第二十一話〜米国ノ動キ〜前編
アメリカ合衆国 ワシントンD.C
ホワイトハウス
「(日本を襲撃した敵は何者か!?)・・・」
日本の陸海軍臨時司令部にて
南方作戦の中止等が決まっていた頃、
アメリカ合衆国第43代大統領フランクリン=ルーズベルトは
ワシントンポスト紙を読むとそう呟いた。
十二月一日、ルーズベルトはホワイトハウスの
執務室で仕事をしていたのだが、
そこに突然、国務長官のコーデル・ハルが
来てこう告げてきた。
「大統領閣下、駐日大使館から
重大な通信が入りました」
最初ルーズベルトはこれを聞いていよいよ日本が
開戦を決意して何らかの動きを
見せたのかとと思った。
「ふむ、その内容は?」
「それが・・・あまりにも滑稽な内容でして」
「構わん。言いたまえ」
「はっ、・・・トウキョウが怪物の
攻撃を受けているとの事です」
「・・・何?」
これを聞いてまず思ったことは
(駐日大使館の連中は正気か?)と考えた。
まだ「英国がナチスに降伏した」、
「日本が宣戦布告してきた」
といった知らせならまだしも
トウキョウが怪物の攻撃を受けているとは
もはや大使館の人員がおかしくなったか、
アル中にでもなったかとしか思えない。
取り敢えず大使館で何らかの手違いが
起きたのかもしれないので第二報を待ったのだが
いくら待っても連絡が来ず、
こちらから連絡を試みたが
何も返ってこなかったので
報告に来たハルに対し、
「今、日本で何が起きているのか
情報を整理してほ再び報告にきたまえ」
と言って報告を待つことにした。
それから数時間はホワイトハウスは勿論、
太平洋艦隊司令部、アメリカ極東陸軍まで
大騒ぎになったが、
そのような大騒ぎにまでして
集められた情報は皆無に等しく、
約二十四時間後にハルが報告できたのは
"何もわからない"という事だけであった。
結局、十二月三日に他の国と同様に
"日本で起きた不幸な事件については
我が国は関与していない"といった発表しかできず、
その後、日本が襲撃して来た正体不明の
敵を撃破したという発表があってから、
どうやら警戒を強めたらしく
スパイが活動できなくなったので
未だに何も把握ができなかった。
これに業を煮やしたルーズベルトは
ホワイトハウスに閣僚等を招集して
事態の把握をすることにし、
本日その会議が開かれることになっていた。
(しかし・・・私の任期中に
こんな事が起こるとはな)
ルーズベルトはこの時すでに対日開戦の
決意を固めており、
というのも現在欧州方面にてヒトラー率いる
ナチスドイツが各地で戦争を起こしており
イギリスは何とか滅亡を免れたものの
予断は許さぬ状況で東欧は東欧でソ連が
ナチスドイツの侵略を受けており
何とか持ちこたえている。
そこでイギリスに多額の支援をしている
アメリカからして見れば、
もし仮にイギリスがナチスによって
打倒されようものなら、
その支援は無駄になり経済に打撃を受け、
しかもドイツがアメリカに匹敵する大国になり
将来、災いになりかねず、
しかもアメリカは世界の覇者に
なれないままになってしまう。
なので何としてもイギリスを助けて
アメリカが世界に覇を唱えるには
ドイツは滅ぼさねばならないのだが
国内の世論に厭戦気分が蔓延しているために、
こちらから戦争を仕掛けることはできない。
だからこそ何度かドイツを挑発して
あちらから戦争をするよう仕向けたが
挑発には乗ってこなかった。
そこでルーズベルトはドイツと同盟を結んでいる
日本を戦争に追い込んでドイツとの戦争に
持ち込むという事を考え、
日本に対して日米通商就航条約を破棄、
さらに対日禁輸等、ジワジワと追い詰めて
ついにハルノートを日本に突きつけた。
そして上手く日本が挑発に乗ってくる、
かに思われたがーーーー
と、考えていると
執務室のドアがノックされた。
「入ってきたまえ」
ルーズベルトがそういうとドアが開き、
入ってきたのはコーデル・ハル国務長官だった。
「やぁ、ハル。Mr.ノムラから何か聞けたかね?」
さっそくルーズベルトは入ってきたハルに
結果を聞いた。
結果というのはあの事件の真相について
何か知っているかもしれないということで
日本の駐米大使である野村吉三郎と面会して
何か聞き出せたのかということである。
「残念ながら大統領、ノムラにいくら問い詰めても
知らぬ存ぜぬの一点張りでした」
「そうか・・・
しかしあれからもう数週間近く立っているのに
まだ陸海軍や情報部から
何も報告が来ていないのだが、
ちゃんと彼らは働いているのか?」
「恐れながら大統領、
念のために英国大使やソ連大使にも
問い合わせましたが
どうやら他の国も日本で
何が起きているのか知らないらしく、
我が国とほぼ同じ状態だそうです」
「ふむ・・・」
ルーズベルトは目を瞑り思案しようとする。
すると再びドアがノックされた。
入ってきたのはホワイトハウスのスタッフで
部屋に入ってくるなりこう告げてきた。
「大統領閣下、英国情報部の(ミスターC)と
名乗るものがイーデン英国外相の紹介状を持って
こちらに来たのですがいかがしますか?」
どうも横山上等兵であります。
今回は執筆するのが難しく
大変だったのですがいかがでしたか?
さてさてミスターCとは何者なのか?
アメリカはどう動くのか?
それではまた次回!
ご意見、ご感想、アトバイスをお待ちしております。




