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転生したら孤児の少年になってたんだけどっ!  作者: くろくろ
転生1回目・大神殿自室→冥府の神の御前
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神官、最期に自覚する。

サブタイ通り、主人公が死亡します。注意。

よろめきながら部屋を出る私に構う人はいなかった。

そりゃそうだ、姫さまが頑張って子どもを産んだんだからね。

みんな笑顔で姫さまを囲むのを視界の端に入れて、私は長い廊下を一人歩く。

すっ跳んで来るだろう、剣士さんがその腕に我が子を抱いて輪に入るのを見れなかったのが残念だ。


どうしても痛みから、のろのろよろよろとしか歩けない私は、必死に後輩が待機する城の外へと歩を進める。

姫さまにも施した、呪いが外に漏れないように身体の周りに張った結界があるから他の人は呪われないけど、私が命を落とすのは確定してる。

こんなところで真っ黒になった死体が転がっていたら軽くホラーだよ。

だからこそ、結構必死に急いでるんだけど、その進路を邪魔する大きなものが出現して足止めを喰らってしまった。


「チビ神官」


この声は獣人さんだ!

久し振り~、元気だった?

もー!獣人という種のイメージアップのため忙しく動き回ってるのは姫さまから聞いて知ってるけど、せめて十通に一通ぐらい手紙の返事を出してよ!プンプン!


彼に逢ったら、いいたいことはたくさんあった。

だけど、私の口から出たのはこれだけだった。


「ぁ………」


掠れた、言葉ですらないもの。

これが私の限界だった。

術式を床に置いたせいか、足からぐんぐん呪いが進行して今は喉まで来ていた。

想像以上に、進行が速い。

それでも、まだ足は動く。

ビラビラ長い詰襟仕様の神官服のおかげで、呪い特有の真っ黒になった肌が出ないからきっと今の私は、神聖魔法で消耗しているようにしか見えないはずだ。

そうじゃなかったら、獣人さんに心配されてしまうと私は本気でそう思っていた。

だって、あんなに過保護な彼が私を心配しないなんて、思いもしなかったんだよ。


「こんなときまで、あの女と逢引なんてとんでもねーな」


「?」


あれ?幻聴かな?幻覚かな?

心底軽蔑したような視線と声が、目の前にいる真っ白なヒトから投げ付けれてるなんて、聞き違いで見間違いに違いないよね。


「無邪気で無垢なフリして、ずいぶんとえげつない性格してるな。まさか旅の間中、オレの相棒を裏切ってたのか?」


ちょっと待って、整理させて。

獣人さんの相棒って剣士さんだ。

旅の間ってことは、魔王討伐の旅のことでいいんだよね。

でも、裏切るって何?

『えげつない』っていわれることなんて、私は剣士さんにしてないよ?


「オレらには何の連絡もよこさねーのに、ちゃっかりあの女を自分のテリトリーの大神殿に連れ込みなんて性根腐ってんだな。…ハハッ、こんなチビに騙されて名前を教えちまったオレも大概バカだよなぁ!」


待って、私ずっと手紙書いてたよ?

獣人さんが忙しいと思って、ずっと手紙が来ないのを我慢してたんだよ?

大神殿から出れないから、唯一の連絡手段だったんだ。

なんで…届いてなかったの?

そもそも、何の話をしてるの?


わからない、わからないよ。

なんでそんな、冷たくて熱い、怒りの感情しかない銀色の目で私を見るの…?


「じゅ、じんさ……」

「触るな!」


獣人さんは魔法が使えない。

なのに、まるで火の魔法と風の魔法を一緒に使ったみたいだ。

彼に怒鳴られた瞬間に獣人さんを中心に熱が吹き荒れて、私が伸ばした手は阻まれてしまった。

反射的に伸ばした、距離的に届かない手だったけど、本当に壁でもあるかのように阻まれてしまったのだ。

只でさえ痛いのに、小刻みに震える腕は悔しくて、届かない手がひたすら悲しい。


「触るな、裏切り者。汚い手で、オレに触るな」


ペタンと座り込んでも、抱き上げてくれない。

心配もしてくれない獣人さんは、見るのもイヤって感じで踵を返す。

待って!行かないでっ!!

…でも、またあんな冷たい声と怒りを宿した熱い目で見られて私は冷静でいられるの…?


逞しい、いつだって頼れた大きな背中が遠い。

葛藤している間の遠ざかる背中が、どんどん歪んでいった。


それから、どうにか城の外に出れたらしい。

後輩に抱きかかえられて大神殿に戻ると、誰かが後輩と言い争っていた。

そして乱暴に私を奪い、引き摺って自室へと放り込んで閉じ込められる。

いつも通りだね。


ずるずる這いずってベッドへとよじ登った私は、全身に回った呪いの痛みにのたうち回る。

引っ掻いて、叩いても何の感覚ももう、ない。

叫んでるはずなのに、自分の悲鳴も聞こえないって相当ヤバいよね。


あぁ、それにしても。

最期に逢えたのに私、獣人さんにいえなかったな。

がりがり身体中を引っ掻いて、痛みを逃そうとガンガンベッドに足を叩き付けながら、ぽつりといつの間にか生まれていた感情を思う。


涙で歪んだ視線の先には誰もいない。

閉じられたたった一人の部屋の中で、私は最期に真っ白な彼を思った。


わたしは、じゅうじんさんのことが………。

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