孤児は状態を把握する。
「センセ、あいっ」
「あぁ、ありがとう。良い子だね」
えへへっ、なでなでされました。
こんにちは、以前はお見苦しいとこみせました…誰に対して言ってるのかは、わからないけど。
前まで口が回らなくて、なかなか上手くしゃべれなかったけど、もう安心!
頭にある日本語と、この国の言葉を照らし合わせながらの作業は大変で、いつまで経っても赤ちゃん言葉が抜けない私を、先生は気にしてくれてよく構ってくれた。
いやまあ先生としては、言葉だけが心配じゃなかったんだけどね…。
どうも私、転生したみたいです。異世界に。
いや、私は中二病ってやつじゃないよ?
気付いたら、子どもがわっさーっているとこにいて、スキンヘッドで顔に大きな傷がある強面のおじさんが世話を焼いてくれててビビった。
最初はビビっり過ぎてしょっちゅう泣いてたけど、冷静になれば言葉が違うことに気付く。
更に視線の低さと、意思通りに上手く動かない手足を動かして…それで私はずいぶん縮んだことに知った。
“縮んだ”というより、幼くなっててパニクってやっぱり泣いた。
そうしている内に、『そういや私、死んだっけ』となんの気なしに思い出す。
どんな死に方はだったか、家族はどうなったかもわからない。
よくラノベである、神さまの手違いで〜ってのはたぶん、なかったとは思う。ただ、死因同様忘れていて、思い出せないだけかもしれないけど。
…でもちょっと、ひどいと思う!そりゃ、なんの特技もない、むしろ引き込もりで異世界転生してもその手の知識があって、今じゃ順応してるけど、それだけの元女子高生だ。
それが、何故に次の人生が孤児院スタートなの…。
言葉を覚えてまずしたのは、情報収集だ。
それで、子どもたちがたくさんいるこの場所が、孤児院だと知った。
ついでに、強面で顔に大きな傷があるおじさんは、隣接してる小さな教会…じゃなくて神殿?の神官で、私たちを養ってくれてる先生だ。
よかった、いかにも犯罪者みたいな面構えだから、てっきり私たちは売り飛ばされるのかと思っていた。
私が上手くしゃべれない頃も、町人に人拐いに間違われたり、孤児院に恐喝しに来たチンピラたちが怯えて逃げ出すこともあったけど、先生本人は子ども好きの優しい人だ。
いくら『人を何人も殺してきたことありそう』とか、『ありとあらゆる悪事に手を染めてきた』とか、『裏町を牛耳ってる』とか噂されているけど、生まれてきて悪さらしい悪さをしたことないらしい、真面目な人なんだ。
…まあ、最後だけは真実だけど。
恐喝しに来たチンピラたちが、いきなり『舎弟にして下さい』って言いに来て、それ以降孤児院の手伝いに来てくれてるのだ。
先生は困ってるけど、みんな懐いてるから無下には出来ないみたい。
ほんとに、良い人だ。ちょっと手伝っただけで、撫でてくれるし、こうして…。
「センセ、といれー!!」
「うわあぁぁっ、待て待て待て〜!」
今だ、事情によりひとりでトイレ出来ない私を抱えて走ってくれるし。