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「真由さん美人だよねー」
私はちらりと視線だけを向けた。
「なんじゃそりゃ。今さらナンパか」
「ちっがーう! 改めて言うけどっていう感じだよ! そりゃ最初は美人さんだったから声をかけたけど……」
彼の言葉に私は呆れた視線を向けたままため息を付いた。
週に三回、ルーカスとは会うようになっていた。そして初めに会ったときのように椅子に座って私の絵を描く。
一度、「私の絵ばっかり描いてても練習にならないんじゃない?」と尋ねたことがあるけど、「まぁいろんなの描いてるから」と言われただけだった。
「で。できたの?」
私はまだブツブツと言っているルーカスに声をかけた。言い訳しながらもしっかり手を動かしているところが彼らしい。
「うん、できた。どう?」
このやり取りも毎度のことになっていた。
「うん、良くなってきてるんじゃない? 最初のころはねぇ、もう……」
「だぁーもう! それは言わないでよ!」
こうやってからかうのも毎度のこと。ルーカスの反応は一々面白いのだ。
相変わらず夜でもサングラスをかけてはいるけど、くるくると表情が変わるのがよく分かる。彼の雰囲気がそうさせるのか、性格がそうさせるのか……。
「ていうかもう中間服だねぇ」
初めて会ったときは半袖だった制服も、カッターシャツにベストの中間服になっていた。
「もう十月だからね」
ルーカスの服装はあまり変わっていなかったけど。相変わらずのダボダボな服だ。
「冬の間もここで描くの?」
「うーん、どうしようかなぁ。あんまり寒いと風邪ひいちゃうしねぇ」
ルーカスと会えなくなるのは淋しかった。
「ま、考えとくよ」
中間テストの結果が返ってきた。
少し、下がっていた。いや結構だ。私はそっと溜め息をついた。
まだ二年生なんだし、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかと思う。でもお母さんがこのことを知ったら何と言うか……。
お母さんはたぶん、世に言う「教育ママ」ではないと思う。確かに、塾に行ったら、とか、勉強しなさい、とかは言われる。でも子供を押さえつけてまで勉強、勉強と言う人ではないと思う。
だけどそれが逆に動けなくしていることに気付いているだろうか。もっと厳しくしてくれたら、あるいは自由にしてくれたら私は動けるかもしれないのに……。




