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リリーヌ様との出会い(運命を感じた)

 カナリアは男に教えられたとおりの道順で白百合寮を目指す。間違ってもここで道に迷ってはいけないとカナリアは自分に言い聞かせる。なぜなら、道に迷う、それ即ち、恋愛しぼうフラグだからである。

「どうせ、運命の出会いなら素敵な女性がいいなぁ」

誰にも聞こえないくらい小さな声でカナリアは呟く。そして、自分の理想とする女性像を想像しかけて慌てて止める。ここで考えに耽って足を止めることは即ち、恋愛しぼうフラグに繋がるからである。躓いたり、転んだり、ぶつかったりしないように慎重にかつ急いで足を進める。もとよりカナリアは超が付くほどの田舎の村で育った田舎っ子である。そして、村人全員、裸足が常の貧乏っ子でもある。多少のでこぼこ道程度で転ぶはずもないのである。もちろん注意力が散漫になっていた場合は定かではないが。

 そして、そそくさと白百合寮までの道を歩く。思いの外、歩きにくい靴下を前に、ものの十分程度で白百合寮に着いた。だが、ふとここでカナリアはゲームとの些細な違和感に気付く。

「なんで、寮に着くまでの道のりに一時間もかかっていたんだっけ?カナリアならそんな時間かからないはずなのに。嫌な予感がするし、早く寮に入ろう」

小声で呟いて寮を改める。ドッテーヘン村の民家を全て足してもまだ足りないほど大きいその寮は門に白い百合の花が描かれていた。カナリアは一つ深呼吸をして扉に向かう。そこで、カナリアを呼び止める声がした。鈴のような愛らしい声にカナリアは振り向く。そこに天使がいた。綺麗な亜麻色の髪を腰の辺りで切り揃えて長い前髪を右側に流した深い橙の瞳の、セピア色のドレスを身に纏い白いパンプスに似た靴を履いた女性。そこには華やかな美しさこそないが、静かな揺蕩うような美しさがあった。カナリアはその姿に息をするのも忘れて見惚れていた。暫くしてカナリアは目の前の天使が自分を呼んだのと言うことを思い出して慌てて言葉を発する。

「あ、すみません。私、カナリアと申します。庶民ゆえ、氏はありません。よろしくお願いします」

と同時に腰を九十度に曲げてお辞儀をする。

「そう、やはり貴方がカナリアさんでしたか。十何年ぶりの平民から出た魔力持ちだそうですね。私はリリーヌ・フォルテ・アドレイスと申します。わたくしのほうこそ、今後とも仲良くして頂きたく存じます」

そう言ってリリーヌはドレスの裾を上げ左足を下げ右足を軽く曲げる。

「はぅああ。あ、あの、私のような平民なんかと仲良くしていただけるのですか。リリーヌ様」

カナリアはリリーヌの言葉に慌てたようにそれでいて嬉しそうに言う。

 --なにこの天使様。美しい姿に愛らしい鈴のような声。庶民である私にも気さくに声をかけてくださる優しさ。・・・いや、冷静に考えればそれは優しさではなくて庶民に対するただの興味か。それでも〝今後とも仲良く”と言ってくださるなんて。あぁあぁ。リリーヌ様、私一生貴方についていきます。

と、カナリアは心の中でリリーヌに忠誠を誓ったのである。

「えぇ。もちろんです。それに私、貴族と言っても最も爵位の低い男爵家の娘ですから。それに、私と貴方はルームメイトですから」

「ルームメイト・・・」

 --そう言えばゲーム内ではモブキャラだった人たちも名前や爵位、何より姿かたちがあるわけで、この方が私の、カナリアのルームメイト。でも、どうしてこんな素敵な彼女がゲームではモブだったのかしら。恋愛対象でなくてもカナリアの友人として出したら人気を博しただろうに。

「えぇ、赤薔薇の寮や紫陽花の寮になれば話は別ですが白百合の寮や向日葵の寮では基本、二人一部屋ですから。仲良くしてくださいね」

そう言ってカナリアは優しく微笑む。カナリアはその笑顔に完全に心を奪われた。

「はい。リリーヌ様、私も私もリリーヌ様と仲良くしたいです。私、私、平民ですのでリリーヌ様に何かしら失礼なことをしてしまうかもしれません。その時は厳しくおっしゃってください」

カナリアは両手を胸元で組んで、潤んだ瞳でリリーヌを見つめて言う。リリーヌはそのカナリアの様子に優しく微笑む。

 カナリアの中での乙女ゲーム『君がために僕はある』の用語説明。(というか、カナリア脳内における通常用語の変換説明)

用語編

攻略対象     ➾ 憎むべき敵

恋愛フラグ    ➾ 死亡フラグ

悪役令嬢     ➾ 麗しの姫君たち※各令嬢についてもそれぞれ個別に脳内変換している

イベント     ➾ 不幸な出来事

ヒロイン     ➾ 絶望の少女

ドッテーヘン村  ➾ 故郷、まともな男子のいるおそらく唯一と言っていい場所

ゴミ捨て場    ➾ 収入源

魔法学院     ➾ 麗しの姫君たちが憎むべき敵の毒牙にやられてしまうかもしれない悪魔の館、

           憎むべき敵をたおし麗しの姫君たちを守るための試練の館、

           魔法を学び腕を上げ強くなり村を守れるようになるための手段

人物編

カナリア     ➾ 自分自身

アドル      ➾ 幼馴染、この世界で数少ない碌な男子の一人、

           (ゲーム内では)唯一の良識ある攻略対象

リズム      ➾ 性別不明、賢きもの、女性だったことに驚き

村一番の老人   ➾ 村長?

父親       ➾ 正しい男子、父親、名前覚えてる、育ててくださった恩人、病弱

母親       ➾ 綺麗な母親、病弱、幸せになってほしい人、育ててくださった恩人

案内の男     ➾ 仕事人間(カナリアからしてみればほめ言葉)、情報源その1

リリーヌ様    ➾ 天使様、女神さま、麗しき姫、お嬢様、愛し抜き守り抜くべき人

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