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世界でもっとも危険な旅行者達

初めての挿絵つき。大丈夫かな…?



次の朝




「さて諸君、今日が最終日だ。悔いの無いよう思い切り楽しむ事! 昼食後しばらくしたら帰宅するからそれまで解散!」



 朝礼もどきが終わったあと僕はソロモンへと歩み寄る。昨日の夜襲が気になるのだ。昨日の夜襲がそれこそなにかの序章でしかないような気がして



「おいソロモン」


「何だ青年? 今朝の女の子達の温もりでも思い出していたバキゴキャゲシ正直スマンかった」



 一応上司に当たるが、流石にあれはやりすぎだ。大事な話なのである程度手加減してボコす



「昨日の夜の暗殺者たち、龍殺しの急進派か?」


「ふむ、おそらくはな。だがそれだけではない」


「どういうことだ?」


「着いて来い」



 ソロモンが昨日肝試しをした林の中へと僕を導く。昨日超局地的にいくつものサイクロンが発生したので、林の一部の土壌が露出していた。その隣に転がっているもの。昨夜僕たちが沈めた暗殺者たち



「ッ?!」



 だったものだ。全員死んでいる。およそ数十人が地面にまばらに倒れ伏している。そして昨日は暗闇でわからなかったが、明るい今は見える。そのおぞましく変化した身体が


 顔が完全なトカゲのような顔、皮膚の一部に鱗、体の一部が爬虫類のように変化しており、変化している部分が異常に発達しているせいで、かなり歪な形をしていた。爬虫類の部分と人の部分との境目がまだピクピク動いている



「我々も初めて見たよ。コレはおそらく龍化者になりそこなったものだ。手口から言って、確かにこいつらは急進派の連中だったものだ。どうやら任務の成功不成功関係なく、一定時間経過で死ぬようになっていたらしい」



 トカゲ頭をサンダルの先でつつきながらソロモンは話を続ける。反射かどうかはわからないが、口からいきなり紫色のガスが噴出した。いきなりで驚いたが、僕が口から火を吐いて焼き払っておいた。


「うわっ?! ちょ、危なっ…!」


「龍を屠る機関である彼らがどうやってこの力を手に入れたのか、それはわからん。ただ、青年が寝静まった後残りの男性陣で警備をしたが、そのときにもこいつらが襲い掛かってきた。私はある仮説を立てた。聞いてくれるか?」


「………言ってみてくれ」


「おそらく龍殺し上層部の一部はもはや龍殺しとして機能していない。そしてこの龍化者発生事件には黒幕がいる。我々の理解を超えた黒幕が」



 何も言えなかった。一瞬頭が真っ白になる、深呼吸して心を落ち着け頭を整理する。すると落ち着く代わりにドス黒い感情が自分の胸のうちを塗りつぶしていく。



 自分をこんな風にした黒幕に対する憎悪。命をまるで使い捨てるかのように扱う事に対する憎悪。そして、僕の大切な人の人生を際限なく歪めた事に対する憎悪。胸の奥が焼き付くように熱くなる。拳の鱗が熱を発し始める



「青年、落ち着け。青年がそうでは妹は預けられんぞ」


「っ……あ、あぁ。そうだったな、ソロモンと大家さん、兄妹なんだっけ」


「あぁ、義兄弟だがな。守るためとはいえ、江瑠弩荘の管理を任せてしまっているが」


 申し訳なさそうに空を仰ぎ、苦笑いするソロモン。なんだかんだでコイツはよくやっていると思う。中間管理職ということで全てに板ばさみになりながらも、部下の事を第一に考えている理想の上司だ

 


「…………あれだけ強力な力と能力の精密製、ただの龍化者じゃないだろ」


「あぁ。青年が龍化者になり、龍殺しに目を付けられるまで彼女が危険人物リストのトップだった。幼い頃より能力が発現していたものの、彼女は自分の力で制御できていたのだ。だがあるとき、その押さえつけていたタガが壊れたのだ」






 ソロモンの口から語られたのは、あの太陽のような笑顔とは真逆の悲劇だった。



「もう10年近く前の話か。とある小さな村に彼女は住んでいた。平和な村だったが、突然その村が地図から消滅した。


 何があったか経緯は詳しくはわからない、だがそのとき彼女がいた場所から半径数十キロが廃墟と化した。山も、湖も、家も、何もかもが更地だ。局地的に凄まじい台風が起きたらしい。私含めた初期龍殺しメンバーが駆けつけたとき、廃墟の真ん中で一人彼女は泣いていたよ」



 悲しげに空を見上げながらソロモンは呟くように言った。



「泣きじゃくりながら彼女は謝り続けていた、『ごめんなさい、ごめんなさい』とね。私たちの前にいたのは凶悪な破壊者ではなく、悪い事をして怒られて、泣いて謝る幼い少女だった。死者は奇跡的に出なかったが、彼女の住んでいたところの村人全てが大怪我を負った。


 その凄まじいまでの力から上層部は彼女を利用しようと考えたらしい。が、私が身内として引き取る事でそれは防いだ、猛烈なバッシングは受けたがな。そして江瑠弩荘に彼女は預けられた。


 彼女は私の恩師の元で育ち、そして生きてくれた。罪から逃げず、心に凄まじい罪の意識を背負いながら」



 思い返すと、彩音はずっと笑っていたような気がする。最初に僕が味噌汁を作って泣かせてしまったとき以外、ずっと彼女は笑っていたのだ。罪の意識に潰されそうになりながら、それでも誰かのために笑っていた。誰かを傷つけた自分の罪そのものである能力を、僕なんかの為に使ってくれた



「何を勘違いしている青年よ」


「なに?」


「『僕なんか』ではない。『お前だからこそ』、彩音は力を使ったのだ。お前は彩音にとって失いたくない大切な人なんだ。どういうことか位はわかるだろう」


「ッッ!」


「青年よ、お前の中にも凄まじい破壊の力が宿っている。だが力は使いようだ。その力は破壊するだけではない、破壊者ではなく、守護者として立て。守りたいのだろう?」



 ソロモンは鋭い眼差しで僕を見据えながら言い放つ



「大切な人を」






「あぁ。もちろんだ」














「やれやれ、折角の旅行なのにさ。こうなるってやっぱり宿命なのかな」


「まぁこれだけヤバいメンツが集えば、ねぇ……ツブしたくなるのもわかるけど」




 守人先生と黄泉川が背中合わせで立っている。二人とも戦闘体制だ、黄泉川の背中には黒い靄の様な翼が揺らめき、守人先生は巨大な片刃の大剣を持ち構えている。二人を囲んでいるのは昨夜戦った蜥蜴人間リザードマンだ。砂浜を埋め尽くさんばかりの蜥蜴人間は、美しい砂浜を踏みにじりながら手に持った剣を振りかざし襲ってくる




「まぁ、かかってくるならシバかないと、ねッッ!!」



 守人先生が砂を蹴り出し正面の蜥蜴人間のどてっぱらに左足で鋭い蹴りを叩き込む。そして振りかざしたのは異形の大剣。巨大なその片刃の背の部分に沿うように長い持ち手がついており、刀身は美しい鋼の色に輝いている。


 その背の部分の持ち手を守人は左手で持ち、なぎ払うように振り回した。振り回した太刀筋の上にいる蜥蜴人間は必然的に上半身と下半身に両断される。そして両足を地面につき体制を整える。


 息つく暇もなく正面から別の蜥蜴人間が飛び掛ってきていたが、守人は動じず今度は通常の剣の持ち手を握り、振りぬく。



 だが振るわれるはずの片刃の大刃は振るわれていない。代わりに片刃の部分から細身の美しい日本刀が姿を表した。あの片刃の部分は一種の鞘だったのである。そして不意を突いたはずの蜥蜴人間は逆に不意をつかれ両断された





 龍殺しの中でも如月守人の武器は特に変わっている。見た目は背の部分に長い持ち手がついた巨大な片刃の大剣だが、その巨大な片刃の中には細身の日本刀が仕込んである。


 片刃を盾として使い日本刀で切り裂く、あるいはそのまま大剣として使い凄まじい威力の一撃を与える、といった掴み所のないトリッキーな戦闘方法で守人は闘う



挿絵(By みてみん)



 そしてこの休暇でよく守人と絡んでいる黄泉川は、以前よりさらに能力の使い方が上手くなっていた



 蜥蜴人間の足元の影が一瞬蠢いたかと思えば、それは一瞬にして巨大な腕となり蜥蜴人間を掴みあげ、動かなくなるまで地面に叩き付ける。


 近づかれれば靄のような黒い片翼を展開し攻撃を防ぎ、龍鎌で首を刎ねる。周囲から一斉に飛び掛られると黄泉川は影に潜り攻撃をかわし、鎌をプロペラのように回転させつつ影の中から飛び出して周りの蜥蜴人間を細切れにする



「悪戯兼死滅(トリック&デストロイ)! か~~ら~~の~~~?!」



 黄泉川が宙に浮いたまま膝を抱え込むような姿勢をとる。と、あたりの影が不規則に揺れ始める。黄泉川がバッと体を開き、力を解放した



虚影大乱闘シャドウズ サバト!!」



 黄泉川が叫んだ瞬間辺りの影が一気に爆ぜ、蜥蜴人間の体を切り裂き始めた。鋭い刃のような影の爆風に蜥蜴人間が耐えられるはずもない




そして闘っているのは男だけではなかった。



「折角楽しんでたのに、これじゃ楽しさも半減よ……帰ってからの疲労感が増すわね」


「本当に無粋ですこと。手早く終わらせてしまうのが良策ですわね」



 緋色百合と朱色花華が植物を操り、蜥蜴人間を殲滅していっている。


 ヒイロがポケットに入れていたたくさんの小さな植物の種をバラ撒くと、急速に成長し巨大な蔦植物となる。蔦はヒイロの意のままに動き、蜥蜴人間を次々拘束、絞め潰していく


 花華は花弁のカッターを周囲に展開し、一部の花弁は防御壁として動かし蜥蜴人間の攻撃を防ぎ、残りはビットソードのように縦横無尽に操り、蜥蜴人間を切り裂いていく。


 蜥蜴人間がヒイロを接近して切り刻もうと迫る。だが、足を踏み出した瞬間砂浜の砂とは違う感触が蜥蜴人間の足裏を刺激する



樹罠プラントトラップ龍喰草ドラゴンイーター!!」



 踏んだのはヒイロが仕掛けた植物の罠。地面から突然巨大な口のようなものが現れ蜥蜴人間を周囲もろとも挟みこむ。象すら軽く飲み込めるサイズの巨大なハエトリソウに捕食された蜥蜴人間は、哀れにも骨も残さず消化され栄養となった。




花撃カゲキ・シェイクスピア!!」



 ふわりと花華の周りに色とりどりの花びらが舞う。ありとあらゆる色に美しく染められた花びらは、風に乗りまるで一つの命のように舞う。その形はまるで、龍のよう




「緋色の飛撃ヒゲキ・ハムレット!」



 吹き荒ぶ花弁の嵐が過ぎ去ったあとの大地は、悲劇的な緋色に染められていた。





「もぅ、夜這いならぬ昼這いなんて、積極的なのね、嫌いじゃないわ!! 嫌いじゃないわーー!!」



 クネクネと奇妙なステップを踏みながら敵の攻撃をかわし、のらりくらりと敵の急所にクナイや手裏剣を叩き込んで撃破しておく梅剣。と砂中からいきなり蜥蜴人間が飛び出し、梅剣の首を狙う。蜥蜴人間はどうやら地中に潜れる能力を有しているらしい



「甘いわよ!!」



 蜥蜴人間の持っていたサーベルが梅権の着ているかわいい花柄パーカーを破く。だが破られたのはパーカーのみだ。メジャーな忍術、空蝉の術である。本物は、砂中から飛び出してきた蜥蜴人間の背後にいた



「アタシ実は化け物にはキビしいの……特に、アナタ達みたいな品のないコは特にね!!」



 梅剣がピチピチブーメランパンツの中をモソモソと探り、取り出したのは忍者刀。首を後ろを掻き切られて蜥蜴人間は倒れた


 その小さな布面積のどこにクナイや手裏剣やら忍者武器が潜んでいたのか甚だ疑問だが、ツッコんでは終わりのような気がするのでやめておこう。


 まるで弄ぶかのように蜥蜴人間の攻撃をかいくぐり飛び回りながら、首を切り裂いて確実に殺していく。


 水平に振るわれた蜥蜴人間の刃に対して梅剣は大きく仰け反ることで回避し、ブリッジのような体制に。そして体重を腕のほうにかけて蜥蜴人間の刃を持つ手を蹴り飛ばし、その勢いで宙返りして立ち上がり、蜥蜴人間の頚動脈を忍者刀で掻き切った



「だぁーーーーもうテメェ気もち悪いぃ!! 黙って戦えねぇのか?!」



 こちらは梅剣のように舞い踊るような戦いではなく、豪快無比な闘い方をしている蒼空。手にした槍を豪快に振り回しながら、刃で敵の首を刎ね、柄で頭蓋骨を砕いていく。


 迫りくる複数の蜥蜴人間に対して蒼空は槍をブン投げ、一匹の蜥蜴人間の頭を吹き飛ばす。そして人間とは思えない速さでダッシュし、隣にいた蜥蜴人間の頭をドロップキックで蹴り飛ばす。そして宙に浮いた状態で蜥蜴人間の頭に刺さっている槍を掴み、地面に突き刺す。


 2匹の蜥蜴人間は頭を失い吹き飛ばされ、槍の突き刺さった地面からは、地下から奇襲しようとしていた蜥蜴人間の血がにじみ出た。




戦闘描写、上手くなってるといいなぁ…

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