過去、そして覚醒
グダグダ書き溜めてたら月一更新とか忘れてたぜ!ww
まぁアレですよ、血なまぐさい過去編です
いつのころだったか。ともかく暑かった。レースのカーテンで日光を軽減し、僕はおとなしく本を読んでいた
「りゅーとー!」
唐突に子どもの声がした。部屋のドアを破らんばかりの勢いでその声の主であろう女の子が入ってきた
「なーに?」
「あそぼ!」
「えー……つかれるからイヤだよ…」
「つべこべいわない! ほら、そーたもおそとでまってるんだから!」
有無を言わさず強引に僕を部屋の外へと連れ出す少女。
腕をグイグイと引っ張られ、僕は外へと連れ出された。空は快晴。降り注ぐ太陽光が地上の表面温度を容赦なく上げていく。少し立っているだけで汗が服に滲んできた
「あついよー…」
「だいじょーぶ! すいとうにおちゃだっていれてきたんだから! のどかわいたらのんでね!」
「おねーちゃんにりゅーと、おそい」
しばらく歩くと、空き地があった。そこにいた見覚えのある男の子が僕と女の子を睨みつける。どうやら怒っているようだ。この炎天下の中待たされたのだ、それはそうだろう。僕だって怒るかもしれない
「だってりゅーとがイヤがるんだもん」
「……ゴメンなさい……」
若干呆れたような目で男の子が僕に話しかける。おおよそ十数年後の彼とは似ても似つかない。口調は冷たいものを感じたが、このころにはまだ狂気がなかった
「おとこがかんたんにあやまっちゃカッコわるいよ」
「……ゴメンなさい……」
「またあやまったー!」
「「アハハハハハ!」」
「うぅ~…」
そんな二人に振り回され、ひとしきり走り回り、転びまわり、じゃれ合った僕たち3人は元居た部屋に戻った。晩御飯を食べ、フカフカのベッドに身を沈める。明日も、こんな日々が続くと思っていたのに
~~~~~~~~~~~
「こほ………けほ………」
赤い水が僕の全身をくまなく濡らす。今僕は手を鋭く突き出している。肘の辺りまで何か生暖かいものが深く、僕の腕に突き刺さっている。赤い水はそこからとめどなく流れ出てきている
「……………楓恋おねえちゃん?」
「ああああぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ゴバァァァァァァァァン!!
大地から紅蓮のマグマが爆ぜた。氷の世界から一変、辺りは灼熱のマグマ地帯へと姿を変えた。辺り全てを蒸発させながら世界を火の海へと変えていく
「きゃぁぁぁぁ!!」
「影扉!!」
龍斗の近くにいた朱色が蒸発する前に、影が朱色を包み込む。その影は次の瞬間遠く離れた場所に現れた。影の中から二人の人影が現れる
「危なかったなー、朱色ちゃん」
朱色を抱きかかえるようにして助けたのは黄泉川だった。顔色がかなり悪い
「よ、黄泉川さん………でしたっけ?」
「そうそう。しっかし、これは流石にやばいことになってきたな……ごほぉ?!」
盛大に吐血をする黄泉川。よく見れば服の下に包帯をたくさん巻いている。余計な心配をかけないために能力でケガをごまかしていたのだろう
「だ、大丈夫ですか?!」
「んあぁ、まだ前回の傷が癒えきらないうちに病院抜け出してきたけど、大丈夫大丈夫……それよりも」
二人が見つめる遠く先、炎と氷が激しくぶつかり合っていた。空が流した、憂いと嘆きの涙が、辺りに降り始めた
「あああぁっぁぁあぁぁぁぁっぁああああ!!」
龍斗が炎の腕で蒼太を屠ろうと闇雲に振り回す。それら全てを受け流し、氷で武装した拳を叩きこむ蒼太。
ブォン! パシッ ドスッ ゴキッ! メキャッ!
「はっはっはっはっはっはっは! どうしたどうした赤羽! 辛いか?! 痛いか?! あァ?!」
龍斗の右ストレートを左手で受け流しながら掴み、引っ張る。バランスを崩し、前かがみになる龍斗。龍斗の左ひざに重い蹴りを叩きこむ蒼太。本来曲がるべき方向とは別の方向に、龍斗の膝が曲がった。
「ぁぐ……?!」
「ほらよォ!」
龍斗の髪の毛を引っ掴み、氷で武装した膝で蹴りを顔面にブチ込む。鼻血を噴出させながら大きくのけぞる龍斗。畳み掛けるように、むき出しの腹に、蒼太の渾身のキックが決まった
地面を滑るように吹き飛ばされる龍斗。氷漬けの大地が龍斗が滑ったところだけ溶けている。龍斗から流れ出る血が地面を焦がし、溶かしている。龍斗の目からは、一筋の紅い涙が流れていた
「終わりだ。氷槍」
巨大な氷の槍を生成。動けない龍斗の頭上に向かって投げつける。空中で巨大な槍は無数の鋭い雹となり、龍斗の体を余すところなく貫いた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「音斗!」
「ッ!」
重く、鋭く、速い突きがソロモンの顔面をとらえようと迫る。それを愛用の銃で横に受け流し、刃を横へと弾き飛ばす。蒼空がバランスを崩したところに白銀の銃「バルクライ」の銃撃を加えようとするが、闇の中から数個のクナイが飛んでくる
それを黄金の銃「ヴィルジニア」の銃撃で弾き飛ばすが、その隙をついて蒼空は体制をたてなおす
「やれやれ、これは殺さずでは済まないかもしれないな」
「調子コイてんじゃねーよ!」
蒼空が振るった槍がソロモンの首を狙うが、次の瞬間ソロモンは蒼空の後ろに出現していた。蒼空の後頭部に鋼の十字架が押し付けられる
「その程度ではな、私の首を取るには早すぎる。もっと腕を磨いておくことだ。安心しろ、君たちを打つ時は麻酔ゴム弾を装填してある。死にはすまい」
ソロモンが引き金を引こうとしたその瞬間、ヴィルジニアの銃身にクナイが刺さる。衝撃で銃口が後頭部からずれた瞬間に槍の尾でソロモンのどてっぱらに一撃、距離を取る蒼空
「ぐぅッ……まったく、これでヴィルジニアも3代目を造らなくてはならないではないか……お金もシャレにならんというのに」
銃に刺さったクナイを引き抜き、損傷度合を見るソロモン。
「茶化すな! 裂撃!」
槍の振るわれた衝撃で生み出された鎌鼬がソロモンを狙う。重心をズラし、体をひねることで回避するソロモンだが、回避した方向に新たな刃があるのに気付かなかった
ザンッ! ブシッ
「ッッ?! 梅剣か?!」
血が闇に消える。忍ならではの闇討ち、鋭い忍者刀の一撃がソロモンの脇腹をとらえた。斬られた瞬間、眩暈に襲われるソロモン。息を着く暇もなく、数撃連続で斬撃がソロモンの皮膚を裂く
大ぶりな蒼空の攻撃は避けやすいが、当たれば一撃で沈められるだろう。一方梅剣は速く、避け辛く、威力は低いが確実にダメージを蓄積させる。いいコンビネーションだ。敵ながら賞賛を覚える
「(毒が仕込まれているな……それもおそらく致死性の………これはさすがにまずいことになった。私としたことが……くそ)」
普段使わない悪態を心の中で呟く。薄れゆく意識、徐々に狭められていく勝利、朦朧とした意識を起き上がらせようと顔を上げた瞬間、左側に激痛を感じた。刹那辺りに響く、何か生々しいものが地面に落ちた音。
それが自身の左腕が地面に落下した音だとソロモンが気付くことはなかった。毒の刀が、ソロモンの四肢を貫いた。痛みすら、忘れた
もはや自分の体を自分の意思で制御できない。地面にあおむけに倒れるソロモン。彼の頭の中には走馬灯が流れていた。かつて聞いた音がノイズ交じりでよく聞こえない。だが、彼自身はよく覚えていた。楽しかった日々の一欠片
『む? 貴殿は?』
『私の名はジ……が……だ』
『わた……ウr…グ……です』
『フフ……ソロモンさん、貴方を探してたのよ』
『我が名は……ナバ……グ……を断ち切る……だ』
そうだ……私は……我輩は…
「とどめだッ! 」
ゴガァァァァァン!!
蒼空がジャンプから勢いをつけ、ソロモンの胸に槍を深々と突きたてる。半径数メートルに大きな亀裂が入るくらいに強い衝撃とともに
「チッ、歯ごたえのない……人間はやっぱ脆すぎて面白くない。帰る」
「……………」
槍を死体に突き刺したまま、蒼空はつまらなさそうに歩き出した。梅剣が顔を覆う布を指でひっかけ下げる。彼が素顔をさらすということは、任務は滞りなく終了したのだろう
「ああ~あ、久しぶり疲れちゃったわ」
「え?」
頭を覆う布も取り払い、梅剣の頭が完全に夜空にさらされた。どこかで見た顔だ。龍斗と同じクラス。スキンヘッド。オカマ口調
「あぁもう汗臭くてサイアク。帰ってシャワー浴びなきゃ。あら? どうしたのそんなハトが散弾銃喰らったような顔して」
「なにって……お前そんなオカマ口調だったの?」
「えぇそうだけど? なにか問題あるのかしら? 任務で喋る必要性なんてないでしょ?」
「そーか……私の前で喋らないでくれ、気持ち悪いから」
「つれないわねぇ……」
ぞくり
降り続いていた雨がぴたりと止んだ。土砂降りだったのにもかかわらずだ。そして
森羅万象が、悲鳴を上げた
『『オオオオォオォォォォォォオオォォォォォオオオオオオオオオォォオオォォオ!!!』』
二つの咆哮が、世界に響いた