やっぱり恋は始まらない
新小説!
念願の高校生活が始まりすでに一ヶ月ほど過ぎた今日この頃、俺こと武蔵暁は高校生ライフをエンジョイしている。とはいっても中学と変わらない気もするが……。
「美姫、おはよう!」
家前で張り込み、ようやく出てきた俺の幼馴染信濃美姫。背は低く小柄だが、肌白で大きく愛らしい目に長いまつげ、本物のお姫様のようで、うっすら桜色の唇は思わずキスしたくなる。いや本人に止められてなければ今だってしようとしていたくらいだ。そのためもあり、高校での彼女の人気は爆発的なものがあり、おそらく学年中のチャラ男どもがこぞって押し寄せてきた。しかし俺がそうさせまいと奮闘した結果、一部を除いて男は近寄らなくなり、今では俺だけのアイドル、いやマジ可愛い。
「まったく、朝から油断も隙もあったもんじゃない」
あきれ顔も素敵、てか素敵じゃない顔はないね。
「美姫、愛してるよ」
「はいはい、毎朝聞いてます。それといい加減離してくれない」
キスしようとルパンダイブを試みて抱きしめるところまでは成功したが、いつもあと一歩のところでうまくいかない。だけど美姫にならいくらでもじらされたっていい。
「まったく、朝からイチャイチャしやがって」
そんなぼやきを口ずさみながら現れたのはウドの大木こと北里大和。ひょろひょろと背ばかり伸びて、中学一年のころには俺を抜かし、成績も……は最初からか。とにかく頭だけはいい、そして無駄に顔がいい。まあ俺には勝らないがな。あと背が高い。見下ろすな殺すぞ。
「うらやましいか、だけど美姫はやらんぞ」
「いらん」
「いらないって……いらないって言われた……」
ああ、泣きそうな美姫も素敵……だが。
「大和テメェ、歯食いしばれ」
「ちょ、なんだよ急に」
んでもってかなりの唐変木、ふざけやがって。美姫に好意もたれたら一発で落ちるだろ。それに気づきもしないこいつは死んで干物になるべき。ちなみにケンカなら一度も負けたことはない。というよりこいつは仕返してきたことがない。そのため俺に一方的に殴られるだけ。
「ちょ、グハッ」
「泣くまでやめない、泣いたらそれまでの2倍の勢いで殴る」
「結局殴るんじゃん」
大和を追いかけながら蹴り殴りを繰り返す。それとさっきから美姫しゃがんで悲しみにくれてるからパンツ丸見え、今日はピンクか、可愛い。
「じゃなくて美姫、立ち上がって見えてるから」
「え、えぇ! ちょっと早く言ってよ」
そういってあわてて抑える美姫、やばい可愛い。
「だって可愛いんだもんさ」
怒ってる美姫も可愛い、てか押し倒したい。こっちは朝から準備万端だぜこのやろう。
「ねえ、美姫誘ってるよね。つまりいいってことでしょ?」
「なに息荒げてるのよ、止めてよ」
今度は美姫との追いかけっこが始まる。ほら逃げないと襲っちゃうぜ、子ウサギちゃん。
「まあ茶番もいいけど、こんなことしてると遅刻するぜ」
ようやく子ウサギちゃんを捕まえたところなのに水をさす大和。あとで死刑だな。にしてもいいにおいだ、甘くてちょっと暖かい鼻をくすぐるような、なんていうか女の子のにおい? やばい興奮にてきた、それにやわらかい。もう腰だとか胸だとかグヘヘ。神様、家のぬいぐるみ全部要らないから代わりに美姫ください一生大事にするから。
「もう止めてよ、怒るよ」
「怒って、罵って。それだけでご飯三杯と今週一週間がんばれる気がするから」
「もう、いいかげんにして」
「オゥ、イエス、ザッツソウグレイト!」
ご褒美をいただいた俺は満足して美姫を離す。いやいい朝だった。
「まったく暁ったら、ふざけすぎ」
「ふざけてないよ、本気だよ」
「なおさらたちが悪いよ」
こんな会話をしているうちに大和がいないことに気づく。それと時計はだいぶ進んでいて、ここから間に合うだろうか?
「ま、仕方ないか」
そういいながら、美姫をお姫様抱っこする。いや軽い、りんご3つよりはるかに軽い。
「急ぎますよ、お姫様。しっかりつかまってて」
「えッ!? ちょっと」
全力疾走で通学路を駆け抜ける。いや美姫がここにいるだけでがんばれるね。
◇◆◇◆◇◆
「到着」
「まさか間に合うなんて」
「美姫がいる俺に不可能なんてない」
走るためのエネルギーと美姫を抱きしめていること、エネルギーはむしろ過剰供給だぜ。
「まあHR始まるし、席着こうぜ」
こんな朝をもう何回繰り返したことか、小学校のころから変わらない日常。きっとこれからも変わらないと思ってた俺たちの日常、それが崩れてしまうのはこの日からすこし先の話。
思いつきで書きました、
ペースは時期が時期なので一ヶ月一話で書いていきます
毎月1日午後6時に
よろしかったらご感想ください^^