生したぞ!!」



切断された足を再生し、再び立ち上がるヤマガミ。ヤマガミは沈む態勢に入る。



「……?ヤマガミは何をやって…」


「うわぁぁ!?またやる気だぁぁ!?」


「にげろぉおお!!」


「逃げるってどこに!?」



阿鼻叫喚。冒険者達は先程から一転して様子が変わる。



「ジョーズ、どうなっている?」


「……ヤマガミは今、飛ぼうとしている」


「なに?…奴は歩く事しか出来ないはずだが」


「飛べるんだ!さっきそれを目の前で見た。門を破壊したのもそれだ」


「なんと…!」



ジョーズとナーシャが話し合ってる間に、力をため終えたヤマガミが飛ぶ動作に入る。



「くっ!来るぞぉぉぉぉ!!!」


「………っ」



ヤマガミの体が空に上がる。


上がった体はナーシャ達目掛け、落ちて------。




来る前に、『白い何か』に蹴り飛ばされる。



「……………は?」



ナーシャも、ジョーズも、冒険者達も、一様に呆然と佇む。


呆然としているナーシャ達に、後から声がかかる。



「ヨゥ、ナーシャ…足止めご苦労さン」



ナーシャ達は後を振り向く。そこには------



淡い水色のドレスコートと長い金髪をなびかせ、可愛らしい顔で不敵な笑みを浮かべているアリスがいた。



「さテ、始めようかナ。オレの人形劇をョ」

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