恋文 / 音 / 夕暮れ / 希望 / 猫
お題
〔わからないとはいわせない〕です。
〔感動詞禁止〕かつ〔キーワード「手紙」必須〕で書いてみましょう。
感動詞…「ああ」「おお」、「おい」「もしもし」の類や、応答を表す「はい」「いいえ」も。
【恋文】
「これが何だか判らないとはいわせないよ」僕は妻の前に、手紙の束をバサリと置いた。屋根裏部屋のトランクの中から偶然見つけた恋文の数々。妻の浮気の証拠を。「あなた、これが何だか判らなかったの?」ふてぶてしい女だ。「これは貴方のお父様がお母様に宛てた恋文よ」妻は笑って僕を見つめ返した。
お題
『ちょっと黙って』をお題にして140文字SSを書いてください。
本編で使ったセリフ
【音】
閉じ込められて数時間が経つ。「ちょっと黙って」きみは人差し指を唇の前で立て片目を瞑る。そしてわざとダンダンと足踏みするように、艶やかに磨かれた板張りの床の上を歩き回る。「見つけた。ここだけ音が違う」きみは板の割れ目にナイフを差し込み引き剥がした。床下には満点の星空が広がっていた。
お題
#リプできた単語を入れてSSを書く 「夕暮れ」
【夕暮れ】
観光バスで出逢った彼女は、「止めて」と甲高い声を上げバスから飛び降りた。手には一眼レフ。眼前で、巨大な赤が辺りを金に染め砂の中に沈もうとしている。風に舞い立つ砂塵。広大な無の夕暮れ。シャッター音が響く。この為にこの地へ来たのだ。彼女はカメラに、僕は心に、この風景を焼き付ける為に。
(ノンフィクションです。いきなりバスを止められた時は驚きました)
お題
#リプできた単語を入れてSSを書く 「カフェテリア」
【希望】
駅裏のカフェテリアには不思議な噂があった。奥のテーブルに紅茶を運んで座ると、カップから立つ温かい湯気の向こうに未来の伴侶が見えるという。そんな馬鹿な…女は虚ろに笑って紅茶を淹れた。現れたのは見知った男。湯気の向こうで男は笑う。生きているのね。…冷めた紅茶に涙が一粒ぽとりと落ちた。
お題
〔聞きたくない〕です。
〔会話文のみ禁止〕かつ〔キーワード「猫」必須〕で書いてみましょう。
のみ、ということは使っていいのか。
【猫】
聞きたくない…。私は心の中で耳を塞ぐ。彼は私の向かいで必死に言い訳をしている。彼の口が動いているのは見えるのに、もう声は聞こえない。彼の肩に縞模様の猫がのっている。私を見つめる妖しい緑の宝石。猫はテーブルに飛び降りて、床を蹴る。私は猫を追う。猫を追い、そのまま車道に飛び出した。