神官は手を繋ぎながら、のんびり眺める。
無事に精霊国から出た後の話。
「ワールドワイドに恨まれてますね」
「わーるど…なんだって?」
「あぁ、国に関わらずってことかな?」
王都を出るときに、ひどい目に遭ったもんね。
だってあれは、姫さまを連れ戻したいのと、姫さまを連れて行く剣士さんをボコりたいのとで、男たちに襲われたんだ。
もふもふさんこと獣人さんにとっては、いい迷惑だっただろう。
「確かに、“森の貴人”にまで恨まれるとはなー」
森の中、木々の間をぬって飛んでくる矢は、剣士さんを狙っている。
精霊国に立ち寄ることは調べようとすれば調べられるし、先回りして森に潜伏することは出来るけど、この森は許可のない人間が立ち入ることは出来ない。
私たちには姫さまが一緒だから、スムーズに事が運んだけど、剣士さんを狙う人間は無理だろう。
すると必然的に彼を狙っているのは、精霊国にいた“森の貴人”になる。
「何をしたんですかねー」
「んなもん、わかるだろ?」
理由がわかるらしい獣人さんは、ゲンナリしながらも森の中を歩き慣れない私の手を引いてくれる。
大きな男の人の手が恥ずかしいけど、獣人さんはオカーサンだからよしとしよう。
「例え、別の国の生まれになろうとも、私はあなたを愛します」
おぉー、姫さまが剣士さんに愛の告白した!
「ワールドワイドに愛されてますね!」
「同じ国の生まれだろ?」
獣人さん、そこは突っ込んじゃいけないよ。
転生した後とか、なんか良い方に考えよう!
そんなことを獣人さんと話しながら、告白する姫さまと矢を避け続けてる剣士さんを見ていると。
「姫さまに何いってんだー!!」
勘違いしているらしい絶叫と共に、上から降って来たのは精霊国にいたエルフちゃんそっくりの少年だった。