第三二話〜軍港攻撃作戦〜中編
"ドラクロア"東部の市街
街はすでに異帝軍と帝国陸軍が先に戦闘を始めており、
市街戦が各所で発生していていた。
そこへ神岡小隊と王国抵抗軍の一個連隊が攻撃を開始、
帝国陸軍が南部より先に突入したため、
そちらへ敵の戦力が向いたので市街地では敵の抵抗にあまり合わずにすんだ。
そして現在、神岡は連れてきた自分の部下十名とリアが指揮する王国抵抗軍の二個分隊と共に市街を進んでいた。
「進め、前進だ!」
神岡は軍刀を片手に部下に号令を掛けていた。
まわりには神岡の部下とリア率いる王国抵抗軍の兵士が突撃の喚声を上げ、走っていた。
すると十数メートル前方にある家屋から数発の銃声と発光が見え、何人かが倒れる。
すぐさま神岡は部下と共に地面に伏せた。
「敵がいるわ!」
リアがそう言った。
神岡の脇では伏せずに倉本が立ちながら
反動をものともせずに軽機関銃を発砲している。
「倉本、そのまま撃ち続けていろ!」
神岡はそう怒鳴ると身を少ししゃがませたまま前方の家屋へと接近する。
銃弾が地面を抉ったがそのまま進み、
数メートルの距離まで進んだ時に伏せた。
そして腰から手榴弾を取り出しピンを抜く。
「おりゃっ!」
そのまま手榴弾を家屋の窓へ放り入れ、すぐさま窓から離れる。
離れた直後、手榴弾が爆発し内部を吹き飛ばした。
銃声が止んだことから中にいた敵は無事ではないだろう。
そして敵の抵抗が無くなったので倉本とリアが駆け寄って来た。
「すごいじゃない!さすがはあの"ゴーレム"を倒しただけあるわね」
リアが賞賛の言葉を送ってくる。
ちなみに神岡は"巨人"、抵抗軍では"ゴーレム"と呼ばれている人型兵器を単身で撃破したことから結構有名になっていた。
しかし当の神岡はそれを無視してリアに尋ねた。
「リア、この街の司令部はどこにあるか分かるか?」
「う〜ん、多分だけど街の中央部に元海軍の司令部があった建物があるわ」
「そこはどう行けばいい?」
「それは右の道から行けば・・・」
その時突然、リアが言った右側の道から突如銃弾が飛んできた。
すぐさまそこにいた全員が伏せる。
「この野郎!」
倉本がそう毒ついて軽機関銃を構えて撃とうとした。
神岡も撃ち返そうとしたとき、あることに気づいた。
「撃ち方やめっ、やめっ!こちらは味方だぞ!」
その声に徐々に銃撃が止んでいった。
そして機を見はからい神岡は立ち上がる。
「こちらは帝国陸軍第六一独立歩兵団第一○一連隊だ。
貴官らの所属等を答えろ!」
そう神岡が言うと声が届いたのか、
向かいからひょっこり一人誰かが出てき近づいてくる。
その人はカーキー色の帝国陸軍の軍服を着ていた。
「自分は帝国陸軍第五二師団歩兵六九連隊の田中少尉です。
そちらの所属は?」
「自分は帝国陸軍第六一独立歩兵団第一○一連隊の神岡中尉だ。
こっちは抵抗軍、まぁ味方の便衣兵だと思ってくれればいい」
それを聞いて連隊の田中といったものは申し訳なさそうに言った。
「申し訳ありません、そちらの方々を誤って敵かと思い、
味方が敵に捕まったのかと思ってしまいました」
どうやら抵抗軍の兵士を敵の異帝軍と間違えてしまったらしい。
「済んだことは仕方が無い。
それより戦況はどうなっている?」
「はっ、現在我が連隊は敵の抵抗あれど損害軽微、敵を撃破しつつ街の占領に動いております」
神岡は話を聞いたかぎりでは戦況は我が方が優勢らしい、と判断した。
「よし、ならばこのまま街の中央部にある司令部に向かうから手伝ってくれ」
ごきげんよう、横山上等兵です。
今回はいかがでしたか?
味方への誤射の件については第一次世界大戦時に青島の戦いでの英国軍と日本軍との間で
日本軍が英国軍を独逸軍と間違えて誤射してしまったという話を元にしました。
それではまた次回!
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