第九話~陸攻隊、出撃ス~
午後二時過ぎに木更津海軍航空隊の基地からは、
九六式陸攻と一式陸攻、計三十機が、
各基地からは整備兵の努力により出撃可能になった零戦数機が出撃、
伊豆諸島に停泊している敵艦隊の撃滅に向かった。
伊豆諸島上空
「いいかよく聞け!無礼な輩に帝都を攻撃したら
どうなるか思い知らせるぞ!」
木更津から出撃した陸攻隊指揮官の前原 清少佐はそう怒鳴った。
彼らは館山海軍航空隊基地からの敵艦隊発見の報を聞いて、
必殺の魚雷を叩き込むべく勇んで飛行場を飛びたったのだ。
そして打点では敵艦隊は悠々と伊豆諸島のとある島に停泊中らしい。
恐らく襲撃などを予測していないのか、
それとも油断しているだけなのか・・・
いずれにしても好都合だと前原は思った。
停泊中なら動いていないので魚雷や爆弾が当てやすくなる。
そんな事を考えていると航法士から声が聞こえた。
「もうすぐ目標地点です」
すると零戦が突然、上昇していく。
上昇していった先には帝都を襲撃したという噂の化け物がいた。
「上空より敵!」
化け物に気づいたのか周りで飛んでいた陸攻が、
機銃を化け物に向けて撃ち始める。
「敵の化け物とやらは零戦に任せろ!
雷撃隊、高度を下げる!」
そう言って前原は乗っている一式陸攻の高度を下げていき、
たちまち海面すれすれまで下がった。
それを見習うように十数機の九六式陸攻や、一式陸攻が同じように高度を下げる。
それに対し残りの陸攻は水平爆撃のため、
そのままの高度を維持していく。
やがて進んで行くと海面にポツポツと点が見えてきた。
「前方に敵艦!」
「いいか、艦首が平らな奴が敵の空母だ!
そいつを狙うぞ!」
やがて敵艦に近づくにつれて複数のシルエットがはっきりと見えてきた。
確かに砲身がなく、変な形の軍艦だったまだこちらに気づいていないらしく、
対空砲や機銃等の抵抗は全くない。
この様子だと敵の空母に容易く命中できるな・・・・
前原がそう思った刹那、
ピュュュュュュン!!!
敵艦の砲塔が"紫色"に光ったかと思うと、
今まで聞いた事のないような音が耳に響き、
そして後ろに飛んでいた雷撃のために高度を下げていた陸攻数機がいきなり爆発、
文字通り木っ端微塵になった。
「な、なにが起きた!?」
「陸攻数機、撃墜されました!」
そんなことは分かってる!ーーー
前原はそう言おうとしたが、別の敵艦がさっきと同じように"紫色"に光った。
そしてまた陸攻が爆発し、跡形もなく消え去る。
そしてまた別の敵艦がまた同じように"紫色"に光り、
またしても陸攻数機が爆発していった。
「なんだこの攻撃は!?」
彼は日華事変で南京や重慶などへの爆撃作戦にも参加したことがあるのだが、
その時の対空砲火は確かに恐ろしいが、
よほど運が悪くない限り撃墜はされなかった。
逆に脅威になったのが迎撃してきた戦闘機で
その迎撃部隊は零戦と空中戦の真っ最中なので
はっきりいって敵艦には脅威を感じていなかった。
(機銃がきたら恐ろしいと思っていたが。)
しかし今は前方にいる敵艦には形容し難い程の脅威を感じている。
そう思っていると機銃手から悲鳴の様な声が聞こえた。
「また撃墜されました!
残っているのは本機だけーーーー
その機銃手の悲鳴が前原が最後に聞いた声になった。
「な、なんだ今のは・・・」
九六式陸攻に搭乗していた爆撃隊指揮官の
山岡 拓三大尉は
眼科の光景をみて唖然としていた。
何せ陸攻隊指揮官の前原少佐が指揮していた
雷撃部隊十数機が魚雷を一本も落とさず
全滅したからだ。
「大尉!敵艦がまた光りました!」
ピュュュュュン!!
すると謎の音が耳に響いた。
「うわっ!」
思わず目を閉じてしまったが、
機銃手等からの撃墜報告はない。
「被害報告!」
「はっ、本機を含め爆撃隊全機無事です!」
彼は思わず胸を撫で下ろした。
「これから爆撃態勢に入る!」
そして敵艦隊の頭上へと機体を傾ける。
もちろん敵が黙ってそれを見逃すはずがなく
途中あの変な音が何度か耳に響いたが幸い撃墜報告はなかった。
「照準よしっ!」
照準手から報告が来た。
「よし、テッ!」
その声が機内に響くと同時に九六式陸攻に搭載されていた二五番爆弾が敵艦に向かって落ちていった。
そして他の爆撃隊も爆撃を次々に投下していく。
やがてしばらくすると大きな音が聞こえてきた。
「戦果報告!至近弾一!」
「よぅし、早く離脱するぞ!」
するとあの謎の音が響くと同時に、
隣の機体が爆発した。
「うわっ!」
「な、なんとしても生きて帰るぞ!」
山岡はそう言ってここから逃げるべく、
操縦桿を傾けた。
どうも横山上等兵であります。
今回はいかがでしたか??
陸攻の雷撃隊は謎の攻撃により全滅、
爆撃もあまり戦果が挙げられなかった中、
帝国はどうするのか・・・
それではまた次回!!
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