演目十五:キャミー
ヒナミside
ギルドマスター…ジョーズさんがアリスとナーシャにいじられてる中、私は別の事を考えていた。
ギルドマスターって…ジョーズなんて名前だったんだ…。
「…………」
「ん?なにかね?」
「っ!?…いえいえ別に!!ギルドマスターの名前がジョーズとかいう名前だったんだぁとか別に思ってたわけじゃないんだからね!?」
「君もか!?てかツンデレぽく言っても私の心にかなりのダメージ食らわせてるから!!」
「えへへ」
考えていたことが思わず口走っちゃったけど、気にしない!私だもの。
と、軽い雑談と弄りを交えながら話してる最中に、部屋が突然揺れだした。
「なっなに!?この揺れ!?」
「地震か!?君たち早く避難を」
私が地震に驚いていると、ジョーズがいち早く私たちに指示を飛ばすも、途中で揺れは止まり、ジョーズさんも止まる。口をあんぐりと開け、固まっている。
私は不振に思い、ジョーズさんの視線の先を辿ると------。
「コォォォオォオォォ………ッ!」
紫色の全身骨のような鎧の人が、少し空いた扉の隙間から覗いている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!???」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!???」
「おおお!?なにあれカッケー!!」
「なにぃ!?鎧の分際で我が主の心を射止めるとは…私にその鎧をよこせ!!」
約二名、悲鳴とは違うものを叫んでいるが怖すぎてツッコんでいられない。
隙間から覗いてる全身鎧がガチャガチャと身体を震わせ、怨念の篭ったような声で喋り出す。
「ギィルドゥマスタァァア……?」
「ひぇぇぇぇぇ!?」
「ぎゃぁぁぁぁ…あ?」
……………あれ?女の人の声……しかも聞いたことのある声…。
あ!?
「ギルドマスタァ?私の大切な大切なアリスちゃんに手を出スナンテェ…いい度胸してるジャナイ!!」
全身鎧の女性は、目の部分を赤く光らせる。
そう言えば、前にもこの全身鎧の見たわね。確か…本気で戦う時に出すんだったっけ?鎧の名前何だったかしら?
「ちっ、違うんだ!!あれはその…な!」
ジョーズさんは何とか言おうとしてるが、上手く口に出来ず、誤魔化すことにした。
「へェェェエ……それで……ネェェェ?」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!悪気はなかったんだぁぁ!!」
「言い訳なんて求めてないわ…求めてるのは貴方の死、のみ!!この髑髏鎧で終わらせてあげる…うふふふふふふふふふふふ」
あぁ、そうそう…髑髏鎧だったわ!確か能力は巨大な髑髏を召喚して、術者の動きに合わせて攻撃をするんだっけ?
「てか、いい加減落ち着きなさいよ…"キャミー"」
全身骨のような鎧を着た女性…キャミー。彼女は私の声に反応して、こちらに振り向く。
「あらァ?ヒナミじゃない、そこにいたのネ」
「えぇ。ジョーズさん、もう懲りてるっぽいからその鎧しまいなさいな」
多分、いま外では巨大な髑髏がギルド全体を覆ってるだろうな…。
そんなことを考えながら、ヒナミはキャミーへと意識を向ける。
「……ジョーズぅ?誰かしら」
「……あぁ、うん。ギルドマスターの名前だよ…」
「そんな名前だったのねぇ…ていうかぁ…懲りたってどーゆーことなの?私より先に制裁してくれたの?」
「私じゃないわよ。そこのアリス自身でこっぴどくやってくれたわ」
「……………」
黙り、かと思ったら当然鎧を解放しだす。赤く光る瞳は徐々に収まり、溢れ出る狂気も抑えられる。そして、いつもの雰囲気に戻るとニコニコしながらアリスの側に寄り頭を撫でる。
「あらぁ?さすがアリスちゃんねぇ?良かったわぁ。私、もしアリスちゃんに何かあったと思うといても立ってもいられなくてねぇ…つい」
「そーなのか?ならしょうがねェな!」
つい、ってレベルじゃないでしょ。なんてツッコんだら、今度は私がやられそうだから大人しくしときましょう。
外が騒がしいけど、あれね、巨大な髑髏が消えたから騒いでるんでしょ。なんて考えながら思い出した…。今更だけど、キャミーはキレたら手が付けられないのよねぇ。




