かげろうの羽 / 空に / 夢のままなら / 泣き顔 / 死
《 お題 》
『寂しいなんて言えない』をお題にして140文字SSを書いてください。
【かげろうの羽】
私は赤のドレスが好き。
華やかで情熱的で、白い肌によく映える。
だけどあなたには白が似合う。
清潔で気高くて穢れのない白。
だから私は白を纏う。
白を纏ってさえいれば、あなたの傍にいられるから。
かげろうの薄羽のような白をふわりと着こなして、あなたの周りをくるくると舞う。
赤い私の影の上で。
《 お題 》
『鳥』と『架空』を使って140字SSを書きましょう!
【空に】
鳥籠の小鳥は空を夢見る。
白い木枠のガラス越し。
青や紫、紺から漆黒、くるくる色を変えながら、どこまでも広がり伸びる空。
冷たい雫の伝う日も、白い靄で見えない日も、見果てぬ果てに目を凝らす。
開け放たれた窓の下、小鳥は歌う。
その声で、空に蓮音の橋を架ける為。
あの果てに届けと願いを込めて。
《 お題 》
『ハッピーエンドの来ない悲恋こそ美しい』をお題にして140文字SSを書いてください。
【夢のままなら】
周囲の大反対を押し切って駆け落ち結婚した。
両親は断固として私達を許してくれない。
私のお金も、宝石も全て使い切ってしまうと彼はいなくなった。
この身を削る様にして生きるしかない私に母の言葉が今更染みる。
ハッピーエンドの来ない悲恋こそ美しい。
夢のままなら美しい思い出として輝くのに、と。
《 お題 》
#泣くという文字を使わずに泣き顔を文学的に表現してみろ
【泣き顔】
きみの瞳を潤ますのは、溢れ出る憐憫。
辛そうに眉根を寄せたまま、僕を真っ直ぐに見つめる。
瞬く長い睫毛に押しやられ、零れ落ちる憐れみで僕を溺れさせようと待ち構えている。
それなのに、朱い唇は何も語らず震えるだけ。
《 お題 》
#死という言葉を使わずに死を表現してみろ
【死】
全ての生けるものに等しく訪れる最後の時、というけれど、
これが平等と言えるのだろうか?
僕は石畳に横たわる冷たい骸を一瞥し、
温かなベッドで家族に囲まれ天に召された父を想った。
誰に看取られること無く逝ったこの孤独な魂に、
せめて等しき平安を。




