樹と花
今回の主人公はヒイロちゃんです。バトルシーン頑張って書いたけど…
やっぱイマイチだぜ!! はっはっはっは…ハァ…
こんにちは、私の名前は緋色百合です。とある片田舎で女子高生をやってます。あと大事なことがひとつ。私は普通の人間じゃないんです
「ご馳走様っと…あ、こんな時間……そろそろ出なきゃ」
「ン、もうそんな時間か。食器は下げとくから準備して行ってきな」
「いつもありがと、龍斗サン」
「いいっていいって。ホラ、早く準備して行って来る!」
今しがた私に優しい気遣いをしてくれたこの男の人は赤羽龍斗。私が住んでいる共同住宅「江瑠弩荘」の専属ハウスキーパーです。あ、言っておきますがこの荘は女子寮です。
なぜ彼がここにいるのかはあまり知りませんが、なんでも家出してここに行き着いたんだそうです。
そしてたまたま出会った大家さんが、ここに住み込みでハウスキーパーをするのを進めたからだそうです
龍斗さんを雇ったとき大家さんは、ここが女子寮ということを忘れていたそうです。大丈夫なんですか、それ。杞憂だったんですけどね。
どことなく、彼からはHETAREオーラが出ているようにも感じます。今のはオフレコですよ?
そうそう。大事なことですが、この人も私と同じ発症者なんです。体に龍の力が現れる謎の病、龍化病の。詳しい説明は省きます
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本能に動かされるままに殺しを始めようとしていた私を、彼はその力で戒め、そして私の人としての心を守ってくれたのです。少々強引なやり方でしたが
ともかく、彼には多少なりとも恩があるのです。まぁそれは置いといて。普通の人間でないからといって学校へ行かなくていいというわけではありません。特異能力はあれど一応健康体なので
今日も私は将来のために愛すべき学び舎に向かっているところです
なんだかんだで放課後です。普通じゃないといっても、普通の人にはそのことを隠しているわけですし、今日もいたって普通の学生生活を満喫させていただきました。気の合う友達と仲良く下校していたここまでは
「今日も暑かったね~…」
「そうね……熱中症にならないよう気をつけないと」
「ヒイロいっつも涼しい顔してるから暑がってるような感じないよwww」
「そう?」
「もう下着とかびちゃびちゃだよ~…代え持って来ればよかった」
「「こら! はしたない!」」
「でたww 家庭科の教育ババァww」
「アハハ…んじゃ明日ね~」
「「バイバーイ!」」
友達との他愛ない会話を楽しんで、江瑠弩荘への道に入ったときでした
「ウフフ、こんにちは」
曲がり角の影から声が飛んできました。女性声、トーンからして私と同じくらいの年齢でしょうか。怪しいなと思っていると影からその声の主が姿を現しました
「貴方が緑神龍? 思ったより……ウフフ。普通極まりないんですのね。女性ならば、もっと優雅に振舞ったほうがよくってよ?」
大変失礼極まりないこのお嬢様風の女の子。そしてなにより、私の正体を知っているようです。ということは
「あなたも…龍化者なのね」
「そう。忌々しいことに、貴方と同じ緑神龍ですのよ。貴方を殺して私は私になりますの。顔を貸してくださいな」
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ここはいつかの空き地。龍斗さんに初めてケンカ吹っかけたときの、ある意味思い出の場所。
前に私が掘り返してぐちゃぐちゃになった地面は、跡形もなく綺麗に補修されています。これからまた掘り返すんですが。すみません、この空き地の所有者さん
「ここまで来て残念だけど、私は戦うつもりはありませんから」
「貴方にはなくても私にはあるんですの。この世に緑神龍は2匹といらない。緑には美しい花さえあればいいんですの」
どこからか、ふわりと甘いいい香りが漂う。花の匂いだ。風に混じって美しい花の花弁が、新しく現れた緑神龍の辺りを漂う
フワッ ピシュルルルル フヒュゥゥン
鋭いものが風を切る音がふと聞こえる。気がついたときにはヒイロの背中に背負っていたカバンの肩紐が切れ、地面に落ちる。同時に頬に痛みが走るのをヒイロは感じた。真っ赤な線がヒイロの頬を伝っていく
「っ!……花弁のカッター…」
「流石は同族ですのね、まぁ龍化者なら反射神経も視覚も研ぎ澄まされてるでしょうし、わかって当然ですかね。その同族もすぐ死ぬのですけれど」
ふわりと優雅に腕を振るう花龍。振られた腕の軌跡から大量の美しい花びらが舞い上がる。
「切り刻む花吹雪」
花龍が腕を振り下ろすと同時に大量の花弁の刃がヒイロを襲う。ただの花びらなのに、地面に傷がつくほどの衝撃波を描きながら、花びらはヒイロの肉を切り裂こうと迫る
「くっ…! 葉盾」
風に流されて飛んできた葉っぱが大量にヒイロの眼前に集まり、花弁を防ぐ盾となる。葉と花弁ではやはり葉のほうが耐久値は高いようだ。花弁は表面に突き刺さるも、葉の盾を貫通まではできていない
「無駄ですの!」
視界を覆うほどの花弁が舞い上がり、葉の盾ごとヒイロを包み込む。一つ一つが岩を切り刻むことさえ容易なほど鋭い刃の嵐。包み込まれれば最後、嵐が去ったあとには肉塊しか残らないだろう
「っ!」
ヒイロの半径5メートルが花弁で包まれ、徐々に小さくなる。そして、ついには数十センチのピンクの塊になり、弾けた。後には何も残ってはいない。唯一の名残は辺りの地面には鋭いもので引っ掛かれたようなあとだけ
「ウフフ……龍の挽肉の出来上がり、ですの」
「…残念だけど、ウチは今夜は魚なの。お肉は……そういえば明日がお肉の日だったわね」
「なっ…!」
花龍の後ろには、気だるそうに壁にもたれかかっているヒイロがいた
「ウソ……確かに私は貴方を…」
「貴方がズタズタにしたのは木の根で編みこんだ木偶人形よ。自分の攻撃で自分の視界を塞いじゃいけないわ。経験者は語る、よ」
ニコリと微笑を浮かべるヒイロ。花龍はその笑みに少し戦慄を覚えた
「あの花弁はあなたの意志で動くもの、自動追尾能力は無いようね。だったら簡単、視界を塞げば避けるのは容易」
「くっ……芳しき猛毒芳香!!」
花龍が腕をヒイロの方向へまたしても振るう。どこからか桃色の粉が舞い上がり、ヒイロへと一直線に飛んでいく
反射的にヒイロはそれを避ける。後ろの壁にこびり付く様に生えていた蔓植物が一瞬にして朽ち果てる。刹那、そのこびり付かれていた壁も黒く変色し砂になるまで朽ち果てた
「……さしずめ猛毒の花粉、といったところかしら……流石は龍化者、無機物を腐食させるなんて…」
「もう御託はいいですの、早く死になさい!!」
風に流されているわけではなく、猛毒の花粉はヒイロ目掛けて飛んでいく。ヒイロに直撃寸前で地面から大木のごとく太い棘付蔓植物が、花粉の行く手をふさぐ。猛毒の花粉は蔓植物の表面を焦がすだけに終わった。
「う~ん……地面から生やすのは流石に迷惑ね…何か手を考えなくちゃ。」
「ッ!」
余裕綽々のヒイロに動揺を隠せない花龍。勝てない。脳裏に浮かぶ自分が地面に倒れ伏す光景。
今までは逆だった。自分の前に誰かが跪き、許しを請う。容赦なく頭を踏みつけ、自分が上だということを知らしめ、悦楽を感じる。
誰にも媚びず、靡かない。自分だけをただひたすら妄信してここまできた。ここで負けるわけにはいかない。存在意義を守るため
「さてどうするのかしら。私としてはこのまま大人しく帰って金輪際私や私の周りの人に係わらないでくれると嬉しいんだけど」
「フフ……勝ったつもりでいるのは少し早くってよ?」
また辺りにふわりと甘い香りが漂う。
いやぁ、毒々しい戦いですね。女性同士の喧嘩って怖いですね…
やっぱりバトルシーンむぢゅかしいよ……
そういやボクの物書き仲間のエネルさんの書いてる小説の中に、おんなじ様なヤツがいたような……ってかエネルさんの小説見たときビビりました。
脳内でこの話を構成し終わった直後のことだった。あ、カブった…字は違うけど
エネルさん、ごめんにゃさい
次回、決着。花龍の隠し玉とは?!