婚約者がいるのに他の女に色目使うような奴らのことなど、覚えていない。
カナリアはため息をついて、思い出した乙女ゲームの情報を整理する。ちなみに何故、同性愛者であるカナリアが乙女ゲームの知識があるのかといえば、カナリアが前世で愛した少女藤堂鞠沙に「○○も一緒にやろうよ。みんなかっこいいんだよ」と満面の笑みで言われたからである。正直、ゲームは屑だったが毬沙が楽しそうにゲームの話をしてくれるのが嬉しくて、カナリアはゲームを一生懸命プレイした。若干、男性不振になった。それでも、毬沙の笑顔のためにカナリアは頑張った。
「て、そうじゃない。彼女にはもう会えないんだ。今はこの現実に打ち勝つために情報の整理だ」
彼女は自身を鼓舞するように言って、頭をフル回転して思い出す。
--確か、攻略対象(憎むべき敵)は四人?いや、隠しキャラもいたはずだから、六人?
まず、メインである攻略対象、第一王子、アル・・・アルフォース?アルバード?いや、アルフレッド・サジタリアだったか。ミドルネームとかあった気もするが覚えてないし覚える気もない。婚約者はガーネット・カルディ侯爵令嬢。通称、紅のルート。ガーネット様は美しく、気高く成績優秀で、と、そうではない。
アルフレッドの情報は・・・確か、カナリアの入学時で三年。あとは、とりあえず、ガーネット様がいるにも関わらず、カナリアに恋慕する最低男。対処、近寄らない。
次、シルヴァ・アッドフィセン。男爵か、子爵だったかの三男。二年。婚約者はハウライト・レーゼン伯爵令嬢。通称、白のルート。二年。最低男その2。対処、近寄らない。
次、モラド・ウォーリア。公爵家の長男。二年。婚約者はアイオライト・ハーデル伯爵令嬢。通称、紫のルート。最低男その3。対処、近寄らない。
最後、オリーブ・ドライセン。子爵あたりの末っ子で長男。一年。婚約者はヒスイ・トメリア男爵令嬢。通称、緑のルート。最低男その4。対処、近寄らない。
それで、隠しキャラがフレデリック・ホワイト、教師。没落貴族の次男。生徒に手を出す屑男。それから、幼馴染のアドル。幼いころからカナリアを慕っていた一途な少年。彼だけはまだ許せた。
「カナリア?どうしたの?鏡が見つかったから村人総出で魚と果物取ってきたんだよ。ほら、なくなるよ」
アドルが、そう言ってカナリアに林檎を差し出した。
「ああ、ありがとう。それより、幼馴染男子A、貴方好きな人はいる」
カナリアは林檎を受け取りながら聞いた。
「え?僕はそういうのはまだいないよ」
その答えにカナリアは満足げに頷く。どうやらカナリアが前世から引き継がれた同性愛者のために多少、シナリオが変わっている。ゲームでは彼は七歳の時にはカナリアに惚れていたはず。
--そうか、良かった。特にゲームの強制力はない。あったとしても抵抗できると。
「そんなことよりも、食べ物なくなるよ」
アドルはそういうと広場の中心へと走っていく。
「ふむ。確実に好意はないな」
カナリアはそう判断して林檎を頬張った。
「・・・それにしても、この祭りの準備で何人死んだのか」
多分、鏡が見つかった御祝いに東の森のおそらくは中腹辺りまで行って取ってきたのだろう。村周辺はともかく、中腹辺りまで行けば魔物も出るし、この村には戦える者もいない。
「ま、卒業したら、村の護衛ぐらいは、いいかな。村が豊かになれば女性たちももっと魅力的に、っと」
カナリアは言いながら唾液を出して、慌てたように右腕で唾液を拭き取った。