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やっぱりラブコメが始まる予感

「ねぇ、運動しないの?」


「いやいい、めんどくさい」


 昔は子供みたいに体育という時間は学校生活で2番目(一番目は給食)に楽しみだったが、今ではけだるさしか感じない。


「その割りに体力ばかりあるから、みんなに陰口言われるのよ」


「いいんだよ、美姫にだけかまってもらえれば」


 少々俺の立ち居地はクラスではよからぬ所にある。まあ、いいんだけどね。


「やらないなら、私も暁にかまわないよ」


「よしやろう、サッカーかバスケットかバレーかマラソンか」


 ちなみにどれひとつとして並みの人間になら負ける気はしない、美姫にいいとこ見せるぜ。


「まったく、……暁はなんにも変わらないんだね」


「なにが?」


「なんでも、バトミントンしよ」


「それは苦手……」


 ああいう細かいのは嫌いだ。卓球とかも論外。


「ん、大和じゃん、なんだあいつこっちばかり見て」


「……なんでだろうね」


 ロシア、あいつとうとう美姫の魅力に……これはまずい、ピンチだ。奴が本気になったら3秒で大概の女は落ちる。美姫は落ちるどころか、すでに落ちてる。奴がそんな姿勢見せようものなら……美姫が取られる。


「テメェ大和こっち見るんじゃねぇ!」


 朝の件もあわせ10発はお見舞いしてやろう。ひとまずとび蹴りから始まるコミュニケーション、スタート。


「ちょ、いきなりガハッ!」


 続いてラリアット、そしてコブラツイスト。んでもってヘッドロックからの裏十字締め。


「へへっ、次は何がいい」


「普通に攻撃しないでいただきたい」


 そういいながらもされたいままになってるこいつはかなりドMだと思うね。


「だが断る」


「ひでぇ」


 パロスペシャルがきれいに決まりご満足の俺を美姫が恨めしそうに見てる。ごめん全部は美姫のためなんだ。


「もう……」


 最近よく美姫が悲しそうな顔をするのは気のせいではないのだろう。


「だって大和が美姫のこと変な目で見るからさ」


「大和君は別に私のこと見てたわけじゃないよ」


「まったく、そうやって大和の肩持つ」


「別にそういうわけじゃないよ、ただ……」


「信濃、止めてくれ」


 美姫の言葉を大和が打ち消す。 


「テメェ、大和美姫の好意を……」


「……」


 無言で俺を見る大和、その瞳からは何か強い意思のようなものを感じる。俺は掴んだ胸倉をそっと離した。


「ッけ、今日はこんなもんで勘弁しといてやるよ」


 変な空気に飲み込まれ、その場にいづらくなってしまう。俺はそこから立ち去った。


◇◆◇◆◇◆


「ちょっと武蔵さん」


 木下でうとうとと昼寝をしてるとヒステリックな声が俺の頭を揺さぶった。


「……なんだよ」


 目を覚ますと黒縁メガネがあった、いやメガネじゃなく人なんだけどやっぱりそれが第一印象に来る。顔はそこそこよく、なんか女子のグループ的なのの中核だったな、まあ美姫には敵わないけど。

 なんて言ったけ、このクラスの委員長っ的な奴……。


「なんだよじゃありませんよ、あなたって人は授業サボって昼寝なんてしていいと思ってるんですか?」


「別に体育なんてそんなもんだろ、めんどくさい」


「まぁ、あきれた。なんて自分勝手な人なの」


 やれやれとこめかみを押さえるメガネ。誰だっけ……。


「第一部活にもはいってないあなたがこの前の体力検査ですべて主席なの自体気に食いませんわ」


 たしか一位全部は俺だったけど二位は大体こいつだった気がする。マジで誰だっけ……。


「たしかに部活はやってないけどさ、努力はしてんのよ。いろいろ」


 家帰って、ゲームやって、ごろごろして、寝る。ほら努力してる。


「陸上部のエースである私以上に努力しているとは思えませんわ」


「……自分でエースとか言うか普通」


 ブチっと何かが切れる音がした。


「あ、あなたって人は! 許せませんわ」


「許せないんだってら、どうすんだよ」


「決闘ですわ」


「お前さ、いつの時代の人よ」


 それともなんですかライディングでもしてアクセラレーション? かっとぶの?


「第一、俺は女殴らねぇ」


「殴るですって!? あなたこそいつの時代の人間ですの?」


 なんだろうこいつむかつく。そういえばこいつ誰だっけ……。


「放課後、お待ちになってなさい」


「やだ、めんどくさい」


 キーと甲高い声を上げ、絶対に捕まえるだのなんだの言って消えてくメガネ、ホント名前なんだったけ?


◇◆◇◆◇◆


「なんかさ、あのメガネに決闘とか言われてさ」


「メガネ? 莉子のこと?」


「そうだ、莉子だ!」


 てかメガネで分かるんだ。美姫の中でもそういう認識か、うれしい。


「たしかに莉子、暁のこといろいろ言ってるもんね」


「で、そのナントカ莉子さんが俺にケンカふっかけてきたわけ」


「長門よ、長門莉子。たしかにあの子なら言いそう」


「どうしよう」


「執念深いから、きっと逃げたら地獄のそこまで追っかけてくるわよ。素直に受けることね」


 うわっ、めんどくさい女。Q『私のことめんどくさいと思ってるでしょ』 A『思ってないよ』 返答『いいえ、思ってるわ』って言うくらいめんどくさい。


「はぁ、厄介なのに目付けられた……」


◆◇◆◇◆◇


「武蔵さん」


「うわっ、ほんとに来た」


 現れためんどくさい女こと、長門莉子。


「さあ私と決闘を……」


「じゃあな」


 こんなこともあろうかと、荷物はすでにまとめておいた。それを肩で担ぎ一目散に逃げる。


「ちょっと、お待ちなさい」


 美姫の言うように地獄までついてきそうな勢いだ……。


◇◆◇◆◇◆


「まだついて来るのかよ」


 自称陸上部エースは伊達じゃなかった。一定の距離をずっと保ちながらついてくる。


「こうなったら……」


 いつのもの帰路を変更し繁華街へと向かう、あそこなら裏道を駆使して逃げ切れるはず。


「どこまでだって追いかけますわ」


 繁華街をはいって早々細道にそこを右へ左へ移動し再び繁華街の表通りに出る。そしてすぐにゲームセンターに飛び込み姿を隠す。


「ふぅ、ひとまず巻いたな」


 ここのことなら小さいころから遊んでいるためもあり、熟知しているつもりだ。あいつが諦めて帰るまで適当に遊んで時間をつぶそう。


◆◇◆◇◆◇


「暁!」


 名前を呼ばれ少々驚いたがそこにいたのはあのメガネではなかった。


「なんだ大和か、驚かせあがって」


 気を取り直してゾンビどもを打ち抜いていく。


「そういや、さっき長門が探してたぞ」


「え、あいつまだ探してんの?」


 ワンコインで第6面までクリアーしたので大体かれこれ30分は経っているんじゃないだろうか。


「たしか西裏通りのほうにいたな」


「はぁ、ホントめんどくさい女。後は任せた最後までクリアーしろよ」


 銃を大和にバトンタッチし西裏通りに向かう、あそこは昔からごろつき達の巣窟だ。そこにそこそこ美人の女なんかが迷い込もうもんなら、まあエロ同人が書けるんじゃねえの?


「ちょ、暁!」


◇◆◇◆◇◆


「こんなとこに御嬢ちゃんが来るなんて襲ってくださいって言ってるようなもんだよな」


「まったくだ」


「ちょっとあなた達、何のつもりですの?」


 ごろつき3人に取り囲まれる様はエロ同人の冒頭3ページほどに思える。


「何のつもりって、わかんだろ?」


 一人の男が手を伸ばしてくる。


「嫌ッ……」


「ライダーキックッ!!」


 乱入してきた陰が日曜朝のヒーローよろしく蹴りを決め、手を伸ばしてきた男が派手に吹き飛ぶ。そして地面に着地すると同時にもう一人に飛びひざ蹴りを決める。


「武蔵さん……」


「まったく、あとで胸くらいもませろよ」


 残った一人がファイティングポーズし、それに対しこちらも構えを見せる。


「ッ!」


「ふ、のろまが」


 相手の攻撃を避け体勢を崩したところにまわし蹴りを決め、男は泡を吹いて倒れる。


「仲間連れて家に帰りな」 


 最初に一撃を決められた男がよろよろと立ち上がり、残りの二人を連れよろめきながらも走って逃げていく。


「助けてくれだなんて、言ってませんわ」


「震えながらそんな台詞言ったて何の説得力もねぇぞ、……立てるか?」


 莉子に手を伸ばす。それを掴み莉子は立ち上がった。


「あ、ありがとう」


 不器用に例を言う莉子。ホントめんどくさい女。


「てかさ、いつまで手握ってんの?」


「も、もとはといえばあなたが逃げたのがいけないのではなくて。しっかり大通りまで案内しなさいな」


 いまだに足が震えてるところを見るとよっぽど怯えてるようだ。そのことはあえては言わないが。


「しゃあねぇな」


 歩き出すとゆっくりと莉子がついてくる。


「ところで、今日は水色な気分なのか?」


「……?」


 スカートをめくるようなジェスチャーをすると、かーっと莉子の顔が赤くなる。可愛いとこもあんじゃん。


「あ、あなたって人は……」


「はい到着、さっさと帰れよ」


 大通りに出て、ぱっと手を離すとそのまま走り去る。


「なんて人ですの……」


 少女は熱くなった頬を抱え立ちすくむのであった。


◆◇◆◇◆◇


「まったく、あの方ったら」


 熱いシャワーが体に降り注ぐ。今日一日でいろんなことがあった。


「あの方とケンカして、追いかけて、見失って、襲われて、助けられて、そして……」


 トクンと胸が高鳴る。知っているけど知らない気持ち。もやもやと湧き上がる湯気が自分の気持ちのようだった。


「でもあの方は……、いいえ関係ないですわ、私は……」


 ぐにゃぐにゃと渦巻く気持ちに自分なりに決着をつける。

 

拝啓、読者の皆様

この章が投稿されるころには私はきっと受験真っ只中です

どうぞ応援がたら読んでいただけると幸いです

よろしかったらご感想ください

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