優先順位 / 庭 / ドア / 匂い / 樹
お題
『優先順位』をお題にして140文字SSを書いてください。
【優先順位】
父母の優先順位ははっきりしていて、一番に兄。なんといっても跡取りだもの。それから祖父母。家賃を援助して貰っているからね。妹。理由なし。犬のジャッキー。これは解るよ。それから幾つかあって、最後が僕。でも僕は別に気にしていないよ。だって、僕のリストには、父母は入っていないからね。
お題
『真夜中』と『足元』を使って140字SSを書きましょう!
【庭】
さわさわと若葉のさやめく真夜中の庭に、少年は一人ぽつんと佇んでいた。青白い月が頭上に留まった時、足元がざわざわと蠢き始める。彼の影が立ち上がり手を差し伸べた。その顔は漆黒の闇。表情などない。だが彼には笑っている様に思えた。彼は影の手を取った。ふわりと浮き上がる。あの月を目指して。
お題
『ドアを開けて』を最初に使ってSSを書いてください。
【ドア】
ドアを開けて僕は踏み出した。未来へ。自ら掛けた鍵を開けて。空は果てしなく広がり光が降り注ぐ。僕の背後でドアがキィっと軋んで閉まった。四季を巡り年月を重ねて再びここへ舞い戻った。古ぼけて薄汚れたドアが僕を迎えてくれた。こんなにも小さかったのか。僕を守り育んでくれていた心のドアは。
お題
〔どこまでだって、追いかける〕です。
〔体言止め禁止〕かつ〔匂いの描写必須〕で書いてみましょう。
【匂い】
何度も後ろを振り返った。どこまでだって、追いかけてくるあいつがいないか確かめる為に。独特の匂いが又辺りに漂い始めている。饐えた様な匂いだ。ツンと刺さる様な腐った肉の匂いに、胃が逆流しそうになる。僕は口を抑えて立ち止まった。肩で息をして辺りを伺う。上を見上げた時、僕の時が止まった。
お題
『頭上』と『木陰』を使って140字SSを書きましょう!
【樹】
広々とした丘陵に立つ一本の大樹。その木陰で彼は眠っていた。爽やかな風が彼の髪を嬲り、頬を撫でていく。麓では彼の国が滅び新しい国が立つ。永劫繰り返される人の営み。その木の根の底で何が起ころうと構うこともなく彼は眠る。頭上の星が巡りその時が来るまで。人々の全ての声が怨嗟に変わるまで。