停車時間 / 模様 / 蛍 / 業 / 時の環
《 お題 》
『四十五秒以内の逢瀬』をお題にして140文字SSを書いてください。
【停車時間】
停車時間は45秒。
出張帰りの一号車の前方扉の前に待機した。
壁に張り付くようにして、降りていく人に道を譲る。
邪魔だろうな、と心の中で謝りながら。
でも、視線はホームに立つ彼女に張り付いたまま。
乗り込む人の列が切れた。
やっと彼女の笑顔が正面に見える。
キスひとつがやっと。
発車ベルが鳴る。
《 お題 》
『無事でいて』を最初に使ってSSを書いてください。
【模様】
無事でいて。
心の中でそう呟いても彼女は声には出さなかった。
命を落としても構わないとの、彼の純白の私心のない決意を、自分の我儘が汚してしまうような気がして。
だから内緒で、彼に贈ったセーターに護符の模様を編み込んだ。
誰にも読み解けない図形と文字で。
何があっても自分の元へ帰って来てと。
《 お題 》
「夜の川縁」で登場人物が「待つ」、「本能」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【蛍】
夜の川縁に小舟を繋ぎ月が昇るのを待っていた。
暗闇に蛍が乱舞する。
つがいを求めて輝くのは生き物の本能なのだろうかと、飛び交う光を目で追って。
ようやく月が頭上に届き約束の時間が訪れた。
君の足音が和流に紛れて静寂に響く。
光に惹かれ家を抜け出し飛び込んできた君を抱え、夜の川面を滑り行く。
《 お題 》
『地獄に落ちろ』を最初に使ってSSを書いてください。
【業】
「地獄に落ちろ」
金貸し稼業は因果なもんさ。
何度この言葉を吐かれた事か。
他人様に金を借りておきながら、返せと言えばこの言葉。
二束三文にもなりゃしねぇ、てめぇの命を繋ぐ為、地に額を擦りつけて頼むから貸してやったってものを。
既に地獄にいるお前ら餓鬼共に、落ちろと言われるとは片腹痛いわ。
《 お題 》
『夢幻』と『光』を使って140字SSを書きましょう!
【時の環】
時を司る神がトネリコの枝を振るう。
見せられた現在・過去・未来の夢幻劇は、私を惑乱させ恐怖に慄かせながらも、ふつふつと心のどこか深い場所から湧き上がる未知の喜悦を与えてくれた。
この不可思議な、白い流れの時という物質。
螺旋に流れ廻り続ける永遠の環に、私の魂は光となって溶け込んでいた。




