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転生したら孤児の少年になってたんだけどっ!  作者: くろくろ
転生1回目・大神殿→魔王討伐の旅直前
12/45

元孤児は選ばれる。

最近、何だか騒がしい雰囲気だ。


「ねぇねぇ」

「なんだ?」

「今日は何のおまつり?」


ゴッ!


「お前は!この深刻な情勢で!何て呑気なことをいっているんだっ!!」

「いたいいたい!ぐりぐりしないでー!!」


後輩に救出されて、ゲンコツからのめり込ます勢いのぐりぐりを喰らわされた私は、両手で頭を庇いながら青髪くんを睨んだ。

彼と後輩は最近メキメキと身長を伸ばし、もはやどっちが年上かわからない状態だ。


「いやいや、お姉さんの座は渡さない…っ」

「いるか、そんな座」


私の身長?

…聞いてくれるな、どうせチビですよーだ。


「先輩はちっちゃくて可愛いから、大丈夫だよ。だから、このままでいてね?」

「まぁ、何か仕出かしたときに制圧しやすいからこのままでいればいい」


「むきーっ!!」


どういう意味だ、まったく!!


「なんか、魔王の復活が確認されたみたいだよ、先輩」

「ファンタジー………」


魔王なんて、それファンタジーの定番だ。

この場合、私の役目はなんだろう…聖女?


「魔王って仲間にするの?それとも仲間になりに行くの?」

「お前は!不謹慎にも程がある!!」


いや、前世でのライトノベルでは倒すよりも仲間にしたり、同族に裏切られた主人公が魔王に下ったりしてたよ?

もしくは、恋愛ものだと玉の輿だったり…キャッ。


「何で、両手で顔を隠して照れてるんだお前…魔王なんて倒すに決まってるだろう」


「なんでさ、もしかしたら共存出来るかもしれないよ?」


「……すでに何か国か滅ぼされ、『最強』を名乗る多くの人々が嬲り殺されているのにか?」

「えっ!?」


おっとぉー、こいつは話を聞いてもらえないパターンか。


「じゃあ、そっこーでフルボッコにするヤツだね。了解した」

「…お前、本当にわかってんのか?」


青髪くん、その可哀想な子を見る目はやめれ。

非常事態ってことはわかってるし、それをやる役目を担ってるのは私だってことも理解してるよ!!


「そんじゃあ、私の出番だね!」


さーて、どんな演出で私が聖女だってみんなに知られるんだろ?

オーブ的なものを触るとピカーッて光ったり、祈りの場に入ったら神さまたちの祝福が降り降り注いだり、それとももうチートだって知られてるから、王さま直々に頭を下げるとか~?

えへへ、そんな目立つ演出しちゃったら私、一躍有名人だね!


「なんであいつ、急にニヤ付きはじめたんだ?」

「変」


ちょっと二人共、そこに正座しなさい!!


ま、まぁ、魔王が確認されたからってすぐに私が聖女だってわかるとは限らないよね。

しょんぼりしながら、今日のお勤めと勉強会を終えた私は自分の布団に潜り込む。

一人部屋じゃなくて、たくさんの人がぎゅうぎゅうに詰め込まれてるんだけど、なんだか逆に孤児院を思い出せて今までずっと寂しくなく過ごせた。

さすがに部屋が違う青髪くんや後輩のところへは勝手に行けないから、狭いけど他の人の体温に助けられている。


誰かのいびきや歯ぎしりを聞きながら、うとうととし出した私だったけど、急に身体が落ちる感覚がして慌てて飛び起きた。


「ひゃっ!?なになに?どうしたの?」

「相変わらず、うるさいガキだな」


あっ、あのときのデブ神官だ!!

汚いものでも見るような顔で私を見下ろしているデブ神官は、周囲の人に何事か命令している。

それにしても、ここって…大神殿の玄関ホールじゃないの?


「あのー、私これから寝るんで。用事なら明日にしてもらえます?」


「世界の危機に、何を呑気に寝ているつもりだ」


うわー、睨まれた。

それにしても、人を睨む目付きがあの青髪くんとそっくりだねー。

まあ、あっちの方がよっぽどイケメンだけどな!!


「まあ、いい。貴様は今から、大神殿の代表として魔王討伐の任に就くことが決まった」


「はぁ…?」


いやいや、魔王討伐メンバー入りはすでにわかってたからいいよ?

でもさ、なんでそんなことをこのデブにいわれなきゃなんないの?

派手な演出はどこー?


「何をきょろきょろしてる!まったく、学のない貧乏人が…神官の位を特別にくれやるからさっさと行け!!」


「うわぁっ!?」


玄関ホールから放り出された私の上に、真新しい神官の衣と荷物が降って来る。

いたっ、いたたっ!

先生が餞別にくれた杖まで乱暴に投げないでよっ。


「よろしいのですか?あのような、どこの馬の骨とも知れぬ者に大神殿の代表をさせて。姫さまがいらっしゃるのですからご子息でも…」

「確かに見目が良いあれを使った方がいいが、姫さまのワガママで万が一私の駒が失われても困るだろう。あれにはこの間に王侯貴族に顔見せをさせる」

「さすがです!ですが、いなくてもいいというならあの白い…」

「死神の話をするなっ!」

「は、はい!申し訳ありませんっ」


「ちょちょ、ちょっと待ってよ-!!」


デブと腰巾着の三文芝居を見ているうちに、大神殿の門は閉じられる。

重たげな錠が下ろされる音と共に固く閉ざされた門を前に、私は呆然と立ち尽くした。

あれ…、聖女発覚イベントはこれで終了?

聖女→×

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