第二三話〜帝国陸軍ノ建設作業〜
東京で南方作戦の中止が決まって部隊の移動が始まり、
ホワイトハウスで対独参戦へ向けての新たな策謀が話し始められてから数日が経過して
すでに年末間近の十二月二九日になったが、
異世界の戦況の変化は特に何もなかった。
というのも敵である帝国軍はあの日本陸海軍による上陸作戦での抵抗以来、
全く姿を見せないからだ。
もちろん一個連隊しかいないのに
こちらから攻撃するということも出来ないので
する事といえば海岸周辺の木を切り倒して
基地や飛行場を建設ぐらいしかなかった。
そこで場所の選定を始めようとしたところ、
神岡達が合流した現地人のリドリーが暮らしている村が
実はテコバレイア王国がハズペリオ帝国に敗北する寸前に
万が一反撃する時のために作られた村だったらしく
おかげで場所の選定の手間が省けた。
しかし反撃する為の村といってもまだ規模が百人程度の規模だったので
そこを拡張して飛行場や兵舎等を作ることになった。
十二月二九日 異世界 王国残党の村"デルエコンタ"
その村がある場所は森の中だが木の密度が低く、
空から偵察されればすぐに暴露しそうな所だったが
敵である帝国軍が一切動きを見せなかったので
特に不安もなく建築作業が始まっていた。
作業をしている兵士は全員が上の服を脱いでいて
略帽をかぶっていなければどこかの工事現場にしか見えない。
「倒れるぞぉ」
兵士の一人がそう言うと木がめきめきと音を立てながら倒れた。
「よし、小休止に入る。午後も働けるように全員しっかり休んどけ」
木が倒れたのを見届けた神岡は指示をだして兵士を休ませる。
ちょうどその時にリアと村人の女性数人が
籠に何かをたくさんいれて持ってきた。
「みんなご苦労様。茹でたフィルキト持ってきたわよ」
そしてリアと村の女性は兵士達にジャガイモそっくりの食べ物を次々に配っていく。
「はいこれ、あんたの分ね」
「おっ、ありがとう」
神岡はリアからフィルキトなるものを受け取るを頬張った。
「・・・うまいな、これ」
それを見たリアは嬉しそうに笑った。
「それにしても、敵は動かないな」
神岡はもうそろそろ来ると思っているのだが
森の中にいる協力者からは何の音沙汰もない。
「う〜ん、一応何かあれば連絡するように
言ってはあるんだけど・・・」
「確か協力者はあそこにいる女みたいな"えるふ"とかいう奴らだろ」
そう言って神岡はリアと共にきた女性に指をさした。
その女性はリアと同じように食べ物を配っており、
金髪でしかもすごい美人なので普通は
兵士の一人や二人が口説いていてもおかしくはないのだが
誰も食べ物を受け取り礼をいうだけで声はかけなかった。
何故なら耳がすごい長いのである。
これに神岡も思わず妖怪かと驚いてしまい、
未だに彼ら"えるふ"とはなかなか馴染めなかった。
「失礼なのは分かっているけどな。
"えるふ"に任せていて本当に大丈夫なのか?」
「エルフはねぇ、何百年も森の中で生きているから
森での移動とかは私たち人間より遥かに手慣れているわよ」
「ふ〜ん・・・おいちょっと待て」
神岡の食べ物を口に運ぶ動きが止まる。
どうやら何かに気づいたらしい。
「今、何百年も生きてるって言わなかったか?」
「えぇ、それがどうかしたの」
「あいつは今いくつだ?」
神岡は(まさかな)と思いつつ質問したのだが
とんでもない答えが返ってきた。
「確か116歳だったと思うわよ」
「ぶっ!?」
神岡はその答えを聞いて思わず食べていたものを吹き出してしまった。
「な、そ、それは冗談か?」
「いや、本当のことだけど」
一瞬の沈黙が訪れる。
「俺より年上・・・」
何かとんでもない事を聞いてしまった気がする。
そう思わずにはいられない。
「神岡っ!ここにいたのか!」
突然背後から大声が響いてきた。
神岡が振り返ると倉本が息を切らしながら
こちらへ駆け寄ってくる。
「どうした?」
神岡がそういうと慌てながらも倉本がこう告げてきた。
「い、いま協力者が来てな。敵が迫ってきたそうだ」
どうも、何とか予定通りに更新できた横山上等兵です。
今回はいかがでしたでしょうか?
さてさて次回は敵である帝国軍との戦闘になります。
それではまた次回!!
ご意見、ご感想、アトバイスをお待ちしています。




