第二話~帝都、攻撃ヲ受ク~
一九四一年一二月一日
東京 皇居
この日、政府と陸海軍の首脳らが
皇居に集まっている。
なぜ集まったかというと御前会議が
今日開かれるのだ。
その御前会議の議題、それはーーー
対米英蘭開戦についてである。
原嘉道枢密院議長を初めとする。
東条英樹首相兼陸軍大臣
東郷茂徳外務大臣などの閣僚、
海軍の永野修身軍令部総長と
伊藤整一軍令部次長、
陸軍からは杉山元参謀総長、
武藤章陸軍省軍務局長ら、
そうそうたる顔ぶれが集っていた。
「総理、開催宣言を」
原に開催宣言を足されて
東条はゆっくりと立つ。
東条は明らかにいつもと様子が違っており
顔面は蒼白で血の気がなく、
まるで死んだ人の様だった。
それも無理はなく、元々東条は、
開戦派だったが首相になって天皇陛下の
御心が米国の和平だと知ってから、
これまでの考えてを放棄して
和平に尽力してきたのだ。
それなのに天皇陛下の期待に
答えることができず、
忠誠心の厚い彼にとって地獄だったろう。
そして彼は聞き取れるかどうかの
声で開催宣言をした。
天皇陛下が厳しい表情で見守る中、
会議は米国の石油禁輸政策を初めとする
数々の対日政策についてから始まり、
米国の外務省から渡された
無礼極まりないハルノートの説明まで、
米国がいかに日本を苦しめたかを
参加していた一人一人が話す。
その会議の経過を見ていて
東条はひたすら、
(陛下、申し訳ございませぬ)
ただそれだけを思っていた。
「我が帝国海軍は戦艦一○隻、空母一○隻、
以下艦艇を合わせると米国の七割を
達成している。
今をおいて開戦すべきじ・・(ヴヴヴヴ!)
永野軍令部総長が海軍の戦力について
話していた時だった。
突如として空襲警報が鳴り響く。
会議に参加していた者全員が
顔をあげたりした。
「今日は防空訓練はありましたかな?」
誰かが呟いたその時、
ドゴォォンーーー
爆発音が響く。
全員が驚いた表情になった。
この音とサイレン、これから導き出される
答えはそうーーー
敵襲である。
「失礼します!」
すると部屋に誰かが入ってきた。
入ってきた男は近衛師団の者だ。
普通なら御前会議の時に
こんな事をする事は許されないが
誰も咎めたりしなかった。
「なんだ!?今の音は!」
短気で知られる杉山参謀総長が
声を荒げて怒鳴る。
「く、空襲であります!」
「なに?」「そんな馬鹿な・・・」
部屋が騒がしくなる。
「空襲だと!どこの国が仕掛けて来た!
ソビエトか?米国か?英国か?」
杉山は思いついた国名をあげた。
しかし返ってきた答えは、
「それが・・・」
男は躊躇った後、意を決した様にいった。
「・・・よくわからないのであります」
部屋が静まり返る。
「な・・・馬鹿もん!
わからんで済むと思ってるのか!」
「いや、あの、それが、襲来してきた敵は・・・」
近衛師団の男は一瞬間を開けて答えた。
「巨大な鳥なのであります・・・」
「おいお前ら、こっちに下敷きに
なっている人がいる!」
憲兵の板野 元吉伍長は
家の下敷きになっている老婆を見つけ、
救出しようと誰かに助けを求めた。
すると大工らしき男と、
その弟子らしき青年がきてくれた。
板野は青年と共に木材に手をかける。
「いいか、せ~のせっ!」
掛け声と一緒に力の限り持ち上げ、
木材が持ち上がった所で、
大工らしき男が老婆を引きずり出した。
「あ、ありがとうござぇます」
老婆は手を合わせてながら
深々と頭を下げる。
しかしまた別の場所で爆発がおきた。
「おい、老婆を頼む!」
大工らしき男に頼むと
男は「ガッテン承知!」といい、
老婆をおんぶして青年と走り出した。
しかし走った先に
巨大な鳥らしき化け物が降りった。
その鳥には全身に鱗があって、
口には牙が生えており、
その鳥の上には鎧を着た男が
槍を持って乗っていた。
「わ、わわわわ!」
大工の男は尻餅をつく。
「この野郎!相手はこっちだ!」
板野はとっさに腰の南部式拳銃を抜き、
鳥らしき化け物に向かって撃つ。
拳銃の弾は虚しく弾かれたが
化け物はこちらを目標に定めたらしく
大工の男を乗り越えて走ってくる。
「死ねぇぇぇ!」
彼はがむしゃらに撃ったが
外れる弾が多く、命中しても弾かれた。
そして化け物の尻尾がムチのように
しなり、板野を吹き飛ばす。
「グハッ!」
板野は民間の塀にぶつかり呻いた
そして化け物は歩いてこちらに
向かってくる。
彼は大工の男と青年と老婆を探したが、
どうやら逃げれたらしく辺りにいなかった。
「よかった・・・」
そして板野は軍刀を抜いた。
「せめて刺し違えてやる・・・」
この化け物はなんの罪も無い人達を
襲おうとしたのだ。
生かしておくとまたあの男達と老婆を
襲うかもしれない。
そう思った板野は軍刀を構え、
化け物に向かって走り出した・・・
どうも横山上等兵です。
今回はいかがでしょうか??
短い上に半分が憲兵の話に
なってしまいましたが・・・
そこは暖かい目で
見守ってくれたらな・・・と思います
それではまた次回!!
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