防音結界の魔法
カナリアはリリーヌと共にクロスフォードについて歩く。リリーヌは婚約者のクロスフォードと一緒の科になれたのが嬉しいのか、その顔をほんのり赤みが増していた。カナリアはその顔を横で見ながら内心妬いていた。
――くそぉー。リリーヌ様にこんな顔をしてもらえるなんてなんて強力な恋敵だ。いや、そもそもで叶わないけれど。それでも絶対この男が、く、クロスフォード・レックスが羨むぐらいの友情を、信頼をリリーヌ様との間に。今に見てなさい。もしもリリーヌ様を裏切るなら
そんな穏やかではない心境を顔に出さないように気をつけつつカナリアは二人とともに歩く。
「とりあえず、科の説明をしたいから教室に案内するよ」
そう言ってクロスフォードはカナリアとリリーヌを先導する。しばらく歩いているうちにカナリアはふと前世のゲームでは専科決定の際、試験があったことを思い出す。と、いってもゲームの試験は専科を選ぶと勝手に合格となるのだが、しかし現実にはそう上手くいかないだろう。
「あの、クロスフォード様。魔法分析科の専科決定試験は如何様なものなのでしょうか」
気になったカナリアは先導するクロスフォードに聞く。
「専科決定試験なんて僕の所属する科にはないよ。ああいうのは人気があったり、ある特殊な魔法を使えるか否かで入科を許可するかを決める科だけにあるんだよ」
カナリアの疑問にクロスフォードは静かに答える。
「まぁ。そうだったんですの。私、てっきりすべての科にあるのだと思っていました」
そう言ったのはリリーヌだ。その顔を見るに本当に試験のことを知らなかったのだろう。
「まぁ、試験がない、誰でも入科を許可されている科なんてプライドだけの貴族のボンボンからしてみればありえないんだろうね。本当、彼らにはうんざりするよ」
――いやいやいや、あんさんも貴族ですやん。あ、あまりのことに大阪弁もどきが。爵位は知らないけどその発言は言いんですか。
クロスフォードが真面目な口調で言った言葉にカナリアは内心驚く。その驚きを知ってか知らずか、リリーヌもそれに同意する。
「本当ですわよね。貴族なんてプライドが服着て歩いてるだけですものね」
――えぇ?リリーヌ様。そんな、いけません。誰が聞いているか分からない状況でそのような発言などなされては。
「あ、あのリリーヌ様、クロスフォード様、あまりそのような悪口は言わない方がよろしいのではないでしょうか」
――口は災いのもとといいます。
カナリアの発言にクロスフォードとリリーヌは一瞬動きを止める。それからすぐに何かを思い出したような顔をした。
「そうか。カナリアさんは平民の出だから知らないんだね。大丈夫だよ。今、防音結界の魔法を僕らの周囲に張ってるから。僕ら三人の会話は外には漏れてないし、これからも漏れない。誰かが漏らさない限りはね」
クロスフォードが柔和な笑みで言う。
「防音結界ですか・・・」
――そういえば確かにゲームでもそのような魔法はあるにはあった気がする。あまり覚えていないが。でも確かに使われていた。確かカナリアが・・・あぁ、駄目。思い出したくない。そんな記憶いらない。
カナリアの心の葛藤はさておき、リリーヌがクロスフォードの言葉に付け加えるように言う。
「私たち貴族は社交界にデビューする前にこの魔法を叩きこまれますの。そして、ほとんど常に無意識に発動するようになってしまいますの。説明しなくて申し訳なかったわ」
「あ、いえそんな謝らないでください」
――いや、それが無意識に発動するよな社交界って一体・・・。寒気がするわ。
作中でカナリアが思い出すのを拒否したゲームのワンシーン。
※攻略対象は誰でもいいがとりあえずメインのアルフレッドでいきます
カナリアがアルフレッドに人気のない校舎裏で壁ドンされているようです。
カナリア「そんな、アルフレッド様このような場所で困ります」
アルフレッド「大丈夫。防音結界を張ってるから誰にも聞こえないよ」
カナリア「そうだとしても姿は見えているでしょう」
アルフレッド「それがなんだ。僕らは互いに愛しているんだ。問題ないだろう」
そう言ってアルフレッドはカナリアの唇を奪った。
ちなみにこのシーンをみた前世のカナリアは攻略対象どもの言葉に吐きました。そして、女性に許可なく唇を奪ったやつらが許せないと思いました。でもゲームの中のキャラに憤ったところで仕方ないので制作会社に怒りました。シナリオライターに抗議しようとして女性だったので強く言えませんでした。というより、乙女ゲームは往々にしてそういうものなので仕方なく日記にイライラを書きなぐっていました。もちろん藤堂毬沙の前では笑顔で話してました。




