第二八話〜果テナキ曠野 踏ミ分ケテ〜後編
前回の第二七話を前編、
今回の第二八話を後編としました。
「今のでか?」
神岡はとても信じられなかった。
なんせリアがした行動というのは
水晶玉に向かって独り言を言っていただけなのだが
それで連絡が取れたというのは普通なら笑わって受け流すべき話だ。
しかし彼は思い返す。
ここは"魔法"があったり、耳長の人種がいたり、謎の"巨人"が西洋の槍を持って襲ってきたりした世界だという事を。
ならば水晶玉で会話できるという話もおかしくはない。
「まぁいいか」
ここに来てから常識が通用しないことが
当たり前になっていたので神岡は待つことにした。
それから数十分ほどが経過した時、
何と無く草原を眺めていた神岡だがその視界に動く物体が入り込んできた。
「ん?」
最初は野生の動物かと思ったが此方へと近づいてきており、
さらに近づくに連れてその動物に人が乗っているのが見える。
「おい、リア」
森案内で疲れが溜まっていたのか、横になって寝ていたリアの肩を揺らして起こす。
「ん・・・なぁに?」
「あれはお前の仲間か?」
そういいながら神岡は指を差した。
リアは起き上がって目をこすりながらその方向へ顔を向けた。
「・・・やっと来たわね」
まだ眠たそうにリアが言った。
それを聞いた神岡は直ちに号令をかける。
「全員集合!」
そして神岡は号令を聞いて兵士が集まっている内に
あの動物が来る方向を見るとすぐ近くまで来ていた。
そして驚く。
「なっ・・・」
それを見た神岡はここへ来てから色々な物を見てきたにも関わらず、
驚きを隠そうとしなかった。
その動物を操っているのはカーキ色の軍服を着た耳長の"えるふ"であったが
その"えるふ"が近づいてきていた時に乗っていたのは馬などではなく
例えるならトカゲのような生物だったからである。
やがてそのトカゲは停止して、乗っていた"えるふ"が降りてきて近づいてきた。
「王国抵抗軍のアーシュ"ケントオン"(中尉)だ。
この部隊の指揮官は誰か?」
少し早口だったが何とか聞き取れた。
戸惑いながらも神岡は前へ進み出る。
「だ、大日本帝国陸軍の歩兵第一◯一連隊に所属する神岡中尉です」
そのまま頭に手を当てて敬礼をする。
「お目にかかれて光栄です、カミオカさん。
ようこそテコバレイア王国へ、
私は王国抵抗軍本部より参りました」
「そうですか、短い間になるかもしれませんがよろしく頼みます」
そう言うと神岡は手を差し出して、アーシュと握手をする。
「では早速ですがこの島の事や敵の帝国について
お聞かせ願いたい」
「分かりました。
それでは我々の本部へご案内します」
「了解しました。全員出発の準備だ!」
そのまま神岡は準備の為にその場を離れて行き、
兵士も神岡について行く。
「・・・おいリア」
アーシュは周りに誰もいなくなったのを見計らい、
リアを呼んだ。
「・・・何よ?」
「率直に聞くが彼らは信用できるか?」
アーシュは不安げに言った。
実はここから王国抵抗軍という反帝国の抵抗組織の本部はあまり距離はなく、
彼が乗ってきた"ラプト"という乗用トカゲでも使えば
数分とかからない程だ。
ではなぜ彼は数十分もかかったのかというと
本部で"ダイニホンテイコク"が果たして信用できるかどうかで揉め事があったためである。
"ダイニホン帝国"という国名を聞いたことはなく、
確かにハズペリオ帝国と敵対しているらしいのだが、
だからといって敵の敵は味方という事にならない。
仮に彼らがハズペリオ帝国を打ち破ってくれたとしても
この島のを支配する目的があったら、
それはハズペリオ帝国を追い出しても支配者が変わっただけで何も変わりはない。
しかし女王陛下の世話役でいろんな意味で有名だったリアがカミオカという"ダイニホン帝国"の将校と共にいたため、
とりあえず一度会うことになったのだ。
アーシュとしては味方が増えるのは何より嬉しいことだったがそこが不安だったので
自らこの役を買ってでたのだ。
「それなら大丈夫よ」
「・・・えっ?」
リアの即答ぶりに思わず驚く。
「だって一緒に行動していたんだけど
少なくともあの帝国の連中と比べたら凄いマシよ」
「そんなにか?」
「えぇ、それにね、あんまり役に立たない"燃える水"を欲しがっていたぐらいだから
そんなに欲深い連中とも思えないわ」
「なるほどな・・・」
リアの言うことを聞いた限りでは信用出来るらしい。
思わずホッとする。
「まぁともかく引き続き頼むぞリア」
「了解しました。"お父さん"」
どうも横山上等兵です。
今回は如何でしたが?
さて王国抵抗軍との接触に成功した神岡一行。
次回はどうなるか・・・
それではまた次回!
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