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会場の中は思ったよりもたくさんの人で溢れていた。多くもなく少なくもなくといった風合だ。初めてにしては上出来だろう。
受付の前にいたら、声をかけられた。
「おぅ、久しぶり」
振り返るとそこにいたのは大学時代の友人だった。
「おー久しぶり。卒業以来だから……。三年振りくらいか?」
「だな。相変わらずお前、金髪なんだな」
大学入学以来、留加はずっと髪を金色に染めていた。あの頃使っていた金色のウィッグはもうどこかにやってしまった。
「いろんな雑誌に紹介されてるのは知ってたけど、こんな早く個展を開けちゃうなんてな」
留加は友人のからかうような声に笑った。彼も笑い返す。
「でも個展じゃないよ」
そう言って彼は会場の奥の方を見やった。
「まだプロじゃないんだけどね、実費だし何でもありだろってことであの子も誘ったんだ」
視線の先には友人であろう人たちに囲まれた真由がいた。
彼の視線に気付いた彼女は微笑んで手を上げた。もう一方の手にはしっかりとカメラが握られている。こんな時まで、と内心思いつつも彼女らしいなと思い直す。
メインの題材を聞いたときは驚いた。でも壁に飾られたそれを見て、何だか納得する。
“路上のルーカス”
二人が出会ったあの場所で絵を描く今の自分。
始まりはあの路上だった。




