神官は同じ日々を繰り返す。
短いです。
あの、衝撃的な日からどれくらい経ったんだろう。
りーん、りーん
しゃらん、しゃらん
「次は伯爵さまの治療だ」
「はいはい」
「返事は一度でいいといってるだろう!」
「はーい」
怒鳴るデブハゲに、適当に返事をする。
それでも足は止めずに、次の場所を目指してんだから私って偉いよね。
りーん、りーん
しゃらん、しゃらん
私が歩くたびに、長い長い神官服の下に隠されているやたらと華奢でキレイなアクセサリーみたいな鎖と、顔をすっぽり覆う緻密に編まれたレースで出来たベールの四方に取り付けられている鈴が涼やかな音を立てる。
私の両足に取り付けたのは後輩だけど、これを送り付けて来たのは横でおなかをぶるんぶるんいわせて歩くハゲデブらしい。
正直、最近身の危険を感じる……貞操的な意味で。
「卑しい目でこちらを見てなんだ?」
いやらしい目でこっちを見てるのはそっちでしょ!
そそそっと黙ってハゲデブから出来る限り離れた私は悪くないはずだ。
あっ、ベールで前が見えない私の手を握って歩いてくれる後輩、いきなり変な風に動いてすまんね。
姫さまと剣士さんの結婚式という一大イベントをハブられて出席出来なかった私が拗ねていられたのはほんの一瞬だけだった。
拗ねてる姿を従順になったと勘違いしたらしいハゲデブ以下略が、監視付きで外に出すようになってから私はてんてこ舞いだ。
表向きは青髪くんが英雄ってことになってるけど、彼より私の方が法力が強い。
だからこそ、大神殿になんらかの利益をもたらしてくれるお偉いさんたちの治療は私がベールを被ってやっているってわけだ。
「はぁ……」
「疲れたの?」
建前とかいろいろメンドクサイと思ってる私の溜息を、疲労のためだと思ってそう聞いてくれるのは後輩だけだ。
あとは自分の地位とか金とか諸々のことで頭が一杯な人たちばかりで、私は悲しい…っ!
「んーん。大丈夫だよ!」
「そう。疲れたのなら、いってね。ボクが代わりに寝とくから」
「いやいやいや!キミが寝ても私は休んだことになんないからね!?」
「うるさい!!」
昔は短かったせいでくるくるしてたとまとまりのなかった髪の毛を今は一つにまとめ、前髪を撫で付けてきっちりキレイな顔立ちを表に出した後輩は、門番とは別の真っ白い軍服っぽい制服?を着ていてすごくカッコいいのにやっぱり中身は残念な子のままだった。
いつも通りのやり取りをする私と後輩に、デブハゲは顔を真っ赤にして怒鳴って来るけど、これもまたいつも通りなのでスルーしとく。
デブハゲがプンプンしてても可愛くないからね?
「あーあぁ。ここから出たいよ」
後輩に聞こえないくらいに小さな呟きが一つ、私の口から零れ落ちた。
毎日毎日、同じことの繰り返し。
大神殿の中を監視付きで移動して、上層部が選んだお偉いさんしか癒せない日々。
心が許せる後輩がいるだけマシだけど、あとは打算と面倒事を避ける人たちばかり。
あの、魔王討伐のきつい旅の方がまだずっと楽しかったよ。
このまま、ここに閉じ込められて同じことをひたすら繰り返す毎日は、いつまで続くの?




