第二五話〜歩兵ノ威力ハココナルゾ〜後編
(な、何だあれは!?)
神岡は森の奥から出てきた"巨人"を見て自分の目を疑った。
"巨人"は鎧と西洋の槍で武装していて、
その槍の大きさは銃より桁違いなほど巨大なので
人で持てるのかと思うほどだ。
その"巨人"は木々をなぎ倒しながら、こちらへ近づいており、
背後からは勢いを取り戻したかのように敵が再び前進してきた。
「う、撃てッ!」
驚きのあまり呆然としていたが、ようやく我に返り部下に応戦を命じ、
兵士達は三八式歩兵銃等を構えて発砲したが敵の鎧に跳ね返されて効果はない。
するとまたしても信じられないことが起きた。
"巨人"がこちらに向けて槍を構えたかと思えば
その槍が"紫色"に光ったのである。
「伏せろッ!」
反射的にそう叫んだ刹那、戦車の榴弾が着弾したかのような轟音と大爆発が起きた。
「くっ・・・」
神岡は上からパラパラと落ちてくる土を払う。
すると先ほどの爆発を何とか免れた倉本が軽機関銃を持ちながら駆け寄ってきた。
「か、神岡大丈夫か!?」
「倉本か、皆は?」
「・・・何人かがやられた」
「くそっ!」
怒りのあまり思わず拳を作り地面を叩く。
しかしこうしている間も敵は接近しており
味方が何とか食い止めてはいるものの、
このままでは押し切られてしまう。
「ど、どうする?」
倉本が軽機関銃を撃ちながら問いただしてきた。
しかしそれに対する返答は無い。
神岡は必死に状況の分析と把握を行っていたからである。
(どうする?どうすればあれを倒せる?)
"後退して増援を待つ"というのは論外だ。
増援を寄越してくれるかどうか分からないしそもそも後退しようものなら上に何されるか分からない。
ならば地雷を持って肉弾戦という選択肢もあるが
"巨人"にたどり着ける前に背後にいる敵兵に
撃たれる可能性があり
ましてやーーーー
「ん?」
彼は敵を見て考えている内にあの"巨人"を不審に思った。
先ほどから"巨人"は槍からでる光で攻撃しているが
それ以外で何かを使い攻撃はしていない。
あの"巨人"は槍以外に武器を持っていない?
ならば後ろの敵兵を一時的に無力化すればーーー
そう思い立った直後、彼はすぐさま荷物を確認したが、
肝心の地雷は無かった。
「倉本、地雷はあるか?」
「あることはあるが・・・まさか!」
倉本は思わず驚いたが意に介さずそのまま地雷をひったくり
近くにいた兵士を集めた。
「いいか、あの"巨人"がもう一回槍の光を撃ってきたら
俺は飛び出してこいつを仕掛けるから、
みんなは援護しろ」
「死ぬ気か!?」
そう言いながら軽機関銃を放して掴んできたが
神岡はその掴んできた腕を払った。
「倉本、俺はこんな所で死ぬような人間に見えるか?」
「・・・」
「いいか、俺たちを更迭した上の馬鹿者共に
目にもの見せるまでは死なん。
だから安心しろ」
するとあの"巨人"から再び攻撃が来て轟音が響き、
土が舞い上がる。
「いいか、援護は任せた!」
まるで爆破が合図だったかのように神岡は
あの"巨人"へと地雷を担いで駆け出していった。
敵の兵士はもう勝利した気分になっているのか、
走ってくるのを見て笑いながら銃を撃つ。
数発の弾丸が飛んできて頬を掠め、地面を抉った。
しかし命中はなく、敵はそれを見て再び銃を構えようとした。
そこへ倉本と味方が軽機関銃と三八式歩兵銃を撃ち込み、
命中精度の良い三八式歩兵銃と軽機関銃の弾幕は
敵をなぎ払い動きと止めさせた。
「良くやった!」
神岡は褒めながらも足を緩めずに"巨人"へ向かう。
"巨人"は気づいたのか槍をこちらに向けるべく
その巨体を動かそうと足を上げた。
ーーー今だ!
神岡は咄嗟に地雷を投げ込み素早く離れて伏せた。
バゴォン!
"巨人"が地雷を踏んだのか、爆発が起こり煙が舞い上がった。
そして煙が晴れるとともに見えたものは、
うつ伏せになって動かなくなった"巨人"であった。
どうも横山上等兵です。
今回は如何でしたか?
さて"巨人"を何とか撃破した神岡小隊は
どうなるか・・・
それではまた次回!
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