昨日の敵は今日の友
最近するゲームがありません。暇です。一日中パソと向き合っているわけにもいきませんしね…ペンタブ買ったら挿絵でも投稿しようかと思ったりする今日この頃
江流弩荘に新しい住民が増えてから数ヶ月が経った。前まであほのように僕の命を狙ってきたヒイロは少しおとなしくなった。どこかのツンツン頭の少年のごとく説教したわけではないが、普段怒らない奴はいったん怒らせると取り返しがつかないということを、ヒイロは身をもって住民たちに教えたのだった。
「ヒイロ、今夜の晩御飯は貴様が作るんじゃなかったのか?」
「そういえばそうでしたね…何を作りましょうか?」
「魚が安いんで焼き魚、とかいいんじゃないか?」
「そうですね、煮魚にしましょう」
「いえ~い完全シカト総スルーですかチクショウ」
「さて行きますか龍斗サン」
「へいへい」
スーパー
「荘にいるときくらいニット帽取ればいいんじゃない?」
「唐突だな…無理だ。誰もいないからいえるけど、角が生えてんの僕」
「それは…見てみたい気もしますね。ですが私には角なんか生えなかったのですが…これも個体差…ということでしょうか?」
「僕は植物なんて操れないしな。どれにしろ今の俺たちではこの状況を打開するような策は無い。今は平和に暮らすしかないってことだ」
「嵐の前の静けさ…でなければいいのですが…」
「おっ、チョコボール発見!!」
「いえーい完全シカト総スルーですか」
不安をかき消すように冗談を言う僕。ヒイロと何とか和解して数ヶ月。同じ境遇のものがいるというだけでだいぶ心境は変わるものだ。打ち解けてみればヒイロはとても素直でいい娘だった。命を脅かすような病にかかったとき、人は少なからず狂うものだ。
人外になった自分と対等に向き合ってくれる存在と出会ってから彼女は変わった。悲観してても仕方ない、と割り切ってしまったのだ。僕のように。それ以来、彼女は少しずつ僕に心を開いてくれているようだ。今だからこそこんな冗談を言い合いながら一緒に買い物も出来る。
少なからず、僕は彼女に笑っていてほしいと思っていた。純真な女の子をここまで狂わせる龍化病。キナ臭さの漂う中、僕は誰かを救うために行動を開始した。
「あれ、龍斗サンまた散歩?」
「うん、家事は一通り終わったし、ずっと家の中に引きこもってると身体がなまってしまうからね。じゃあいってきます」
「いってらっしゃーい」
ヒイロとの一戦以来、龍化者探知能力というものが開花したらしい。たまに唐突に角が疼きだす。………別に右目が疼くとか言うわけじゃないし決して僕は厨二病なんかじゃないことを一応言っておく。
龍化者同士で共鳴しているような感じだ。僕やヒイロのほかにも、この町には龍化者が必ずいる。彼らと友好的に繋がりを持てれば今後のことを話し合っていけるはずだ。
「反応は無し……おっかしいな、前来た時はなんか疼いたのに」
今日は空振りだった。内心怖くて仕方なかった。時折自分が自分で無いような感覚に襲われることがあった。このままではいつ荘の住民に襲い掛かっても不思議ではない。タイムリミットは着実に迫っているようだ。何のタイムリミットかは分からないが。
適当なところに降り立ち、羽を隠すなどの隠蔽工作のあと僕は適当に歩き出した。裏路地に下りたので陰気な空気が肌にまとわりつく。とっとと帰ろうと思った瞬間、その声は聞こえてきた。
うっ…右腕が疼く…(筋肉痛的な意味で)