行き着いた場所、逃げられない運命
いやぁ、大分間を置いてしまいましてすみませんでした。いろいろ仕事が大変だったんですよハイ
あえてもう一度言わせてもらおう、ごめんなさいと!!
「とりあえずはここでいいか」
前回の家出同様、少ない荷物を若干ほこりのかぶった机の上に置く。僕が今いるのは自動養護施設時代に見つけた廃屋の中である。ホラ、誰にだってやむち…じゃなくて、ヤンチャだったときってあるわけじゃん?秘密基地とかに無駄に憧れた時代ってあるじゃん?廃屋とかなんか興味を引かれるじゃん?
江流弩荘、施設両方ともにけっこう遠く、普段人通りも少なく隠れ家には最適。近くに川もあり、快適なアウトドアライフを暮らせること間違いなし。とはいっても長居するつもりはない。黄泉川が龍化者探知能力を使って見つけようとしてくるかもしれないからだ。別に家電製品がなきゃ生きていけないってわけでもないだろう?こういうところで人類は本当に貧弱になったなぁって思う。
「前来たときとほとんど変わってないなぁ…下手に崩れてなくてよかった」
「(ほ~ここが俺たちの愛の巣か?)」
茶化すようにほざきだすこの龍。いまさらだが、凄まじく龍らしくない
「そういう発言マジで控えろ、作者にBL要素を期待するんじゃない。お前も一応雄じゃないのか」
「(そうだな、タチの悪い同人誌になってても困るし)」
「そういう知識はどこから持ってくるんだよ…」
脳内で響く声というものはそれなりに気持ちが悪いものだ。
アウトドア用品は最近なんとなく買ったものがある。袋からテントから寝袋からその他エトセトラを取り出していく。火を使わない蚊取り線香とか。鱗の部分以外は人間の皮膚なので蚊に刺されるとやっぱりかゆいのだ。(衝撃にはかなり強いが)そのとき、ポンという軽い爆発音
「よっと」
「?」
僕の目の前には小さな幼龍がいた。携帯釣りゲームでこんなドラゴンがいたような気がする。
「おまえ…実体化できてんじゃん」
「今テキトーにやったらできたww」
「はぁ…あと草生やすな」
「今日から俺がマスコットキャラだ!よろしくな!」
「お前これからどうすんのよ?ノープランなんだろ?」
「とりあえずは適当に旅する感じで行く。あての無い旅とかやってみたかったんだ」
「計画性ゼロ、マジで馬鹿だったんだなお前。金銭面はどうすんだ。未成年だろお前?雇ってくれるバイトなんざたかが知れてるし。何より身元が不明の青年だ。ロクな仕事はもらえないだろうな」
シカトする。口は悪いのに頭がいいのがちょっと腹が立つ。
夕方になって暗くなってきたので、とりあえず明かりの確保を優先する。摺りガラス風のコップにちょっと力をこめた鱗を入れる。ぼんやりとキャンドルのような儚い光を放ち始めた鱗。ひびの入った壁をやさしく照らす。殺伐としたこの部屋のちょっとしたインテリアだ
「ほー、ロマンチックだな」
「龍化とかなけりゃ僕も彼女の一人は作りたかった…」
「貧乳派だったなお前は。江流弩荘は巨乳が多かったな」
「…………勝手なことをほざくなよ」
「今の間は何だよ今の間は」
ある程度荷物を広げ終わり、おやつに買っておいたグミを食べていたときのことだ。そういえば歯もだいぶ鋭くなってるようだ。軽く噛んだだけでグミがばらばらに切断される。噛みごたえもへったくれもない。ちょっと味気なくおやつを堪能していたときだった
ぞくり
背筋に走る悪寒。かつてヒイロや黄泉川と出会ったときのような感覚。近くにいる
「気づいたか。どうすんだ?このまま逃げ続けるつもりか?それとも前のように甘ったれた行動でまた逃げるつもりか?」
「降りかかる火の粉は払わなきゃならない。もっとも、火の粉をばら撒くのは僕たちだけどな。そいつが人外だとしても、僕は元人を殺すなんてできやしないだろうさ」
「くきひゃははは!!いいだろう、行くぜ」
龍がふっと消えた。僕の中に再び戻ったのだろうか。
「お前、龍化者だな?」
外に立っていたのは冷徹な雰囲気を持つ男。冷たい、冷え切った視線でこちらを睨んでいる。ぶっちゃけチャラ男にしか見えない。
「それがどうした?だったらどうする?お前も同じ境遇のもの同士で殺しあえば治るとか言う根も葉もへったくれもクソもない俗説を信じているもののクチか?」
「そうか、知っているなら話は早ぇ、始めっか」
川の水が生き物のように動き出し、僕の周りを包み込む。巨大な水の塊が僕を飲み込もうと迫る。まいったな…あまり得意でない属性というやつだ。火は水を嫌がるもの、それがセオリーだろう。ならばどうする?火以外で攻めればいいだけのことだ。
「龍の叫び(ドラゴンシャウト)!!」
腹の底で思い切り気を圧縮、口から狂気の絶叫として吐き出す。その空気の震えは僕を中心にして大きく輪になり水を退けた。はじけた水の塊が霧状になり、虹を作る。ますます人外臭い。自分で自分に嫌悪感を抱く。
あいつが耳をふさいで怯んでいる。そしてこちらを化け物を見るような目で見てきた。いや、化け物だけどさ…怯え、畏怖、恐怖…その視線は敵に向けるものでもなく、味方に向けるようなものでもない。圧倒的な暴力に対する恐怖の視線だ。その視線が僕の心を容赦なく抉る
「どうした?格の違いにビビッたのか?…僕は戦闘を楽しむようなタイプじゃないからな。早々に終わらせようか」
踏ん張り、拳に力をこめる。拳の頭の龍棘がせり出し、切り裂きたくて仕方ないといわんばかりに鈍い光を発する。破壊衝動が内側から湧き上がってくる。壊したい壊したい壊したい!!!!っと、抑えて抑えて…別に怒っちゃいませんよ?ちこっと頭に血が上っただけですよ
「くそっ…この力だけは使いたくなかったけどなぁ…お前を殺すためだ、仕方ねぇだろ」
男の目が狂気に輝いている。それなりに端正だった顔立ちはゆがみきり、気持ちの悪いニタニタ笑いを浮かべている。ヤダナニこいつ気持ち悪い。ぞくりと背筋に緊張が走る。何かとんでもないことをしでかそうとしている感じ満々だ。先ほどはじけた水の塊が相手を包む。
「極限龍化!!!」
やつの顔にどんどん鱗が浮き出てくる。それは一瞬のうちにして全身を多い、程なくして相手は完全な龍の姿になった。四つん這いで長い尻尾、背中には翼、蒼い鱗が水しぶきに反射して美しく輝いていた。大きく大地を踏み鳴らし、その龍は吼えた。
「グォオォォォオオ!!!」
「……マジかよ…」
「(くきひゃははは!!…やばいなこりゃ)」
若干切羽詰まったような声が僕の脳内で響いた
ソフトボール大の大きさの水球がそこいらじゅうに浮いている。あの水龍が出現させたものだ。時としてそれはそのまま突っ込んできて体当たりしてきたり、形鋭く変化させ水の槍としてこちらを襲う。はじけ飛ぶ水しぶきも僕の鱗を傷つけるほどの威力がある。そして龍が操っているせいか、とても蒸発させにくくなっていた。
そして何より龍の大きさと怪力、リーチ。オールレンジ攻撃がこれほど恐ろしいものだとは思わなかった。対抗できるのか?今の僕の能力で…鞭のようにしなる尻尾をよけながら思案する。
一瞬の隙を付かれ足首を尻尾にからめとられてしまった。大きく大車輪のように振り回されたあと、地面にすさまじい勢いで叩きつけられる。人の域を超えた身体能力の龍化者とてこれは流石にシャレにならない。肺から空気が抜け、背骨が悲鳴を上げ、全身の肉がギシギシという嘆きの音を漏らす。地面にめり込んだ。痛みで動けなくなっている僕に向かって容赦なく尻尾を振るう水龍。2撃、3撃。
「かはっ…ごほっ…」
「(死なれたら困るからな、いざって時は俺が変わらせてもらうぜ?くきひゃははは!!)」
「(黙ってろクソッタレ!!)」
翼を使って大きく後ろにバックステップする。そのまま飛び、空に逃げる。水球が襲い来るが、龍の怒りをぶつけて威力を軽減、裏拳ではじき返す。そろそろ僕も殺す気で戦わなきゃいけないようだ
「覚悟はできたか?お祈りは済ませたか?跪いて僕に許しを請う準備はできたか?では、終わらせるぞ!!」
龍棘を勢いをつけて大量に投げつける。龍の力が色濃いためか、それははじかれることなく水龍の鱗を貫き、肉に食い込んだ。
「オゴォオォォ?!」
「炎鱗・爆裂龍棘!!」
突き刺さって爆発する危険な鱗が水龍の鱗の内側、つまり肉を直接業火であぶる。肉片が次々と弾け飛んでいく。血をダラダラ流し、息も絶え絶え、それでも闘争心の鈍らない龍の目の前に迫るもの。殺すはずだった相手の拳だった。ここまでして。人に戻ろうとして龍に成り果て、それでもあきらめず同じ境遇のものを殺そうとやってきた水龍。ここで彼はやっと諦めという感情を覚えた。
「炎弾・業火爆裂拳」
龍の脳天にすさまじい衝撃が伝わる。龍の分厚い顎の骨すらも通り越して、その一撃は龍の脳を揺さぶった。暗転する世界。最期は人の姿ですらなかった自分。手段のために目的を見失なってしまった哀れな生き物が、大きな音を立てて地面に崩れ落ちた
読みづらいよね…ごめんね…ひどすぎるよね…(某姫様)
こんな感じでどんどんがんばっていきますできたら応援してくらさい