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第九話 アイデアと工廠長

 5000クレジットもの大金が棚ぼた的な感じで手に入ってしまった。

 どうしよう。やっぱり、装備の拡張に使うべきなんだろうか?流石に、「5000クレジットだひゃっほ~い!今日はパーティーだぜ!!」とか言ってパーティーセット(3クレジット)を買ってはしゃぐ気にはなれない。そりゃそうだ。なんせ、もしかしたら人類が滅亡するかもしれないなんて言われたら、はしゃいでなんていられない。

 通信部の青年が言うには、今までノウンはワープを使ってこなかったらしいのだ。

 それにより、ワープで先に重要地点を占拠し、戦いを常に有利に進めることに成功していた。

 それができなくなれば、戦況が一気に傾くのは避けられないだろう。

 だが、その情報を俺が持ち帰ることができたのは幸いだった。それによって、現在も作戦が立てられている。こうやって宇宙にやってくる前はポジティブではあったものの、自分の周りさえ良ければいい、地球の裏側の孤児のことなんでどうでもいい。って感じだった。でも、実際に人類の役に立ってみると、存外達成感がある。

 今回の件は、本当にたまたまなんだろうけど。


 さて、いろいろ考えてみたが、やはり装備の拡張に使うべきだろう。かと言って、やはりこの船――第三世代型フリゲート艦では、今後、ノウンが強化されていく可能性がある中、戦い抜けるとは思えない。一番ワープ時の危険、反動が少なく、通常航行の速度でも優れているため逃げるには最適だが。50J規格以上のレーザー砲を後ろからぶち込まれたらそれで終わりだ。Jを正確に理解しているわけじゃないんだけどね。なんて読むんだ、このJ。

 というわけで、俺はフリゲート艦の一つ上の艦――駆逐艦を購入することにした。

 駆逐艦は、フリゲート艦並みの移動速度を保持しつつも、そこそこの大きさがあり、搭載できる兵器の幅も広いが巡洋艦などと比べるとやはり装甲は紙で、攻撃力もどうしても巡洋艦には及ばないという、隙間産業的微妙な汎用性にあふれる艦種だ。

 まあ、俺の時代――というか第二次世界大戦中なら、駆逐艦は水雷船隊として役に立ったのかもしれないけど。魚雷系の装備なら、巡洋艦や戦艦でも搭載できるしね。この時代。流石だわ。


 駆逐艦の値段だが――やはりというべきか、ピンキリだ。

 安いものでは中古で1000クレジットとかのものもあるが....高い奴だと、なんと50,000,000クレジットもする奴がある。なんじゃそりゃ。1クレジット一万円計算で....5000億円か。なんだか、俺の時代にあった超先進的(笑)ロマン駆逐艦を思い出す。なんだろう、このすごくズムウ○ルトさんを思い出す金額は。火力という火力をしこたま陸へ....ってこの時代に対陸地の戦争なんてなかった。

 でも、こっちの時代のズ○ウォルトさんは大丈夫っぽい。金額通りの働きはしてくれるだろう。


 こっちの奴は....おお、レーザー艦か。こんなのを買うのも面白そうだけど――こいつはそもそも、複数の艦での行動が前提だ。守ってくれる奴がいないのに防御をかなぐり捨てたレーザー艦を買うなんて、馬鹿の極みだな。うん。でもやっぱり、ロマンは溢れている。でもなぁ....レーザー艦を守りながら実践投与しようとすれば、同型の艦が二隻以上護衛につくのが好まれるらしいし。ネットに書いてあっただけだけど。

 でも、やっぱり一隻で戦艦級の攻撃力は魅力的すぎる。

 欲しい。けど無理。流石に諦めた。命とロマンなら命を取ります。


 ほう、こっちにも面白そうなのがある。

 こっちのは、簡易的なドッグとしての役割を果たす――まあ、所謂工作艦だ。

 こいつがあれば、多少の損壊ならコロニーじゃなくても修復が可能だ。ダメージコントロールができる範囲を超えているが、コロニーに帰還するほどでもない損傷を修復するらしい。

 工作艦ってのもロマンあふれるなぁ....。買いたい。すごく、買いたい。

 でも駄目。俺、ボッチだから!工作艦含め二隻(内一隻はフリゲート艦)で、工作艦が必要な場面が思い浮かばない。むしろ、工作艦を直すために工作艦が必要になっちゃう!







 はっ!

 気が付くと、すでに夜の十二時を過ぎていた。自分の艦隊の編成に集中しすぎていたみたいだ。でも、これで基本的な方針は定まった。安定よりは、少々....いや、大分ロマン方面に偏ってしまったが。

 よし、明日、お昼までは軽く運動でもして、昼になったら工廠長のシリルさんに相談してみよう。もしもその提案が無理なら、諦めて普通にするってことで。


 そう考え、俺は風呂に入ったあと眠りについた。

 風呂の中での出来事は....よかったですとだけ言っておこう。ほとんど生えてないのな....いや、なんでもない。なんでもないったら何でもない。何故か睡眠が深かった気もするけど、それはお風呂の中での出来事とは全く関係がない。


 やれやれ、人類がピンチかもしれないというのに、俺は何をやってるんだか。

 人間の三大欲求だから仕方が――いやほんと、何もしてないよ?







「ふわぁ....」


 以前の俺のものとは全く違う、可愛らしいあくびをして、ベッドのふちに座る。

 目が覚めてきたら立ち上がって、うぅん、と伸びをした。

 感覚だが、よく眠れた気がする。何故だろう。昨日の晩何かしたっけ....ああそうか。お風呂で....いや、何もしてないってば。

 ネックレス型端末を起動して時刻を確認すると....もうすぐ昼に差し掛かろうかという時間だった。もういい時間だ。もしも会社があったら、完全に遅刻だった。時間も気にせずだらだら寝たし、仕方がない。考えてみれば、寝坊助の俺が目覚ましもなしに朝起きるなんて、不可能だったんだ。

 運動はそこまで優先順位が高いわけでもなかったので、別にいい。


 朝ごはん――というより、すでに昼なので昼ご飯をもしゃもしゃとほおばる。一人暮らしだったので、簡単な家庭料理ならできる。というか、時々妙に凝りたくなるので、家庭料理を超えたレベルの料理だって、作ろうと思えば作れる。

 今は別にいいので、作りはしないけど。


 食べ終わったら、さっとシャワーを浴びて目を覚ました。夜寝る前にも風呂には入るが、朝にもシャワーだけ浴びる。それが俺の日課だった。シャワーを浴びると、目がさっぱり覚めるんだ。


 さて、もういい時間だし、シリルさんに連絡を入れるか。


 呼び出し音が鳴り――シリルさんが出た。


「シリルか?私だ」

「ああ、セシルさんですね。何か用事っすか?」


 相変わらず軽い口調だなぁ、なんて感想を抱く。けど、向こうも「相変わらず偉そうだ」なんて思っているかもしれないので、お互いさまだ。


「少し作戦に参加することになりそうでな」

「作戦って....すごいっすね、新人なのに。この前のことと関係が?」

「いや、それは言えん」

「そうっすね、すみませんすみません」


 たぶん、言わないほうがいいだろう。ノウンはワープしないというのが当たり前らしいし、まだ軍の中でも一部しか知らない情報のはずだ。もしかしたら公式サイトに公開されているかもしれないが、用心するに越したことはないだろう。もしも俺から漏れた情報が混乱のもとになったら、ヤだし。


「で、どうしたんすか?」

「ああ、実は相談があってだな。....駆逐艦とフリゲート艦をつなげることは、できるか?」


 そう、それが俺の考えた提案。船同士の合体だった。

 探してみたが、そういった装備はなかった。合体させるくらいなら、同じくらいの大きさの艦を買う、ということだろう。


「出来れば、戦闘中に着脱できるようにしたい」

「なるほど....合体、ですね?」


 まあ、合体ってロマンだし?

 幸い、出頭命令は二週間後くらいだろうと言っていた。それまでにできればいいのだが....。間に合うだろうか?いくら仕事が早いとはいえ、さすがに新しい構造を二週間というのは無理があったか....。

 だが、そんな心配は杞憂に終わった。


「いやぁ、セシルさん、話が分かる人っすね」

「ん?どういうことだ?」

「実は、僕、だいぶ前からそのアイデア、温めてたんですよね。実はその装備、もうほとんど完成してるんですけど、テスターになってくれる人がいなくて。何故このロマンを理解できないか、理解に苦しみますね」

「確かに、合体はロマンだな。私にはわかるぞ」


 これには、驚いた。シリルもそうだったようで、お互いに目を合わせ....にやりと笑った。

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