演目十四:名前
アリスside
ギルド応接室と描かれたプレートが垂れ下がっている部屋でアリス一行とギルドマスターがテーブルを挟み、対面して座っている。その部屋には、どこか重苦しい雰囲気を纏っていた。ヒナミは緊張しているのか目が泳ぎまくっている。
「君の実力は確かなものだ。身を持って体験させてもらったよ」
最初に口を開いたのは、ギルドマスターだった。
「オゥ…ところでョ」
それに応えるアリスは軽い返事を返す。
「なにかね?」
「おめェ…名前なんだョ?ギルドマスターしか聞かされてないんでナ」
「おや?言ってなかったか…これは失敬した」
そう言うと、ギルドマスターはひとつ咳払いをし、笑みを浮かべ自己紹介をする。
「私の名は…ジョーズ・ロックウェル。ギルドグラウンのギルドマスターにして山切りの二つ名を持つ者だ」
「ジョーズ・ロックウェル…おーけー!覚えたゼ」
「それと…君の名前もいいかね?何度かヒナミが喋っているのは聞こえていたが、君から直接聞いてないのでな」
おちゃらけた感じで言うギルドマスター…ジョーズはニコニコと笑っている。
「お?オレサマのことは知ってると思ったんだが、そうでもねェのか…へへっしっけーしっけー」
オレもお返しと言わんばかりにジョーズの真似をしながら応え、ダンっとテーブルに両足を乗せ高らかに名乗る。
「よく聞いとけよナ!オレサマの名は不思議アリス!ここより違う世界で最狂の人形使いと恐れられし人形使いョ!!」
淡い水色のドレスコートをはためかせ、腕を組み喜色満面な顔で立っている。ナーシャ以外呆然とアリスを見上げている。
「ハーッハッハッハッハ!恐ろしくて声も出ないカ!」
そう言うアリスの背後に黒い影…ヒナミが立っていた。
「降りなさい」
「アッハイ」
能面のような顔に、さすがのアリスも恐怖を感じ素直に言うことを聞く。
「すっ、すみません!ギルドマスター!!うちのバカが本当にもう…!」
「おいヒナミ!!我が主に向かってその言葉はなんだ!!」
「うっさいわ!!少しでも警戒した私が馬鹿だったわ!!」
「なんだとぉ!?」
ヒナミとナーシャによる子供のような争いに、ジョーズは微笑ましく見つめ、小さく愚痴をこぼす。
「私も…可愛い女の子達に構ってもらいたかったなぁ…」
「アン?なんか言ったかョ、ジョーリィ」
「ぬぅ!?聞いていたの……ジョーリィて誰だね」
「貴様のことであろう?ナメクジ野郎」
「私ジョーズなんだ…いやもうそれただの暴言だから!!」
ゼェハァと息をついているジョーズに、ヒナミは哀れみの目を向けている。それと同時に同じ仲間が見つかったと言わんばかりの顔を向けていた。




