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第2の龍化者

やっべぇドラゴノイドの在庫がこれで最後だ…


…続き書くか…

それから数日間、僕はこの仕事の大変さを知った。洗濯物の仕分けには少なからずそれが混入していたり……恥ずかしいから空気読んでくれ。無理やり部屋に連れ込まれたと思ったら掃除の手伝いをさせられたり(掃除のたびそういうものなどを目にしてしまい、わざわざ赤面する僕)。一度舞奈さんの部屋に食事の呼び出しにいったときに…着替え……いや、なんでもない。最低だ、僕………(決してそういうことをしたわけではないが)性別の壁がやたら高く感じた。


「今夜は僕が当番か。では買い物に行ってきます」


「じゃあ私も~」


七人一斉に手を挙げる。なんだか七人の間で火花が散っているような気がしたが、そこはスルーする。


「慣れてきたんで結構です」


冷たくあしらい、とっとと買い物に出かける。今夜はピーマンの肉詰めでも……春沙さん、野菜大嫌いだしなぁ。あとピーマンの胡麻和えでも。あれなら春沙さんでも食べやすいだろうし。チラシの情報で僕は大体のメニューを決める。今回はピーマンが安い。春沙さんとその他の必死の隠蔽工作もむなしく、今夜は野菜祭りだ。江瑠弩荘、肉食率高すぎ……商店街を歩いて食材を買い集め、自分の小遣いでコーヒーを買って公園のベンチで一息つく。


「やだ、あれだよね?たそがれのニット帽?」


「知ってる~毎日女の子に引っ張りまわされてる不幸君でしょ?」


「男の子なら誰しも羨む境遇よね~。ハーレムっていうの?」


「「「きゃははははははは!」」」


くだらない女子高生の戯言だ。聞き流す。まったく実際にこんな境遇になったところで、その苦労は本人にしか分からない。下らない無いものねだりだ。……この町に来てから僕はどんな人間として認識されているのだろう?どうでもいいことだが、近所付き合いに差し障るといけないし…と、頭に鈍痛が走った。いや、痛いというより熱い。頭というより角に。どんどん熱くなっていく。ふと、前から高校一年ぐらいの女の子が歩いてきた。ショートカットでメガネをかけている。失礼だが、いかにも賢しそうである。


「こんにちは」


突然のことに驚いたが、挨拶を返す。高校生くらいならさっきのチャラ女のように僕の事を噂などで耳にしている可能性が高い。興味本位で近づいてきたといったところか。しかし、そんなボクの予想は見事に外れた。


「こんにちは」


「ふぅん・・・あなた、人じゃないでしょう?」


じろじろこちらを値踏みするように見ながらとんでもないことをさらりと言ってのける。驚愕した。これについて知っている人物がいた。ということは少なからず僕以外にもこんなことになった人がいるというのか?…慎重に話を進めていく。


「君はこれについて何か知っているのか?」


「ええ……私もそれなのよ」







連れてこられたのは人気のない空き地である。なんだかその辺に漂う空気も陰湿な印象を受ける。


「君は何者だ?なぜこれについて知っている?」


「どうすればこれが治るか知ってる?簡単なことなのよ」


唐突に本題に入る少女。周りの空気がざらりと殺気を帯びる。地面の下から何かが自分を貫こうと迫ってくるのが何故かわかった。次の瞬間僕が立っていた場所から巨大な棘付きつる植物が生えてきた。間一髪。気に入っていたジーンズが破けてしまった。あーあ、やっちまった……意外とジーンズって高いんだよなぁ…でもこれはこれでダメージジーンズってのもあるし……なんてことを考えていたら少女が話し始めた。


「ずいぶんと余裕なのね。教えてあげるわ。これは龍化病って言ってね。その名のとおり龍になるの。人によって個人差はあるようだけど………私は…そうね、緑神龍といったところかしら。自然を味方につけ、植物を操れる能力よ」


「ずいぶんとたいそうな能力だね…で、なんで僕を殺そうとしたのかな?」



「これが唯一の龍化病を治す方法なのよ。同じ境遇の人同士で殺し合うことで元の人間に戻れるの」


少女の顔に捻じ曲がった笑顔が浮かんだ。顔立ちはいいのにもったいねぇなぁ…


「つまらないね」


本心だった。先ほどの言葉で僕は彼女を完全に敵として認識する。


「………何?」


「己のエゴのために他人を傷つけていいと本当に思っているのか?本当に…下らない…てめぇの心のほうがよっぽど病んでるよ」


「黙れ!!貴様なんかに何が解ると言うの?!」


情け容赦なくつる植物を操って攻撃してくる少女。殺人もぐらたたきのようである。地面が穴ぼこだらけになっていく。あ~あ、どうすんの後片付け…


「何もしていないのに、何の罪も無いこの私が!こんな不条理が許されるはずは無いわ!私は元の生活を取り戻すために戦う!戦う相手が誰であっても!それがどんなことであろうとも!」


なんだか目が慣れてきた。なんだ、簡単なパターン攻撃じゃないか。相手は攻撃が避けられているのにますます腹を立て、いっそう攻撃の手数を増やし、強くしているようだ。試してみるか。砂をかけて目晦まししてから僕はジャケットを脱いだ。あらわになる僕の翼。そして買い物籠と共に隅っこへ寄せておく。


「くっ…目潰しなんて…小賢しい!よくも!この私をコケにしてくれたわね!」


「やかましいなぁ……喋る元気があるなら攻撃にベクトルを向けた方がいいんじゃないか?」


縮こまっていた翼を大きく広げ、両拳をつき合わせる。だんだん腹が立ってきたぞ~!!


「あんたは今の寂しい状態から脱却したいだけだろ?病気がどうかかじゃねえ。一人だけになるのが、いや、もうなってるのか?孤独を恐れてるだけだろ?寂しがりのミドリのトカゲちゃん?」


「おのれええええええええ!」


「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


地面に足を踏ん張って固定し、思い切りよく広げた翼で空気を投げつけるように

相手に向かって羽ばたいた。その辺のあらゆるものが少女に飛んでいく。


「これくらいでぇ!」


つる植物を自分の前に盾にするように展開する。かかった。


「そこだ!」

全力疾走でがら空きのサイドへとまわり、驚いている少女の首根っこを掴み、壁に叩きつけた。


「かはっ・・・」


勝負あった。手を離すとぐったりと壁にそってずるずると崩れおちる少女。意識朦朧で昏倒寸前である。


「口よりも戦闘に集中しろよ…戦闘時喋っていいのは見方に連絡するときだけだよ。貴様のエゴで僕は殺されるわけにはいかない。そして僕のエゴで貴様を殺しはしない。僕はこの力を罰だと考えてもいない。今の生活も悪くはないと思ってるんでね」


ジャケットと荷物を回収し、全力疾走で帰るためにアキレス腱を伸ばす。


「どうしても僕を殺したいと思ってるんならまた僕に会いに来ればいい。その度にコテンパンにしてやるけどな!…ああそれと、」


帰る前にちょっと一言言っておくか。敵とはいえちょっと言いすぎた気がするし


「人と違う人生送って何が悪い。普通じゃねぇなんてそうそうねぇぜ?なんならその力使って植物についての研究とかしたらどうよ?」


翼を縮め、ジャケットを羽織り、クラウチングスタートで全力疾走。江流弩荘への帰路を急ぐ。早くしないとおしおきと称して逆セクハラを受けてしまうかもしれないな…なんてことを考えながら僕は走った。ジャケットに付いた1つのオナモミに気づかぬまま。



「ごめん、ただいま~…ハァハァ……」


「遅―い、龍さん早くー!」


「わかったよ…息くらいつかせてくれよなァ……」


といいつつエプロンを着て(自前の龍のプリントが入ったカッコいいやつである)食事の準備を始めた。いざ、台所という名の戦場へ・・!


ちなみに龍斗くんの戦闘力はボルシャックドラゴンレベルです。その気になれば戦車とかパンチ一発で壊せますよ?(笑)

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