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龍魔睡覚

睡覚ってのはスイカク って読みます。力は目覚めてるけどまだまどろんでる感じ。寝起きって力でないじゃないですか、アレと同じです







「すまない。こんなことを押し付けてしまった」


「いいんです。必要なことでしたから」


「君に報いよう。せめてもの償いだ」


「はい、お願いします。私の、大切な弟たちを……」





~~~~~~~~~~~~~



 復讐を遂げ、狂喜にかられた蒼太が高笑いをしていた。辺りの気温はマグマが流れているところを除いて氷点下になっている。日本の気象庁は頭を抱えているだろう



「ははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!! やった!! 殺した!! あいつを殺した!! あははははあはははははははははははは!!                             









あ?」





 地面を焦がしていたマグマが突如そのうねりを止めた。








 次の瞬間、マグマが龍斗のもとへ流れ始めた。流れ出た大地の血液は、龍斗の体へと張り付き、新たな身体となっていく。



「チッ、極限龍化がギリギリで発動しやがったか?」



 氷の槍を再び精製、身構える蒼太。マグマはうねり続け、ついには辺りに巻き散らかされていたマグマ全てが龍斗の体へと吸い込まれた。


次の瞬間





ドバァァァァァーーーーーーーーーーン!!!






マグマの海に佇む、紅蓮の龍がいた




『『オオオオォオォォォォォォオオォォォォォオオオオオオオオオォォオオォォオ!!!』』




世界を震わす龍の激昂が響いた。






 全身を赤い鱗で覆い、頭には2本の大きな角。刺々しい鎧にでもおおわれているかのような甲殻。辺りは蒼太の能力で氷点下まで温度が下がっていたが、この龍が具現化した瞬間元の温度へと気温が上昇した。


 龍は己の手を確認するように握ったり離したりしながら見つめる。




『やはりこれになるか。現時点最も影響が強い、致し方あるまい。さて。我を呼び覚ましたるは貴様だったか、白氷龍』


「はァ?」



 龍斗だった龍の口から吐き出されたのは、荘厳な雰囲気漂わせる低い声だった。少なくとも、過去に姿を見せたあの口の悪い龍の意思の面影はない



『やはり、なれば、らば。必然。貴様が私に固執するは当然のことだ。因果応報、当然の結末、か。これも我の業、背負うほかあるまい』


「なにほざいてんだよこの殺人者が!! 氷雨槍レインアイスゲイボルグ!!」



 先ほどは1本だった氷の槍を、今度は大量に精製しその龍へと飛ばす。龍に近づいたところで氷の槍は爆ぜ、無数の氷の槍が空間を埋め尽くしながら龍へと迫る


 その無数の氷の槍は、あっけなく赤い龍の鱗を貫いた。辺りに赤い龍が流した血液が飛び散る。だが赤い龍はそれを何とも思っていないかのように、依然と蒼太を見つめ続けていた。



「チッ、まだくたばらねぇのか。だったらくたばるまで殺してやるよォ!! 氷河世界ニヴルヘイム! 絶対零度を味わいなァ!!」



 常温まで上がっていた温度が絶対零度、マイナス196度まで下がろうとしたとき。赤い龍が手をかざした。刹那、かざした龍の腕の鱗の赤い色が抜け落ちていく。まるで脱色するかのように



『周りを巻き込むでない。貴様の狙いは私だろう? 必要のないことをしても、何一つ得るものはない。そうだろう?』



 龍がかざした手をぐっ、と握りしめる。たったそれだけの動作だ。蒼太の氷の力が発動すること無く、封殺された



「………なぜだ、なんで温度が下がらねぇ?! なんで力が通じねぇんだ?!」


『我を殺したいのだろう。ならその能力チカラで作り出した氷で我の心の臓腑を突き刺し、我の息の根を止めろ。周りは関係あるまい』



 赤い龍に突き刺さっていた氷の槍が次々抜け落ち、蒸発していく。哀しそうな目で蒼太を見やりながら、赤い龍はこうべを垂れた。後悔するように。嘆き悲しむように。その頬に、一筋の涙を流しながら



『貴様自身のケリを付けるのだ。私も、ケリを付けよう。私の体に宿る私の魂と、二つの魂に誓って』



ぎり、と赤い龍が拳を握りしめる。



「貴様の何もかも気に食わねェ、何もかもだ!! いいだろう、やってやるよォ!! 極限龍化!」




 蒼太の周りの冷気が渦巻き、蒼太を覆う。凄まじい吹雪を切り裂いて、氷の鎧を纏った龍が姿を現した。その姿は皮肉にも、どことなく赤い龍に似ていた。



『殺す殺す殺す殺す殺すッッ!! 魂まで氷結粉砕してやるッッ!』


『来い。貴様の怨念、しかと受け止めよう』



今再び、炎と氷がぶつかり合った。炎を纏った拳と冷気を纏った拳がお互いの体へと振るわれる。互いの拳が激突するたびに辺りに小さな地震が起こる。



ゴキッ!! ベキィ!! ゴシャァ!! ゴガァン!!



赤い龍が白い龍の腹筋を貫く一撃を食らわせる。白い龍が赤い龍の顔面に重い一撃を食わらせる。延々とも呼べる殴り合いの果て












倒れ伏したのは白い龍だった









~~~~~~~~~~~~~~~~~





「なんなんだよ、これ……」



 蒼空と梅剣は愕然としていた。先ほど殺したはずの敵が豹変したのだ。蘇り、立ち上がるどころか、切り落としたはずの片腕があった場所からは、黒いモヤのようなものが蠢いている。



ほんの数分前のこと。二人は任務達成からの安堵から軽口を叩きあっていた



「強かったわね、ソロモン・レクター隊長」


「あぁ。正直、アタシ一人だと負けてたな。一応感謝しといてやるよバイちゃん」


「あら、それだとまるで私が両刀みたいな解釈にならないかしら?」


「ちがうってのか」


「どうでしょうね……秘密は人をある意味で輝かせるのよ」


「歪んだ輝き方だな…」




 唐突に雨がピタリと止んだ。空は相変わらず曇り空のままだが、雨はもう一滴も降ってはいない。そして




『『オオオオォオォォォォォォオオォォォォォオオオオオオオオオォォオオォォオ!!!』』





世界を惑わす禍々しい激昂が響いた。




ドバァァァァァン!  ザクッ  




 


 後ろで何かの衝撃で地面の雨水が弾けた音がした。数秒して地面に何かが突き刺さる。蒼空の大槍だ。直後




ヒュゴッ    バァチィィィィンン!!!




 後ろから飛んできな何らかの脅威。梅剣は何とか防御態勢を取り、巨大手裏剣で受け止めた。そのとんできたものは




まぎれもない、先ほど自分たちが殺したソロモン・レクターその人だった





 




 手裏剣の刃の部分を強く握りしめているため、ソロモンの右手からは血がダクダクと流れ出ている。



「な、なによこれ……」



 凄まじい怪力で押し返されそうになりながらも必死に応戦する梅剣。片手でこの力、かなりヤバい。忍は基本的に正面から力技で勝負はせず、誰にも知られずに命を奪うのが生業。とはいっても彼もベテランの忍であり、力もかなりあるはずだが


ジリジリと雪駄が地面を削っている。押されていた。




 ふと、ソロモンの表情が見えた。暗殺対象の資料として見せられた写真とは似ても似つかぬ、恐ろしい悪魔・・のような顔をしていた。この世の憎悪、邪悪、あらゆる負の感情を凝縮したものを体現したかのような



迅突ジントツ!!」



 あらんかぎりの力を込められた、音速並みの槍の突きがソロモンを狙う。それを左手・・で受け止めるソロモン。再生していた。親指、人差し指、中指の三本で、鉄をも穿つ一撃と止めていた。決して微動だにせず。



 ふと、彼の左腕全体が真っ黒になる。先ほどの靄と同じ色だ。次の瞬間、腕が変化し、大量の忌まわしい蟲へと姿を変えた。



ぎち   ぎり  ぎちぎち   カサカサ



 百足ムカデサソリ蜥蜴トカゲ蜘蛛クモ、ゲジゲジ、名前の分からないおぞましい蟲などが、槍を伝ってこちらへとジワジワ這い寄ってくる。





「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 無理やりに槍を振り回そうにも凄まじい力で槍を抑えられており、振り払えない。武器を捨てるしか方法はない。



「蒼空! 私のを使いなさい!」



 ハッとした蒼空は槍を手放し、梅剣の背中にマウントされている忍者刀を抜刀、ソロモンへと突き立てた。どす黒い血液のようなものが刃を濡らす。


 刀の血塗られた場所が溶けていた。強烈な酸の臭いが、脳の奥を針で突き刺したかのような感覚をもたらす。


 だがその一撃でソロモンは怯み、梅剣を抑える力が少しだけ弱まった。それに乗じて梅剣はソロモンを弾き飛ばす。数メートル先にふわりと着地したそれ。


 ソロモンだったそれには、凄まじい闇のオーラが漂っている。うっすら、ソロモンの背後に人影が浮かんでいる。禍々しい、何かの影が



「はぁ…はぁ……あなた、本当、に何ものよ……」



 梅剣がそれに問いかける。それは答えた。自らの名を。本当の名前を



『我が名はヴァアル・ゼヴル。すべてを裏切り、堕ちたものなり』



「関係ねぇ!! 関係ないんだよォォォ!!! 貴様を殺す! 殺すッ!! 殺すゥゥゥ!!」


「ちょ、蒼空!」



 激昂する蒼空。手も足も出なかったことが悔しかったのだろうか、梅剣の残っていたもう一本の忍者刀を奪い取り、構えて突進する蒼空。


 再び靄となった左腕を前に突き出すヴァアル。その靄は大量のハエへと姿を変え、蒼空を覆い尽くす。



「いやぁぁぁぁぁぁあ……アァ………」


「蒼空!!」



 黒い蠅の靄に蒼空は囲まれたが、数秒後解放された。力なく倒れ伏した蒼空が横たわっていた。



「貴様ッ……」



 静かなる怒りを瞳に宿し、太もも裏に隠しておいた忍者刀を抜刀する梅剣。それを見てヴァアルは右手を挙げて静止させる



『慌てるな、殺しはしておらん。戦意はたらふく食わせてもらったがな。彼女もしばらくは昏倒したままであろう。武器を下せ、差を思い知っただろう。安心しろ、もう攻撃はせん』




 荘厳な、響くように低い声がその口から放たれた。同時に辺りに漂っていた殺気がふっ、と消えた。ヴァアルの靄のようだった左腕が凝固していき、再び普通の腕へと戻った。


 決着はついた。否応なしに。梅剣はこの瞬間、戦う権利すら剥奪されたのだ



「貴方を殺そうとしたものを殺さないの? 私たちは貴方を暗殺しに来た刺客なのよ?」


『戦いは我輩が勝った、圧倒的戦力にて。よって我はお前たちを勝者の権限によって生かしておく。お前たちはもはや我輩の捕虜だ。これからは我輩のために尽力してもらう。裏切ってもいいがその時は。わかるな?』


「………負けたわ」



 ポイ、と持っていた刀を捨てる梅剣。忍には割り切りの良さも大事だ。主を裏切るような残酷な判断も、自分の命を切り捨てることになる判断でも、平気で下せることが当たり前。




「聞かせてもらってもいいかしら?」


『我輩に答えられるものなら』



「あなたの目的はなに?」


『そうだな。未来に芽吹く種をむざむざ刈り取るなんぞさせたくない。ひとまずはその種と未来を守りたい、が当面の目的だろう』


「永劫続くでしょうね。ヒトという存在があり続ける限り」


『卿ら人間は見ていて面白い。どれだけ時移ろうともそれは変わらぬ。それを見守る存在でありたい。それだけだ』


「大きな器ね。貴方が龍殺しの長なら、この娘みたいな子もできなかったでしょうね」


『これからはさせないさ。我輩と、我輩の友が止めてみせる』






直後、地面に倒れ伏す音が二つ、竜野町に響いた

あらあら、まさかのソロモンさんがひとでなし。ってかあんな超能力持ってる時点でおかしいって思わなきゃねww。


龍斗さんもなんだかおかしいことになってます。どーなってくんだろーなー


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