孤児は英雄の物語を知る。
『転生したら元妻が男になってたんだが。』のあとがきと人物紹介のところにおいてある小話の加筆再録。
自分の墓参りって(笑)
呪いで死んだと思ったら、また孤児院スタートでした。えー…。
ばぶばぶいってたら、先生にあやされていましたよ。
前世からずいぶん経ってるからあのときの先生じゃないと思うけど…そっくりな強面さんです、ハイ。
神聖魔法を使っているときに組み込まれる自身の名前が、前世でお世話になった先生と同じことはこの際置いておいて!
本日、自分の死後の歴史を無責任に見つつ観光中~
あー、身に覚えのないけど、隠し子がいたらしいよ神官。しかも、後にも先にもこういった騒動は神官だけ。何故?
後々で、神官の親友(歴史書明記)の法王や、神官の唯一の弟子(歴史書明記)が調査して違うと証言してくれたらしく、この世界初の神聖魔法によるDNA鑑定もどきを実施してくれたそーな。
『すごいなー』『ありがたいな〜』より先に、『親友と弟子って誰?』状態。
名前を確認して『友だちどころか同じ孤児院出身の同郷なのに、こっちのこと嫌ってなかった?』とか『懐いてたけど、後輩だよね?教えたことあんまりなかった気がするし』とか、思わず突っ込んだよ。
いつ歴史書に書いたのか知らないけど、関係者が生きてる内にやってほしかったな。
そうそう、もう1つ衝撃的だったのは別の観光ツアーのガイドさんの一言。
「妖精姫さまと聖人さまは、世を忍ぶ恋人同士だったんですよー!」
ぶはっ!
何それ。思わず噴いちゃったけど、公式なの?
あの当時より権力なくなったけど、大神殿でする話じゃないよ。
どこから突っ込んでいいのかわからないけど、ガイドさんの熱心な説明を取り敢えず聞いてみる。
ふんふん、魔王討伐に神官が名乗りを上げたのを知った姫さまが立候補したと。
突っ走る姫さまをたしなめたり、ときには叱ったりして距離を縮めて来た。
モンスターから姫さまを救ったりとか、魔王を倒すときに神殿では禁忌とされている術を使ったとか。
そんな姿を見て、ライバルだった剣士さんが身を引いて祝福したって…なんの話?
はぁはぁいいながら熱弁奮ってくれてるけど、その話の大半は神官じゃなくて剣士さん。残りは捏造です。
回復役がモンスターと戦う機会はないし、唯一直接戦った魔王戦では血ヘド吐いて倒れてたし、禁忌の術って何?
いやー、確かに誤解をさせるようなことしたまま遺言状なしで死んだのは悪かったけど。
神官の死因が、呪いだってことは歴史書にも正しく書かれてたけど、姫さまが剣士さんの呪いを肩代わりしたことは載ってなかった。
その呪い元は、姫さまに掛けられていたもので、神官は愛する人のために命を掛けて自分に呪いを移したってことになってた。
愛してはいないけど、一方的に友だちとは思ってた。もしかして外見は異性だから、男女の友情ってマズイ?私はアリだと思うけどな…。
最終的に恋だと理解した感情はあったけど、神官は結婚出来ないしそもそも成就しない恋だったし、魔王討伐の旅以降は大神殿に監禁されてて自由はないから、なんか『どーでもいいかなー?』なんて、無気力なこと考えてただけなのに。
だったら嫌いなデブハゲ含むタヌキ親父たちに使い潰されるより、自分の命が無駄にならない方法を選んだ。
そのつもり、だったんだけどなー…。
私が転生してるなら、姫さまもしてそうだよね。執念で、記憶持ったまま。
『妖精姫と神官の恋物語』なんて寒い話、姫さまに知られたくない。
いやだって、転生したんだから、今度こそそれなりに恋愛したいじゃない?
知れたら、存在ごと抹消されかねないし。
「おーい、帰るぞー」
「あ、はーい!!」
前世にお世話になってた先生同様に、複数の舎弟を持っている今世の先生。
舎弟さんたちの顔立ちに見覚えはないけど、先生の遠い目は記憶の中の先生と全く同じだったよ。
まあ、そんな感じだけど、懐かれれば何だかんだと懐に入れてこうして私たちの引率をさせているんだから、今世お世話になってる先生もやっぱり優しいよね。
押しに弱いともいう。
孤児院スタートに思うことはあるけど、またこんな風に穏やかな幼少期を送れるんだから神さまにお礼でもいっておこうかな?
一般の人にも公開されている、かつて私たちが夜の勉強会をしていた小さな祈りの間にあるキレイに復元された壁画は昼と夜を表すような構図になっている。
反対は昼間でそっちに描けばいいのに、何故か暗い方に咲くユリっぽい花…って、あぁ【停止する時間と死を司る男神】が持ってるから、彼のモチーフになっているのか。
男神に抱えられた花束にどんな意味があるかはわからないけど、そういうものらしい。
描かれている真っ白な髪の毛と黒い衣装の長身な男神と、真っ黒な髪の毛と真っ白な衣装の小柄な女神という組み合わせの最高神夫妻が描かれた壁画になむなむと手を合わせてから、私は踵を返してみんなのところへ急ぐ。
その際、真っ白な髪の毛と銀色に塗られた瞳が大好きだったヒトと同じな男神をしっかり脳裏に刻むのを忘れない。
あの悲しい別れから、もうずいぶん経ってる。
死んだ私もたぶんその後に亡くなった姫さまも、子どもを守って命を落としたらしい剣士さんも歴史書の中にしかいない。
それは青髪くんや後輩も同じで、エルフくんはどこにいるのかわからない。
獣人さんも。
「―――――」
もう、いいんじゃないかって気持ちで、私は彼の名前を口にした。
前世の頃よりずっと獣人って種族に優しいこの世界でも、名前は親しい相手にしか明かさないのは一緒だ。
あの当時は『何で今更…?』って思ってたけど、それだけ信用してもらってたんだって今世でやっと知ったんだよ。
獣人さんも、きちんと教えてくれたらよかったのに、ね。
前世では結局、一度も呼ぶことが出来なかった彼の名前が空に溶けてゆく。
誰も返事をしてくれないけど、私はそれだけで満足だった。
…うん、多少の未練はまだあるけど、それはもうしょうがないよね!
「よーし!手に職付けつつ、今度はちゃんと自覚出来る恋をしよー!!」
最後の最期に気付くなんて、悲しいもんね!
そういうわけで、観光ツアーしてた孤児院のメンバーの元へと私は走るのだった。
……………
………
…だった、んだけど。
「やっと、みつけた」
「ふへっ?」
ふわりと軽くなる身体と、空を蹴る足。
あれ、浮いてる?
そして、続いて上から落とされる声。
「もう、どこにもいかせない」
あ、あれ?なんか、悪寒がする。
ヤンデレにとっ掴まった元神官の未来は意外に明るい(アホの子だから)。
これにて『転生したら孤児の少年になってたんだけどっ!』は一応完結です。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
神官の死後にあった各々の話を『エルフくん』『後輩』『青髪くん』『獣人さん』と、蛇足である神官の転生後を眺める『お姉さん』の話を書いてから完全に完結とします。
お付き合いいただけたら幸いです。




