白炎VS黒水
バトルシーン纏めてたらスゴい時間かかった……短い……
白い炎と黒い水。以前南国今地獄のこの地で、二つの相反する龍祖は再び対峙した。以前のようなじゃれあいではなく、殺し合うために
『焼き滅ぼせ、龍棘炎剣・業炎龍皇!!』
龍斗の両腕に炎が揺らめき、次の瞬間凝固し白い炎の剣となった。ケイオスは怪訝そうに首をかしげる
『その技は……何故貴様がそれを使える? 『無』を司る貴様がなぜ『有』の力を使えるのだ?』
『貴様に話す道理はない。どれにしろお前は僕が無に返す!!』
羽を広げ空気を掴んで後ろに投げるように羽ばたき、ケイオスに急接近する龍斗。ケイオスは慌てず自分の両腕にドス黒い水を発生させ、それを凝固させ水の剣を精製。炎の剣にぶつけ、受け止めた。
ガゴォォォオオオォォオオォオ!!!
『どうした、龍界にいたときより随分と手ぬるくなったな』
『バカが、お前を倒すならこの程度で十分だ!!』
炎が凝固した白い剣二振りと水が凝固した黒い剣二振りが激しい火花を散らしながらぶつかり合う。一撃一撃のあまりの威力に剣が耐えられず、剣同士がぶつかり合うたびに砕かれ、破片を散らす。
飛び散った剣の破片はその保有するエネルギーの強さから、地面に落ちるたび爆発を起こした。龍祖二人以外は慌てて二人の決闘範囲から逃れる
ガギィィィン!!
ゴガァァァン!
ガゴォォォン!!
炎の剣の横薙ぎを下から弾き上げるようにして水の剣が振るわれぶつかり合い、互いに剣が折れる。残りの炎の剣で追撃をいなし、その場で飛び上がって右足蹴りを叩き込む龍斗。
だが蹴りはケイオスの無数の触手に阻まれる。その粘液の高い液体の強烈な酸が龍斗の足の甲殻を焦がす。足を受け止めながらケイオスは余裕を滲ませた声色で龍斗を挑発する
『打撃は私には効かんぞ……どうする? 私の手足は尽きる事はないぞ?』
『ならば効くようにするだけだ!! ハァァァァァァ!!』
再度翼で羽ばたき、足が焦げるのも構わず触手に押し付け続ける龍斗。と、次の瞬間防御している触手が一瞬にして蒸発、すかさずケイオスの胸部に凄まじい熱量を持った両足蹴りが叩き込まれた。
『ぬぐ……おぉぉおおっぉおぉぉおおぉお?!』
砂を巻き上げながら立ったままの姿勢で後ろに大きく吹き飛ばされるケイオス。灼熱の一撃を加えられたケイオスの胸部には龍斗の足型がはっきりと焼きついている。ケイオスは体勢を立て直そうと触手を地面に突き刺す。吹き飛ばされたときのスピードが若干落ちたというところでケイオスの背後からさっきまで正面にいた声がした
『後ろがガラ空きだぞ?』
『なっ……』
一瞬にしてケイオスの背後に移動した龍斗は右腕に力を込める。肘の部分のブースターのような形をした甲殻が赤熱しエネルギーを蓄積、そして莫大な推量として放たれる。ケイオスが口を開く前に龍斗の一撃がケイオスの背にクリーンヒットした
『龍皇怒撃ァァァァァ!!!』
引き絞られた右拳が肘のブースターからの爆発的な推力を受けて空へ打ち上げるように振るわれる。大きくのけぞるようにして空中へ打ち上げられるケイオスに、凄まじいエネルギーの塊が叩きつけられた。
『ッッッがぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!』
そのまま龍斗は残った炎剣に力を込め飛びあがり、空中のケイオスに追撃をかける。ケイオスも体勢を立て直し黒い水の塊を放ち迎撃しようとするが、振るわれた炎剣の熱で直撃する前に蒸発、無効化されてしまう。するとケイオスは今度は無数の触手を振るい、龍斗の胴に巻きつけスピードを強制的に落とし、一本の触手で炎剣を折る。
『チィ! 離れろッッ!!』
龍斗が拳に力を込め、身体の真ん中で打ち合わせる。打ち合わせた拳から散った火花が瞬く間に凄まじい爆発に変わり、自身の身体に巻きついたケイオスの触手を焼き払う。煙を切り裂きながら再び距離をつめる。だが再び無数の触手の波状攻撃で近づく事ができなくなってしまった。
『チィ!! だがまだだ! そんなものでは私の息の根は止められぬぞ!』
粘液のこびりついた翼を羽ばたかせ、体勢を整えるケイオス。
『……そうだな。正直僕一人なら確実にお前に殺されていただろう。今だって、楓姉さんの力を借りてやっとお前と対等だ』
このままではラチがあかない。龍斗は眠っていた自分本来の力を試す事にした。龍斗の背中の背びれが鼓動するように発光し始める。徐々にその鼓動は早く、大きくなる。
『皆……力を、力を貸してくれ。僕はもう、僕みたいなやつが生まれるのはガマンできない。部外者である僕らのせいで、この世界の罪もない人が、僕らの世界の人々が!! 死ぬなんて許せない。だから、僕に力を!! 力を貸してくれ!!』
龍斗の背びれが一段と強く発光したとき、見守っていた龍化者達に変化があった。彼らの身体に浮き出た鱗が淡く発光し始めたのだ。それぞれの力に対応した色で、龍斗の背びれの鼓動にあわせるように
「な、なんだこれは……わちの鱗が…」
「チャクラちゃんだけじゃない、俺も……てか、皆も……」
龍化者は一斉に空中で戦う龍斗を見る。と、龍斗の背びれが自分達と同じ周期で発光しているのを見て直感的に悟った。今自分達はあの背びれを通して龍斗と繋がっているのだと
「すまない皆。力を、少しだけ借りるぞ」
背びれに黄金の雷が煌いた。バチバチと激しく爆ぜ、火花を散らしている
『それは小ざかしき電雷龍の力!! 忌まわしい、龍皇だけが許される、他者を支配し使役する力!! 貴様を殺しその力も我がものとしてくれるわ!!』
『お前にはムリだケイオス。この力は危険すぎる、僕にしか使えない。この力は一番低出力でも己の限界を超える、己の限界を無に出来る、無を司る僕だからこそ使えるんだ。それにお前には器が足りない。たった一つの世界の膿ですら内包し切れないお前では』
『ならば貴様ごと取り込み私のものとするだけだ!!』
背びれで輝く黄金の雷が一段と強く爆ぜたとき、龍斗は呟いた。かつての友への謝罪と、別れの言葉を
『天叫悲雷 龍皇天雷』
降り注ぐ神々しいまでに美しい裁きの雷は混沌へと降り注ぎ、濁流すら飲み込んだ。彼の全ての罪を道連れにして。
光が収まって行くと同時に、龍斗の背中の雷は引いていった。そして徐々に甲殻も空中に解けるように雲散し、人間の皮膚へと戻っていく。龍斗は砂浜に降り立ち、目を瞑る。こらえ切れなかった涙が龍斗の足元を濡らした