孤児は水浴びを眺める。
イジメはいけません。
暖かい日は、孤児院のみんなで近くの小川で水浴びなんかする。
日本ではあまりない光景だけど、プールなんてないからキレイな川はありがたい。さすがに、腹を下して以来、生水は飲んでないけど。
「コラッ、チビ共待ちやがれー!!」
「キャハハハッ」
恐い保育士さんこと先生の自称・舎弟たちが、小悪魔たちにいいようにされているのを尻目に、私は小川に足を浸していた。
パンイチの孤児院の子どもたちの中で、おませな女の子以外は私くらいなものだ。“おませ”っていったって、結局は我慢出来ずに川に飛び込む、本当に小さい子しか、うちにはいないけど。
「おやおや、良い子ぶった優等生さまは、みんなと一緒に遊ぶなんてしないんですねぇ?」
…違った、他にも川に入ってない奴らがいる。
「先生のお気に入りは川遊びみたいな、幼稚で汚れることなんてしたくたいんだって!」
「おキレイな顔が、汚れちゃうからねぇ」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべてるのは、いつもの3人だ。
細くて小さいキツネ顔の男の子と、うちの孤児院で一番身体が大きい男の子。なんというか、ス○夫とジャ○アンっぽい。
そんな二人を従えるように、まん中にいるのはの○太くん…ではなく、ネコっぽいツリ目が可愛い男の子だ。
いかにもファンタジー!って感じの青み掛かった銀髪で、まるで上品で優雅な血統書付きのネコみたい…あっ、なら青タヌキ型ロボのポジションか?いやしかし、体型が違うし、こいつが可愛いのは顔だけだ。
言葉を上手く使えず、先生に構われた弊害がコレ。
所謂、“嫉妬”というやつだ。
「別に汚れるから、したくないわけじゃないよ」
無駄だと思うけど、一応は説明する。
本当の理由は、服を脱ぎたくないだけだ。だって、服脱げば裸じゃんか。ヤダよ。
「嘘吐け!おいっ、あいつ抑えろ」
青タヌキ…じゃなくて、ネコっぽい子が子分たちに命令する。
なんで小さい子って、すぐ“嘘”って決め付けるんだよ!お姉さん、よくわからないわ〜
「って、何すんのおぉぉぉっ!?」
余裕ぶってたら、二人に両腕を抑え付けられて動きを封じられた挙げ句、残りの一人に服を脱がされてた。
うちの孤児院、先生お手製のワンピースとリボンを通したズボンをみんな身に付けてるけど、アレってすごく脱ぎ着のしやすさを重視してる。
つまり、叫んだ時点で私、パンイチです。
「いやああぁぁっ!」
「ったく、こいつ女みたいにうるせぇ」
迷惑そうな顔すんなら、さっさと離せよ○ャイアン!
あと私、女だから!
「本当はこいつ、女じゃねぇの?」
「身体拭くとき、いねぇしな」
「便所も行かないで、毎回大騒ぎしてるしな」
お風呂ないから、身体拭くだけなんだよね〜元日本人としては、ツラいです。
あと、トイレのことは言わないでよっ!私だって、毎回先生煩わせるの嫌だし、なんかすごい幼い子みたいで嫌だし。
…って、なんだか不穏な空気。
「脱がして、確認してやるよ」
「いらないよっ!」
離せ離せ離せ〜ジタバタするけど、ニヤニヤする三人の拘束は解けない。
「は〜な〜せ」
騒いでるけど、先生たちは気付かない。
近くで小悪魔たちが騒いでたら、無理もないけど、こっちは乙女のピンチなんだよ!
あぁっ、こうしてる間にも最後の砦がっ!!
「取ったっ!」
取られた〜(泣)
うぅっ、なんでこんな目に…。この後、こんなマヌケな格好で泥水のとこでも引き倒されるのかなぁ。
なんて非道なことをっ!イジメ、カッコ悪い!
「「「……」」」
無言で、腕を解放された。
何故か放心状態な三人が不気味だけど、私まで放心してて泥水ダイブさせられたら困る。
服を取り返して、ちゃっちゃと身に付けてるて脱兎の如く逃げ出す。勇気ある撤退だから、悔しくないやいっ。
「…本当に、男だった」
ネコっぽい子の、唖然とした呟き耳に届く。
ドコを確認してその結論を出したかは、普段から見たくない私は知らない!
だって私、中身は女だから!