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路上のルーカス  作者: 安芸咲良


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3/8

3

「真由さん美人だよねー」

 私はちらりと視線だけを向けた。

「なんじゃそりゃ。今さらナンパか」

「ちっがーう! 改めて言うけどっていう感じだよ! そりゃ最初は美人さんだったから声をかけたけど……」

 彼の言葉に私は呆れた視線を向けたままため息を付いた。

 週に三回、ルーカスとは会うようになっていた。そして初めに会ったときのように椅子に座って私の絵を描く。

 一度、「私の絵ばっかり描いてても練習にならないんじゃない?」と尋ねたことがあるけど、「まぁいろんなの描いてるから」と言われただけだった。

「で。できたの?」

 私はまだブツブツと言っているルーカスに声をかけた。言い訳しながらもしっかり手を動かしているところが彼らしい。

「うん、できた。どう?」

 このやり取りも毎度のことになっていた。

「うん、良くなってきてるんじゃない? 最初のころはねぇ、もう……」

「だぁーもう! それは言わないでよ!」

 こうやってからかうのも毎度のこと。ルーカスの反応は一々面白いのだ。

 相変わらず夜でもサングラスをかけてはいるけど、くるくると表情が変わるのがよく分かる。彼の雰囲気がそうさせるのか、性格がそうさせるのか……。

「ていうかもう中間服だねぇ」

 初めて会ったときは半袖だった制服も、カッターシャツにベストの中間服になっていた。

「もう十月だからね」

 ルーカスの服装はあまり変わっていなかったけど。相変わらずのダボダボな服だ。

「冬の間もここで描くの?」

「うーん、どうしようかなぁ。あんまり寒いと風邪ひいちゃうしねぇ」

 ルーカスと会えなくなるのは淋しかった。

「ま、考えとくよ」


 中間テストの結果が返ってきた。

 少し、下がっていた。いや結構だ。私はそっと溜め息をついた。

 まだ二年生なんだし、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかと思う。でもお母さんがこのことを知ったら何と言うか……。

 お母さんはたぶん、世に言う「教育ママ」ではないと思う。確かに、塾に行ったら、とか、勉強しなさい、とかは言われる。でも子供を押さえつけてまで勉強、勉強と言う人ではないと思う。

 だけどそれが逆に動けなくしていることに気付いているだろうか。もっと厳しくしてくれたら、あるいは自由にしてくれたら私は動けるかもしれないのに……。

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