扉 / 卵 / 空模様 / 境界線 / 彗星
お題
〔昔の話をしてほしい〕です。〔「!」の使用禁止〕かつ〔「黒」の描写必須〕で書いてみましょう。
頑張る…
【扉】
「昔の話をしてほしいの」君はその黒い瞳を煌めかせて僕を見た。「そんなに知りたい? 僕の黒歴史」僕は冗談めかして笑い、視線をすっと君の背後の扉に移した。磨きぬかれた漆黒の扉は黒檀製。つやつやと鏡のように君を写す。闇にうつる君。黒々と輝く。「おいで、見せてあげる」僕は扉を指さした。
お題
『お腹すいた』を最初に使ってSSを書いてください。
吉野か…
【卵】
掌に載る小さな卵。その中からそれは生まれた。円な瞳が愛らしい。覚えた言葉は「お腹すいた」それで何かを貰えたから。それはずんずん育っていった。「お腹すいた」餌だけでは足りない。全てを喰らった。育てた私も。遂に食物が尽き、それは自分の尾に食らいついた。これが世界の創世神話。完全の環。
お題
『どしゃ降り』と『暁』を使って140字SSを書きましょう!
暁何回目~
【空模様】
暁を破り明けてゆく空を、祈るような気持ちで眺めていた。どうぞ良いお天気になりますように。心配なのは、お天気だけ。そんな私の背中を母が抱きしめる。「大丈夫よ」朝食を食べる頃には黒雲が湧き、玄関先で遂にどしゃ降りの雨。「大丈夫。雨降って地固まるって言うじゃないの」今日は私の結婚式。
お題
『アンビバレンス』をお題にして140文字SSを書いてください。
『アンビバレンス』…同一の対象に対して、愛と憎しみのように相反する感情を同時に持つこと。両面価値。
【境界線】
僕の眼は今日も彼女を追いかける。彼女は僕を意識して、ちらっと見たかと思うと恥ずかしそうにそっぽを向く。僕は熱い視線を向けているのだろうか。彼女の骸を心に抱いているのに。僕の口元は微笑んでいるのだろうか。彼女の首を心で締め上げながら。憎んでいるのか愛しているのか境界線はどこにある?
お題
〔窓の外へ〕です。
〔地の文のみ禁止〕かつ〔手触りの描写必須〕で書いてみましょう。
手触り…新しい
【彗星】
僕はあの星を掴もうと、毎夜窓の外へ手を伸ばした。でも僕の掌に当たるのは凍るような冷気だけ。と、今夜はいきなり痙攣するほどの熱に手を弾かれた。僕は顔を顰めてそれを掴んだ。「待って!連れて行って!」もう一方の手も伸ばす。焼けるような熱。待ち焦がれていた彗星の尾が、僕の身体を宙に引く。