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消された村

 カナリアはリリーヌと共に寮の自室へと来ていた。二十畳ほどの広さの部屋は真ん中に仕切りのようなものが置かれている。おそらくはプライバシー保護のための何かである。シングルのベッドと机、椅子に棚が一つずつ敷居を介して左右平等に置かれている。カナリアはリリーヌを振り返る。

「リリーヌ様はどちら側になさいますか」

「私は向かって右を」

リリーヌの言葉にカナリアは素直にうなずく。

「わかりました。それでは私は向かって左ですね」

カナリアは向かって左側にあるスペースへと近づく。

「ところで、教えておくけれどこの国の爵位を持つ者たちの間では左と右なら左が貴いの。他の爵位をお持ちの方は気にしますから。覚えておくといいですよ」

リリーヌは右のスペースに自分の荷物を置きながら言う。その言葉にカナリアは固まった。そしてリリーヌを振り返る。

「リ、リリーニュ様?何故、高貴な左を私などに」

カナリアはリリーヌの言葉に慌てたように手足をバタバタさせる。

「なぜって。そちらが西に面しているからです。私、西日が嫌いでして」

「あぁ、そうなんですか」

 ――なにそれ?何その弱点。天使様は吸血鬼でもあったのかしら。天使で女神で小悪魔でお嬢様。リリーヌ様、私一生ついてゆきます。例え、許されざる恋だとしても。いや、まだ出会って数分。このトキメキは本当に恋なのだろうか。いや、恋だ。違いない。

 カナリアはリリーヌの言葉に身悶えしつつ表面上は平静を取り繕う。リリーヌは、そんなカナリアの様子を見て可笑しそうに笑う。

「カナリアさんは西日、平気なんですか」

「まぁ、私の村では日差し除けも何もなかったですから。慣れでしょうか」

カナリアはドッテーヘン村に思いを馳せながら言う。

「そう。貴方の住んでいた村はどなたの領地なのですか」

その問いは貴族のリリーヌにしては当然の問いだがカナリアからしてみれば違う。カナリアはその問いに戸惑う。

「えと、私の村は、ドッテーヘン村と言います。サジタリア王国の端の端に位置してまして、王都よりも隣国のタートンバレル共和国の首都に行く方が近いところなんですけど。どなたの領地と言われると、ええと…」

「税を納めている人の名前は分かりますか」

「私の村は貧乏すぎて税が免除されていたので」

「え、何か、村に特徴的なものはありませんでしたか」

「あぁ、それなら村の西半分が国指定のゴミ捨て場でした」

カナリアはリリーヌの言葉にポンと胸の前で手を合わせて笑顔で答えた。その言葉にリリーヌは顔を引きつらせる。

「リリーヌ様?どうかなさいましたか」

「いえ、その。カナリアさん、貴方がそのドッテーヘン村というところの出身ということは黙っていた方がよさそうですね。貴方の故郷は私の領地のミッドダリア村ということにしておきましょう」

「?ドッテーヘン村が私の故郷なのですが」

その言葉にリリーヌは困ったように笑う。

「その、言いにくいのですがドッテーヘン村は、そのおそらく国指定の消された村かと思います。そこの村の出身と分かれば貴方は恐らく、酷い差別に合うかと思います」

「消された村、ですか」

カナリアの聞いたことのないその言葉はとても不吉な響きを持っていた。

 なんか、乙女ゲームの設定がいろいろ曖昧すぎて先行き不安。

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