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王都へ

 カナリアがリズムに文字を習い始めて一週間ほどが経った。カナリアはたった一週間ですらすらと文字が書けるようになっていた。そのためか、リズムが急にテストをやると言い出し、カナリアはそれを受け終わったところだった。採点をしていたリズムがカナリアへと向き直る。

「満点です。まさか、一週間でここまでとは思いませんでしたよ。基本文字だけでなく特殊決まりも覚えてしまうとは。専門書などはまだ無理かもしれませんが大衆向けの童話集とかならすらすら読めるでしょうね」

リズムはそう言うと、どこからともなく一冊の本を取り出した。少し分厚いその本をリズムはカナリアに差し出す。

「ありがとうございます。えと、『世界の童話100選』ですか」

カナリアはその本のタイトルを読みながらその本を受け取る。

「そう。僕からの入学祝といったところですかね。面白いと思いますよ。それにその本は文字の決まりに忠実な表現で書かれていますからね。王都までの道すがら読むといいですよ。文字の復習に」

「道すがら。王都ってどこにあるんですか」

カナリアはここにきてこの国の地理があやふやなことに気付く。

「ここから馬車で七日ほど北東に進んだところですかね」

「馬車ですか。そんなお金ないですよ。入学金もですが」

「魔法学院への入学は魔力持ちの義務ですよ。それにそろそろ迎えが来ますよ」

「迎え?」

カナリアがリズムの言葉に首を傾げると同時にリズムの家の扉が勢いよく開かれた。

「カナリア、なんか王都の人たちが探してるぞ」

そう言ったのはアドルだった。カナリアは想定外の事態にしばし固まった。

「アドル君ですか。報告どうもです。でもレディの部屋にノックなしで入るのはいただけませんよ」

リズムが固まったカナリアとアドルを交互にを見ながら言った言葉に二人は一斉にリズムを振り返る。

「「リズムさんって女性だったの!?」」

二人の声が綺麗に重なった。

 その後、少しひと悶着あったがそれは置いておく。カナリアは今村の中央広場の鏡の前で村の全員と対面していた。

「カナリアよ。そなたが魔力持ちだったとは」

皆を代表して、村一番の老人がカナリアに話しかける。

「私も驚きました。まさか私が魔力持ちなんて。両親は違うのに」

 --知ってたけどね。誰にも言わなければいかずに済むと思ってたけど。そうは問屋が卸さないか。

「カナリア、パパは嬉しいよ。立派になるんだよ」

「ママも嬉しいわ。貴方はこの村の誇りよ」

「母さん。私はまだ何もなしてないよ。魔法を学んでこの村の環境を改善できるように頑張るね」

 --綺麗な母様のためならなんだって出来るのです。

両親が別れの言葉を告げると同時に村の皆が口々に「頑張れ」と声をかけた。

「カナリア、寂しくなるけど休みとかには帰って来いよ?」

最後にアドルがそう言った。

「もちろんだよ。幼馴染男子A」

「結局名前覚えてくれないのかよ」

「アドルだろう。覚えてはいるさ」

「そうか。それはよかった」

 村の人たちの声援に背を向けてカナリアは村の北の端に向かう。そこには明らかに村の人とは違う質のよさそうな服を着た男性が立っていた。隣には馬車が置いてある。

「それでは参りましょうか。カナリアさん」

「はい」

カナリアはそういうと少し背が低めの男の指示に従って馬車に乗り込む。カナリアには立派に見えるその馬車はしかしやはりそこまで立派ではないのだろう。ところどころ木が傷んでいた。しかし、屋根のついた荷台というだけでカナリアにとっては十分に豪華と言えるのだった。

「カナリアさん。これ、制服と鞄です。王都に着くまでに着替えてください。あぁ。大丈夫ですよ。揺れませんし、王都に着くまでこちらから中に入ることはありません。時計は読めますか。

 ならば、こちらを一日の移動は十時間ほどです。朝、九時から夕方の七時半ぐらいまでです。朝食は朝の八時。昼は進行度合いにもよりますが十二時ぐらい、夕飯は移動の終わった七時半です」

男はそれだけ言うとカナリアに制服、鞄と時計を渡す。そしてカナリアを一人馬車の荷台に残して前の馬に支持を与える場所に行こうとして足を止めた。そしてカナリアを振り返る。

「あぁ、そうでした。忘れていました」

男はそう言ってカナリアの頭に触れるか触れないかの位置に右手を翳した。

「沐浴」

そして、男が呟くと男の右手とカナリアが碧く輝く。

「何を」

光に驚いたカナリアがどけようとして自身の異変に気付く。

「私、綺麗になった?」

というよりも体中の汚れが落ちたと言ったほうが正しいだろう。

「沐浴は身体浄化の魔法です。お風呂に入れないときに使います」

男はそう言うと今度こそ指令台の方へと向きを変えた。カナリアは馬車の扉を閉めると鍵をかけた。リズムに貰った本を鞄にしまい、制服を見る。

「この手触り、絹?なんて贅沢な」

--入学料も授業料も取らずによくやれるなぁ

カナリアはリズムに聞いた学院の話を思い出して感心したようにため息を着いた。それと同時に馬車が動き出す。

「それにしても、初対面の女の子相手に身体浄化の魔法使うなんて失礼な奴だな」

 --やはり、この世界の男子は碌な奴がいな・・・少ない。父とアドルを始めとしたドッテーヘン村の男子はこの国では希少な碌な男子だな。十三人か。十三人しかまともな男子はいないのか。世の女性たちが可哀そうすぎる。

リズムさんの性別判明時の会話。

カナリア&アドル「「リズムさんって女性だったの!?」」

リズム「男だと思われてたの?」

カナリア「いや、中性的過ぎてまったく分かってなかった」

アドル「同じく」

リズム「いや、リズムって女性名だし」

カナリア&アドル「「そうなの?」」

リズム「そこから?タートンバレルとは違うのかなぁ」

カナリア「リズムさん。私が覚えたのは間違いなくこの国の文字よね」

リズム「国によって多少の表現の違いはあるけどこの世界では文字は統一されているから平気だよ」

カナリア「よかった」

アドル「文字?なんで??」

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