神官は新たな特技を披露する。
先生からもらった杖が折れた。
「そりゃー、これでボコボコ殴ってたら折れるぜ」
獣人さんの台詞に、私は思わず涙目。
「いやいや、お前を護るために代わりに壊れたんだ。杖もきっと、本望だろうよ」
「そうですよ。先生もきっと、許して下さいますよ」
剣士さんと姫さまが慰めてくれた。
「ん、あげる」
夜、他に誰もいない場所で、エルフくんが拳を付き出して来た。
中途加入な彼は人間嫌いを公言してるから、こわくてちょっとビクビクしながら両手を差し出すと、そこに手の平に収まるくらい小さな人形をちょこんと置いてくれた。
「作ってくれたの?」
「うん、杖の残骸でね。これなら小さいから、持ち運びやすいかと」
羽根やいたずらっ子のように笑った表情まで、細かに作られた小さな人形は素晴らしい出来で、エルフくんの意外な特技をはじめて知った。
「…私にも、出来るかなぁ?」
○●○●
「どうかな?結構、良い出来だと思うけど!」
「……」
「……」
「……」
反応がない。
ふふっ、あまりの出来に言葉が出ないんだよね。
ドヤ顔で三人を見ていたら、剣士さんがガッと私の両肩を掴んできた。
ギャーッ、肩痛い顔近いマジ顔こわぁ!!
「なんでいってくれなかったんだっ!こんな呪いの人形に頼るなんて、お父さん悲しいっ」
「いや、呪いの人形違うし」
「そうですよ、これは異国の神ですわ。私、本で見ました」
「いえ私、他の神さまに関わる暇ありませんし」
「何いってんだ、お前ら。この間倒したモンスターだろ、コレ」
「この前のモンスターって、あれだよね。目が六個あって、触手が上と胴に無数にあって寸胴な体格の奴。これ、目が二つ、鼻一つ、口も一つ、耳が二つ。胴にあるのは手で、指を一本一本彫るのは以外に大変だったよ。あっ、上のは髪の毛だからね」
「「「……」」」
杖の残骸で先生人形作ったのに、また三人は黙ってしまった。
エルフくんを見たら、目を逸らされたけど何故?
ついでに、おまけ。
「…なんだ、これ?」
「クロスだよ。御守り」
「俺、学がないからよくわからねーけど、クロスって神殿の正面に飾ってある、デカいのだろ?これ二本しかねぇけど、もっと本数なかったか?」
「うん、そうだよ。*の細長いバージョンみたいの」
「あすた…って何だ?お前ときどき、よくわからないこというよなぁ」
「気にしないで。大昔に、罪人が磔にされたのがこの形の由来でね」
「……」
「獣人さん?」
「おっ、お前まで、俺にひどいことするのかっ?!よこく、予告殺人かよっ!こんな感じに磔にして、火にくべるのかよっ!!」
「いやいや、獣人さん違うし。そうじゃなくて。今は、犠牲とか苦難とか愛とかの象徴なんだよっ」
泣かせちゃったよ。
脳筋ケモミミ男の涙ってシュールと思った過去の私、そこに正座しなさい。可愛いじゃん、獣人さんっ!!
慰めつつ、この十字架は獣人さんの悪い気を集めてくれる御守り的なものだと適当に説明した。
潤んだ目を見てると、自分よりデカくてゴツい相手がチワワ的な何かに見えるという幻覚が見えた。
ヤバい、普通のクロス作ろうとして細かいものを見続けた弊害が今、出て来たみたいだ。
そんな風になりながらも頑張ったのに、他の部分が削れて結局十字架になっちゃったけど、まあ獣人さんは喜んでくれたからいいか。




